襲撃!
リオンは帝都に戻ってきていた。
西部の先の街に向かうより、帝都に戻った方が早いと気付いたのだ。帝都ならば50人もの盗賊を連れて行く騎士団もあるのが理由だった。
「あれ?シオン様の護衛の方ですよね?」
門番は先ほど出ていったばかりの護衛騎士に首を傾げた。
「あ~~シオンお嬢様の馬車が襲われてな。盗賊は叩きのめしたので、盗賊の連行の為の兵を派遣して欲しい」
!?
「わかりました!」
「えっ?わかっちゃったの?」
門番は笛を口に咥えるとピィーーーーー!!!!!と鳴らした。
「何ごと!?」
笛の音が鳴り響くと、少ししてドドドドドッ!!!!!と、馬の地響きが聞こえてきた。
「な、何が起こっているんだ!?」
リオンはただ驚くばかりだった。
すると、騎馬隊を率いていたのはブルーネット公爵自身だった。
「ぶ、ブルーネット公爵様!?」
「シオン令嬢無事だな!」
公爵の言葉に、はいっ!と瞬時に返事をした。
「案内しろっ!」
「か、かしこまりました!」
リオンは理由もわからず馬を飛ばした。
馬を走らせながら公爵が説明してくれた。
「皇帝陛下がシオン令嬢が襲われる可能性が高いと言われてな。シオン令嬢が出発した数日は、すぐに対応できるよう騎士団を待機していたのだ」
な、なるほど………
「しかし出発してすぐに50人もの盗賊に襲われるとは、シオン令嬢はまさに【盗賊ホイホイ】ではないか。それを10人もいない護衛で倒すとは凄まじいな!」
ワッハハハハと笑う公爵にリオンは苦笑いしか出来なかった。なんてうまい事を言う方なんだ。
でもお嬢の前では言わないで下さいね?
殺されますから………
「あ、そうだ。ヴァイス侯爵領であったルドルフ殿を覚えておられるか?どうやら西部がきな臭いと、工業都市ドラムにいるらしい。色々と調べている方なのできっと力になってくれるだろう」
「わかりました!ありがとうございます」
リオンと公爵が話していると、あっという間に戻ってくることができた。
が─────
!?
「ば、バカな!何があった!!!」
到着すると護衛の仲間達がボロボロになって倒れていた。
「お、お嬢は、シオンお嬢様はどこだ!?」
リオンは動揺を隠せずシオンを探した。
「だ、大丈夫だ………シオンお嬢様は馬車で寝ている」
護衛騎士の中で一番体力と防御力のあるイージスが片膝を付きながら答えた。
「ハァハァ、リオンが出た後に、別の者が襲ってきたのだ」
「なに!?」
話を聞こうと詰め寄るリオンをブルーネット公爵が止めた。
「まずは怪我の治療が先だ!」
くっ!?
連れてきた騎士の中には衛生兵もいた為、すぐに治療が始まった。
「怪我の具合はどうだ?」
「出血は多いですが、みな軽症です。さすがとしか言えません。全ての致命傷を避けているような戦い方のようです」
しかし、襲撃者とはいったい何者なんだ?
俺らをここまでボロボロにするとは…………
「それでシオンお嬢様は無事なのですか?」
馬車の方から衛生兵が戻ってきた。
「はい。ドレスは汚れておりますが、特に怪我などありませんでした」
女性の兵士を連れてきて良かったと思った。
「それで、何があった?話せる者はいるか?」
治療を受けた護衛騎士の中で、最年長のゼータが起き上がって呼んだ。
「余り周囲には聞かせたくない。公爵、人払いを」
騎士団は盗賊を連行しながら、公爵の周囲から距離を取った。
「ゼータ殿、我々をここまで傷つける者とはやはり………」
「ああ、常闇の蜘蛛の襲撃を受けた。リオンが出ていって数が少なくなった所を狙われた」
「しかし、盗賊と戦っている時、周囲には気配は無かったはずだが?」
リオンは険しい顔をして盗賊との戦闘を思い出していた。
「奴ら【遠眼鏡】を持っていた。それで俺たちの気配察知に引っかからなかったのか」
遠眼鏡は、まだ帝都では普及していないが、船での航海で船乗りの中では必需品となっているものだ。
それからゼータはリオンが出ていった後の事を話した。
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