闇蜘蛛会議
とある場所にて重い会議をしている者達がいた。
「失態だったなジグモ」
そう言われたジグモは手を竦めて言った。
「そうだなぁ~大事な収入源である場所を無くしたのは痛手だったと思っているよ」
全然詫びていない様子に苛立つ者がいた。
「なんだ!その態度は!お前のせいで帝国の東部全体がダメになったんだぞ!」
「まぁまぁ、そうカリカリするなよ。元々、東部のバカ貴族達がチョロ過ぎて、やり過ぎの所が出てたんだ。そう遠くないうちに民の叛乱で終わっていたんだぜ?」
ジグモの言う事も一部正しかった。
今までよく叛乱が起きなかったと思っている者もいたからだ。
「それで悪いがオレは帝国から手を退かせてもらう。これから北の国々の方で活動させてもらうぜっ?」
!?
「巫山戯るな!貴様の失態をどうするつもりだ!」
「だからさぁ~~帝国はもうダメだって言っているんだ。その代わり、別の国で儲けさせて貰うってことだよ」
やれやれと両手を振って答えた。
「なぜ帝国がもうダメなんだ!まだ西側の【ジョロウグモ】の地域は健在だぞ!」
これまで沈黙を貫いていたジョロウグモが始めて口を開いた。
「ジグモの言う通りじゃ。もう帝国での商売はできぬじゃろうて。うちも今のうちに撤退準備を行うつもりじゃしのぅ」
!?
「ジョロウグモ!貴様まで帝国という狩り場を捨てるというのかっ!」
「黙れ。煩いぞ【サラグモ】。吠えるだけなら口を閉じていろ。大局の見えていない小物が」
ジグモもジョロウグモも、静かに目を閉じてこれからの事を考えていた。
「グッ、多少腕が立つからと、いつまでオレの上にいるつもりだ!今や同格の幹部だぞ!」
はぁ~とジグモが深いため息とともに言った。
「サラグモ、今の状況が見えていないらしいな?オレ様が親切丁寧に教えてやる。まず、新しい皇帝は貴族の横暴に苛立ちを覚えて締めつけに入った。さらに、自由に動ける【王妃】まで帝国の国内に放ちやがった。さて、どう対処する?」
「待て!自由に動ける王妃とはいったいなんだ!?」
「サラグモはんや、あんた本当に情報収集してないやろ?これから帝国全土で、貴族や悪徳商人の摘発が始まるんやで?」
今のうちに店を畳んで置かないと、蓄えた財産まで没収されてしまう。
「ああ、ジョロウグモの言う通りだ。もう帝国で商売は出来ない。出来ても小規模でたいした旨味は無くなる。だから、サッサとここを捨てて別の国で始めればいい。すでに下準備も終えているからな」
「あら?手際がよいざんすねぇ~~」
「昔の様に無理して壊滅なんてしたくねぇからな」
ジグモとジョロウグモは通じ合う何かがあった。
「そうそう、サラグモはんや。そんなにいわはるなら、西側のうちの店はあんたに譲りますわ。そのまま畳むもよし、営業するも任せますわ。良しなに頼みます」
「はっ?本気で言っているのか!?」
ジョロウグモは高級遊郭や娼館を運営している。
その稼ぎはかなりのものだ。それをただで譲るというのだ。驚きもするだろう。
「サラグモ、せっかくのジョロウグモの好意だ。だが、せいぜい気をつけることだ。あの、おっかない王妃が攻めてくるからなぁ~?」
「何を恐れているんだ?お前達いつからそんな臆病になったんだよ?いいだろう。俺がジョロウグモに代わって帝国の西部を管理してやる。後で利益を上げたからって悔しがるなよ?」
「ふふふっ期待しているのじゃ。うち店のカギを渡しておくからのぅ」
ポンッとサラグモに投げて渡した。
「頑張れよ。もしジョロウグモ以上に利益を上げたら、大幹部に推薦してやるからなぁ~」
二人はそういうと部屋から出ていった。
「クソッ!今に見ていろよ!!!」
誰もいなくなった部屋でサラグモは叫ぶのだった。
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ジョロウグモはカラカラッと笑いながら言った。
「ジグモはんも悪い人でんなぁ~?サラグモごときに対応できるとでも?それに春夏秋冬の事も知らない様子でしゃったろうに?」
「ふん、あんなヤツまで幹部にしないといけねぇとはなぁ~。サラグモは一兵士なら有用だが、上に立つ器じゃねぇんだよなぁ~忠義心だけは買うけどよ」
頭を掻きながらジョロウグモに答えた。
「まぁ、お手並み拝見と行こうぜ?多分1年以内には結果がでるだろうよ」
「そうでんなぁ~楽しい見世物になると良いですなぁ~」
二人は嗤いながら別れるのだった。
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