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覚悟と商売

シオンの言葉に固まった令嬢達の代わりにルナーリアがフォローした。


「シオンお姉様、それを言われると皆様困ってしまいますわ。逆に侵略しようとした私達もオリオン辺境伯家の兵士を殺したのです。どちらが悪いとは言えないのではないでしょうか?」


「そうね。ルナーリアちゃんのいう通りよ。多くの犠牲があったから、私は今ここにいる。どんなに素晴らしい政策を献上し、国を豊かにしても遺族の悲しみや恨みは消えることはないでしょう。私はそれを飲み込んでここにいるという事を忘れないでください。そしてどんなに遺族から罵倒されても、私は帝国に骨を埋める覚悟はできているのです。これからより良い関係を築いていくために」


先ほどと同じくシオンの声は大きくはなかったが不思議と周囲に響いた。


「話の途中で失礼する」


後ろから皇帝がやってきた。


「ちょうどいい機会だ。南部の貴族に言っておこう。家族や同郷の者を殺された遺族の心境は計り知れない所があるだろう。しかしそれは、俺や歴代の皇帝の責任である。恨むなら俺を恨め。決して他国の令嬢に恨みや怒りを向けないで欲しい」


ゼノン皇帝は皆の前で頭を下げた。

これには周囲の貴族達が戸惑った。国のトップである皇帝陛下がこのような場で頭を下げるなど、今までなかった事だからだ。


「俺はこの国をもっと豊かにしていきたいと思っている。それには皆の力が必要だ。恨むなとは言わない、怒るなとも言わない、ただ胸の中で何を思ってもいい。だが国をより豊かにしていきたいと言う『想い』は同じだと思っている。だから一緒に協力して欲しい」


冷酷皇帝と言われていたゼノンの変わりように驚く反面、心から忠誠を誓いたいと思う貴族達がいた。


「これから帝国は変わる。シオン令嬢という波紋が帝国を揺るがすだろう。その中には失敗もあるだろうが、最低一年間は様子を見ていって欲しい」


そう言ってゼノン皇帝は別の貴族の対応にその場を離れた。


「驚きました。ゼノン皇帝陛下はもっと怖い方だと思っていましたが、見方が変わりましたわ」


素直な感想をいうルナーリアに周りの貴族も同感だった。

そして、国のために皇帝陛下自身が変わるのなら自分たちも変わらねばと、結束力も生まれたのだった。


「なかなか優秀なお方なのね」


様子を見ていたシオンの母のマリアが声を掛けた。


「本当に我が国の王族に爪の垢で飲ませたいですわ」

「確かに、いずれは戦の責任を取らせたいですわね。あのクソ王子に」


普通に会話しているシオンとマリアをその場にいる人々が交互に見比べた。


「えっ!?えっ!?シオンお姉様には姉妹がいらっしゃたのですか???」


ルナーリアは混乱しながら言った。


「あ、すみません。紹介がまだでしたわね。こちらはイリシア王国の現国王の妹であり、私の母親であるマリア・オリオン辺境伯夫人です」


うんっ?


「失礼ですがシオン御令嬢の姉妹ではありませんか?」


だよな?姉妹だろう???


首を傾げながら答える貴族にシオンは母です!と、きっぱり言った。


「聞き間違いじゃなかった!?」

「うそだろ!?」

「若い!ってか若すぎる!?」


一気に注目が集まった。


「あらあら♪皆様お上手ですわね~」


お母様は満更でもない様子で言った。


「あ、あの失礼します。マリア様は美容にはどのようなものをお使いなのでしょうか?」

「うふふふ、別にたいした事はしていないわよ?娘の『シオン』が開発した肌をケアする『乳液』という化粧水を使って、肌のダメージを治しているの。後は同じくシオンが開発した化粧品とセットで使うことで、より効果を高めている事かしら?自分の肌に合わないものを使うと逆に痛めてしまうものね」


バッとシオンの方に視線が集中した。


「シオンお姉様は化粧品も開発していたのですか!?すごいです!」


ルナーリアは尊敬の眼差しでシオンを見つめた。


「シオン様!その化粧水なるものや、化粧品は帝国では販売されないのですか!?」


令嬢だけではなく夫人達の熱い眼差しにシオンは気圧された。


「えっと、まだ化粧品類の工場の移転が終わっておりません。そこで働く従業員の家族にも移住してもいいのか、確認せねばなりませんし………」


正直な話、シオンは化粧品の工場を移転するつもりは無かった。何故なら、シオンの化粧品は海外でも人気が高く、海外ではイリシア王国では化粧品の質が高いと人気の輸出品になっていたからだ。

食べ物と違い長期の保存もできるため、高額商品として王国莫大な利益をもたらせていた。


しかし───


「シオン、別に工場は移転させなくても良いわよ。ここで新しい工場を建てなさい」

「良いのですか!?」


驚いた声を上げる。


「構わないわよ。もともと貴女が開発したものでしょう?少しぐらい王国に『残して』も良いわよ」


なるほど。

美を探求する女性は多い。

ここで恩を売らないと、逆に恨まれるかも知れないのね。


「わかりました。お母様が良いなら一部の化粧品は帝国でも生産しましょう」


ワァァァァ!!!!!!


「ありがとうございます!絶対に買います!」

「私も買いますわ!」

「ぜひ、私にもお売り下さいませっ!」


美の化身であるお母様が広告塔になり、よりシオンの株は上がるのだった。


『お母様!狙ってましたねっ!』


お母様には敵わないなぁ~と思うシオンだった。







最後までお読み頂きありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! よくある雑誌の使用前、使用後の写真詐欺?(笑) でなく実物の広告は効果テキメン!? ま、美の道はね〜茨の道! [一言] 化粧品も凄いけど、周りのスタッフ(…
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