夜会(間違いの修正回)
夜会の日になりました。
すでに【妃選定の儀】は始まっている。
4月に参加の意思を示した日から、準備期間に入り、正確には5月からスタートしたのだった。
これから1年間どんな事を成すのか、帝国中の貴族や平民達が注目している。
いつもなら7人もの妃達が順位を競うため、血なまぐさいことも多く起こった。
しかし、過去の妃達は、王宮内や貴族派閥の強化に力を注ぎ、国の為に行動していた者は、ほとんどいなかった。
しかし、東部でのシオンの活躍はすでに商人や旅人達により帝国中に知られていた。
そして、期待されていた。
シオンが2月の半ばから帝国にきて、僅か数ヶ月で東部の悪徳貴族が一掃され、平民に新しい事業を斡旋して、貧民の者も職にありつき、食うに困る者が減った。景気も向上し、すでに東部全体ではシオン派閥なるものが出来ていた。
ルナーリア・ゼファー子爵令嬢が頑張ってくれているようだ。
元々、悪名高いワルノヨー伯爵家の長男との婚約に、周囲の令嬢達は同情的だった。そのルナーリアがワルノヨー伯爵家がお取り潰しになり、婚約自体が無くなったことを大変に喜んだ。
そのきっかけを作ったのが………きっかけと言うか、元凶がシオンなのだ。
すでにヴァイス侯爵家が没落し、新しい東部の
盟主となったゼファー家には多くのパーティーやお茶会のお誘いの手紙が届き、ルナーリアは行き先でシオンの事を自慢気に語ったのである。
さて、今回の夜間にどう効いてくるのやら。
ザワザワッ
ザワザワッ
今回は遠くの領地の貴族も参加していた。
主に北部と西部の貴族達だ。
東部の貴族達が粛清されたと聞いて、その原因を作ったシオンがどんな人物なのかと見に来たのだ。
流石は帝国の王城で開かれる夜間だ。
絢爛豪華という言葉がピッタリなパーティー会場だった。夜会が始まってから、珍しく貴族達は食事に夢中だった。
立食形式だが、基本的に参加者はワインを片手に、他の貴族と話をするのが普通だった。
どうでもよい雑談から、余り会わない貴族の顔繋ぎや新しい事業の商談など、多くの者が集まる夜会はビジネスチャンスなのである。
しかし、今回は多くの貴族が食事に夢中だった。
無論、シオンの仕込みである。
今まで見たことのない、料理のレパートリーだったからだ。しかも、見た目も美しい料理が多かった。
定番の前世でメジャーな料理から、寒天を使った宝石の様に美しいゼリー。ホールのケーキに、飴細工の花を飾ってあるデザート類など令嬢達の心を掴む料理も多かった。
フルーツの山盛りって小説の中だけだと思っていたわよ。実際に見ると壮観である。
「凄いですわ!食べるのがもったいないです!」
「綺麗………♪」
「初めてみますわ!」
「これはシオンお姉様が考案したのですわ!」
フンスッ!と、ルナーリアが自慢気に令嬢達に話していた。ゼファー家で大規模な土芋と赤芋の栽培を始めても、料理がわからなければ、食べる事が単調になってしまう。だからシオンは料理のレシピもいくつか渡していたので、ここにある一部の料理を知っていたのだ。
ボーーーン!!!!
ボーーーン!!!!
「ゼノン皇帝陛下の御来場です!」
パチパチッ!
パチパチッ!
大勢の拍手で迎えられた。
「皆のもの!よく集まってくれた。この度は妃候補の披露の為に集まってもらった。これからの1年間の実績により、未来の王妃が誕生する!我が帝国では常に7人もの王妃が存在していた。俺はこの度、1人だけ娶ると決めた!何故か?それは長年の悪習でのせいで、毎年、膨大な遊興費の名目で各王妃達に血税が支払われていたからだ!」
ゼノンは周囲を見渡してから続けた。
「はっきり言おう!今までの『王妃』達は、身分だけ保証され、ほとんど公務や政治に関わる事が無かった!権力を7人に分散させた事で『王妃』と言う位を与えられていたが、それは俺の代で廃止する!これからは、俺の隣で公務を担い、共に国を発展させていく【皇妃】を復活させる!」
ザワザワッ!
ザワザワッ!
会場のざわめきが大きくなった。
コソッ
「宰相さん、王妃と皇妃って同じ意味で合ってる?」
シオン達はまだ入場せずに王族の入場口にいた宰相に声を掛けた。
「はい。言葉が少し違うだけで同じ意味です。ただ、ゼノン皇帝が言われた通り、過去に権力を分散させた事で【王妃】と言う『位』を作ったのです。帝国では過去の愚王のせいで【妃】が7人もいましたので。そして、その前にあったのが、唯一無二の皇帝に並び立つ【皇妃】と言う『位』です。まぁ、そのまま皇帝の妃と言う意味では同じなんですがね」
「教えてくれて、ありがとうございます。王妃だろうと、皇妃だろうと私が目指すものは変わらないわ」
シオンは通路口からゼノン皇帝の演説を見守るのだった。
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【あとがき】
取り敢えず、王妃を目指すことは変わりませんので、王妃と皇妃は深く考えずに読んで頂けたらと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます!
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