大魔王は2人だった!?
ゴゴゴゴッ!!!!
圧倒的なオーラを放つお母様(大魔王)にシオンは笑顔が引き攣って動けなかった。
そんな時、勇者が現れた!?
(マジ神かよ!?)
「お待ちしておりました。マリア・オリオン様」
横からハルとアキ、そして執事のセバスが挨拶をした。
「………ええ、この敵地にて、みなさんご苦労様でした。シオンの母として御礼を言います」
「「勿体ないお言葉です」」
普通に喋っているだけなのに、冷や汗が止まりません!?ってか、セバスや春夏秋冬の戦闘のエキスパート達が、同じく冷や汗を掻きまくっているじゃないですか!?
「お、お母様?立ち話もアレなので、屋敷の中へどうぞ」
マリアはシオンの差し出された手を無視すると、両手でガシッとシオンの顔を掴んだ。
えっ?私、死ぬの?
その時、シオンは本気で死を覚悟したと言う。
「………やっぱり、肌のお手入れが行き届いていないわね。それに、手も荒れているわ」
嘘っ!?
朝からしっかり磨いて貰ったのに!??
「そ、それは忙しくて………その……」
目を泳がせながらシオンは、しどろもどろに答えた。
「屋敷の中を見させて頂きます」
「は、はひっ!」
両手で顔を掴まれている為に、頷くことしか出来なかった。そして、『屋敷の中を見る』と言われて、メイド達が戦慄した。それは自分達の仕事を見ると言う事である。
無論、手は抜かずいつも以上に掃除などしたつもりであるが、一国の姫様に見られるとあっては緊張もするだろう。
マリアはシオンの首根っこを掴みながら屋敷の中に入っていった。
『お、お母様!?首!首が締まっていますから!?』
そんな哀れなシオンを、誰も助ける者は居なかった。
王妃宮と呼ばれる屋敷なだけあって、建物の作りはしっかりとした物であり、ゴテゴテした成金趣味な装飾は全て外してあり、現在は落ち着いたシックな感じの屋敷と変貌していた。
「なるほど。屋敷の壁紙など全て張り替えてあるのね?」
「はい。ここに着いてから、家財道具なども全て入れ替えしました」
毒針などの危険性を全て排除したのね。
マリアは執事、メイド達の働きに満足そうに頷いた。
「短い時間でよくここまでの仕事をしてくれました。シオンが無事に過ごせているのはあなた達のお陰です。本当にありがとう」
「奥さま……」
「マリア様………」
「ううぅ、その様な御言葉を」
マリアは揃っていた執事、メイド達に深く頭を下げた。それを見たみんなは、全員涙を流しながら感動していた。
オリオン家に仕える事ができて良かったと。
「あ、あの~~~、そろそろ離して頂けると嬉しいのですが?」
屋敷を見て廻っている間、シオンは引きずられながら移動していたので、死にそうだった。
「………ただ、1つだけ許せない事があります」
ビクッ!?
な、なにかしら?
ゴクリッと喉を鳴らした。
「どうしてシオンの新しいドレスが無いのかしら?部屋を覗いたけど、ドレスルームすらなく、部屋にあるクローゼットに入っている数しかないじゃない?どういうことかしら?」
!!!?
基本的に王族は一度着たドレスは二度と着ない。普段着は別だが、パーティーで同じドレスを着ると、お金がないのか?と、侮られるからだ。
まぁ、帝国に来てからは、いつも外に出かけて、新しい商品の開発や工場の視察など、屋敷に居る事自体、少なかったからね。
ドレスを作るヒマが無かったなど、お母様には通用しないのである。
「すみません。今までパーティーなど無かったので、節約していました」
苦しい言い訳である。
お母様は深いため息を付くと、パチンッと指を鳴らした。
すると、お母様が連れてきたメイド達が、多くのドレスを持ってきました。
「えっ!そのドレスは?」
「貴女がそんな事だろうと思い、出ていく前の寸法で作らせました。帝国では貴女のドレスを作ってくれる仕立屋が居ないかもしれないと思ってね」
敵国の姫です。嫌がらせでドレスを作れないように圧力を掛ける者がいても不思議ではありません。
「でも、貴女なら王国から仕立屋を呼ぶ事もできたでしょう。もう少し気を配りなさい」
「あ、ありがとうございます!」
お母様はドレスを20着ほど持ってきてくれた。
これで今度の夜会は何とかなるわ!
「あの、ちょうど助かりました。数日後に大きな夜会があるのです。皇帝陛下からお母様も参加するよう言われております」
シオンの言葉に流石のお母様も驚いた様子だった。
「王妃候補の顔見せの夜会と言った所かしら?」
「その通りです」
お母様は美しく若いです。シオンと並ぶと姉妹と言っても通用するくらい似ているのです。
お母様は悪巧みするような顔でニヤリッと嗤うのでした。
ガクブル!?
『この二人は母娘だよ!悪巧みする顔がそっくりだよ!?』
屋敷に仕える者達は恐怖が二倍になったと戦慄するのだった。
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