これから
お母様と抱き締め合ってようやく離れると席につきました。
「ゼノン皇帝陛下、正直貴方には失望しました。私が帰ってすぐにシオンが意識不明になったという報告がきた私の気持ちがわかりますか?」
マリアの言葉にゼノンは素直に謝った。
「それについては弁解の余地もない。本当に心配をおかけして申し訳ありませんでした!」
立ち上がって深く頭を下げた。
「それに、そちらから故意に連絡を遅らせたことも頂けなかったわね。大事がなかったからよかったもの、最悪、シオンの死に目にも会えなかったかも知れないのよ?」
「はい………全ては私の配慮が間違っていました。私の責任です」
ゼノンは本当に申し訳なさそうな顔で謝った。
「お母様、今回の責任は私にあります。自分と仲間の力を過信した私が1番悪いのです!」
「そうね。シオンが1番悪いわよね?貴方は自分の価値を、自分の責任を、しっかりと理解しているのかしら?」
自分の価値と責任?
「それはどういう───」
「もしあなたが死んでいたなら、責任を取って護衛の騎士達も全員死んでもらうことになる所だったのよ?」
!?
「どうしてですか!?」
「あなたがそう言うことを嫌っているのは知っているわ。でも、護衛対象の主君が亡くなって、護衛騎士達は責任を取らないといけません。あの子達なら無理やりではなく、自分から責任を取って貴方の後を追うでしょうけどね。それが責任よ」
シオンは何も言い返せなかった。
「シオンはとても素晴らしい娘に成長してくれたわ。私のように驕り昂ることなく、平民にも隔てなく接している貴方は私の自慢の娘です。だからこそ、シオンには幸せになって欲しいの」
チラッとゼノンを見た。
「正直、シオンは自分の身を後回しにして他者を救おうというきらいがあります。だから無茶をするシオンの手綱を握ってくれる人が好ましいわね」
マリアは軽く首を振った。
「少し期待していたのだけれど見込み違いだったわ」
バッとゼノンが立ち上がって叫ぶように言った。
「オレはもうシオンを傷付けたりさせない!絶対に守ってみせる!」
ゼノンはマリアの目をしっかりと見ながら答えた。
「お母様、どんなに気を付けていても【事故】は起こります。私はゼノンと一緒に民を飢える事なく、安心して暮らせる国を作りたいのです。どうかお願い致します!ゼノンと結婚させて下さい!」
一瞬、ポカンとしてシオンを見たマリアは意外そうにした。
「驚いたわ。シオン、本当に皇帝陛下を慕っているのね?」
マリアはビジネスパートナーとして友人として、良い付き合いをしているだけだと思っていた。
それが、本当に想いを寄せているとは………
「………貴方!入ってきて下さいな」
部屋のドアが開き、シオンの父親が入ってきた。
「まさか。シオンがこんなヤツをここまで愛しているとはな………」
血の涙を流しながら呟く様に言った。
「最初は妃の選定では必ず降ろされると思っていたから、1年だけの我慢と王家の顔を立てたが、まさか、シオンが帝国の腐敗を取り除き、帝国を立て直すとは予想していなかった。そして、一番の予想外はシオンが心から慕う者を見つけたことだな」
「本当に昔から予想の斜め上をいく娘ですわね~」
お母様、それって褒めてる?
「はぁ~、1人の領主から判断すれば、国境を司る辺境伯と判断した場合、シオンが王妃となれば、今後、帝国と戦をする機会が無くなり、戦で死ぬ領民が減るのは嬉しい。が、───今までお互いに多くの血を流してきたのだ。私の娘であるシオンに、良い感情を持たない者から、危害を受ける可能性がある。1人の父親として、簡単に認めるも事はできないのも理解して欲しいゼノン皇帝陛下」
お父様も親バカではなく、色々と考えてくれていたんだね。
「そ──「だが!!!」
ゼノンの言葉に被せるように言った。
「私は娘の、シオンの幸せを一番に願っている。私が至らないばかりに、娘に剣を取らせて人を殺させた愚かな父親だ。シオンが選んだ者なら……応援したい気持ちもある!」
俯き、何かに耐えるように話していたお父様が、顔を上げてゼノンに目を見て言った。
「…………娘を頼む。もうシオンが剣を取らなくても良いように、お互いの民が死なない様に、両国の平和の架け橋となって欲しい」
「お父様…………」
いつの間にかシオンの目から涙が溢れていた。
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