実家に帰らせ頂きます
会議場は重い空気に支配されたが、一度帰った方がよいと言うことに意見は落ち着いた。
そして──
「はぁ~~どうしてこうなった?」
ゼノンは落ち込んでいた。
「はぁ~~どうしてこうなったの?」
シオンは落ち込んでいた。
二人は似たもの同士であった。
「ようやく、シオンと両思いなって、城に溜まっていた書類仕事を片づけれると思っていたのだが………」
「ようやく王妃になって、もっと金儲けが出来ると思ったのに………」
あれ?
何処かの王妃様は毒されてませんか?
いつの間にか金の亡者になっておられる。
シオン達は今、馬車でオリオン辺境伯家へ、実家へ戻っている最中であります。
「しかし、この馬車は凄いなっ!初めて乗ったが、金貨100枚の価値は確かにある!」
「フフンッ♪そうでしょう!」
シオンは自慢気に話した。
この馬車はサスペンションを搭載し、座席のクッションを低反発モドキのフカフカな物にした特製のシオン馬車もとい、『ワンダーランド・キャリッジ』(夢の国の馬車)
どうか目の前の皆さんも予約してね♪
「こんな快適な馬車があるとは………」
少し大きめの馬車はゆったりとした空間で、アキ、ハル、秋桜が同車していた。
「それで、もうお母様に命令されている事はないのよね?秋桜?」
ビクッ
秋桜はシオンより母マリアの命令を優先した事で後ろめたい気持ちでいっぱいだった。
っていうかマリア様に逆らえる者などいないのだ。
「は、はい!マリア様からは他に命令は受けておりません!」
「それならいいわ。でも、まさか近衛騎士カノンがゼノンの変装だとは驚いたわ。常闇の蜘蛛も見つけられないわよね~」
シオンに隠し事をしたくないと、かつて変装してシオンと共に伯爵家に乗り込んだ人物が自分だと打ち明けたのだ。
「一応、秘密にしてくれ。万が一のための切り札なんだ」
敵に追われている時や、潜入捜査の時に役立つからだ。
「それにしてもまだ実家を出てから一年も経っていないのよね」
「そうですね~色々とあったすね~」
お気楽なアキは軽い口調で言ったが………
「本当に、襲われて返り討ちにして、悪徳貴族の屋敷に乗り込んでボコボコにして………襲われて返り討ちにして………」
あれ?ループしてない?
真面目なハルの目が遠い目になっていた。
「本当に何をやっているんだかな~?」
この破天荒なお嬢様は、目の届く場所に置いておかないと危ないのだ。
こうして一向は帝国と王国の国境に差し迫った。
ちなみに、前回の教訓を活かして護衛は30名ほどに増やしてある。
国境に到着し、帝国側の城門を潜って王国側に出ると………
!?
「すぐに引き返せ!!!!!」
「陛下をお守りしろっ!」
護衛達が叫ぶが遅かった。
国境の城門から出ると、オリオン辺境伯の軍に包囲されたのだ。
その数、千名ほど。
とても相手にできる数ではなかった。
「………大丈夫よ。慌てないで」
シオンは馬車から降りると皆を落ち着かせた。
『まさかここまでするのか!?』
ゼノンは内心で驚いていた。
そしてオリオン家はどこまで本気なのか計り知れないと思った。
「シオンお嬢様、お迎えに参りました」
オリオン軍の将校が数名、前に出て膝を着いてシオンに挨拶した。
「出迎えご苦労様。でも少し多すぎではないかしら?」
「はっ!申し訳ございません。シオンお嬢様が帝国で襲われて意識不明の重体と聞いて、我ら一同生きた心地がしませんでした!全ての兵が帝国を攻め滅ぼすべきだ!と、声を挙げて意見が一致しておりましたが、マリア様がお止めになり、我々は祈ることしかできませんでした。故に、これは心配したオリオン領の総意で迎えにきたと思ってください!」
ゼノンや帝国の護衛達はヒクヒクと頬がつる思いだった。
「………その説は心配をかけました。私は馬車に戻ります。護衛をしっかりとお願いしますね」
「「はっ!お任せ下さい!!!」」
シオンはすぐに後悔することになった。
なんやかんやあって、パレードのようにオリオン辺境伯の姫様が戻ってきたと、長蛇の列となって領民達が集まってきたのだ。
「シオン様!お帰りさないませ!!!」
「姫様ーーー!!!!こっち向いてーー!!!」
「きゃーーー!!!!!」
「美しい!!!!!」
「いつも化粧品買ってまーーーす!!!!!」
シオンは領地では人気が高い。
景気の回復。新しい調味料、化粧品、医薬品の開発などなど、領地を豊かにして、民と一緒に畑を耕したりしていたため、人気が爆上がりでストップ高的にあった。
大歓声の中、ゆっくりと馬車は進んでいくのだった。(ゆっくりしか進まなかった)
民はシオン様の帰省であれば、この警備も納得だと当たり前のように思っていたのだった。
(千人に囲まれて逃げられない・・・シオン達は生きた心地がしなかった)
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