四話 始めたての冒険者は初めての依頼を受ける①
「こちらが、冒険者認定証です。あとで、ご確認お願いします」
ギルドの受付嬢がそう言って、封筒とカードを俺たちに渡してくれた。
「ありがとうございます」
『やったにゃ!これで、私たちは冒険者たちにゃ!』
アーシャは、目を輝かせながら言った。
はあ、それにしても疲れたな......
まさかあのアーシャが冒険者登録しようと言い始めるなんてな......
まだ、ろくに魔法が使えないのに大丈夫かな?とつい心配してしまう。
だけど、心配してもアーシャはぐずるだけ。
だから、俺は仕方なく結構遠かったが大急ぎでこの受付所まで来たのだ。
しかし本当は、冒険者は4人以上いないと始められない。
だから、俺たちの場合は本当に特例だ。
なんとかこの受付嬢を説得して、一か月内に冒険者を二人以上探すという条件付きで、冒険者になることができたのだった......
たぶん、説得するまでにかかった時間は、1時間くらい......
「あのー、あまりこのことはおおやけにはしないでくださいね」
困った顔をしながら、受付嬢はコソッと俺に伝えた。
「わかってます。無理言っちゃってすいません」
俺は、礼儀正しく丁重に誤った。
まあ、できるだけ受付嬢には機嫌を良くするためだ。
「あと、助言としてはなんですが、早めに仲間を探したほうが良いですよ。このままじゃあ、死ぬかもしれませんよ?」
そして、受付嬢は俺が持っていた紙に指をさした。
紙に何か書いているのだろうか......
まあ、どうでもいいか。
だって、俺最強だし。
「はい、わかりました。ありがとうございます」
「あ、言い忘れてたんですが、依頼ってどうすればもらうことができるんですか?」
元・冒険者といっても、いつも依頼をもらっていたのはリーダーのキラだ。
だから、俺はそういうことについての知識がまったくない。
「それなら、カードに書いてあります。魔法がかけられているんです」
へぇ、今ってそんなに高度な魔法があるのか......
そう思い、俺は興味本心でカードを見た。
【冒険者:グレン、アーシャ様】
依頼届:一件【5層ダンジョンの攻略】
難易度:F
場所:ウルデン=イカ王国東側、バレッド森
金貨:3枚
「へぇ、すごいな......」
それに、Fクラスの依頼で、金貨三枚ももらえるのか......
しかも、指定場所はそんなに遠くない......
これはもう行くしかないだろ。
「ありがとうございます」
『やった、早くいくにゃ!』
アーシャは、初めての依頼なのかめちゃくちゃ喜んでいた。
この姿を見ると、俺もなんか妙にうれしくなる
「じゃあ、さっそくこの依頼受けてもいいですか?」
俺は、受付嬢に一応聞くことにした。
まあ、たぶん「どうぞ、ご自由に」とか言われるんだろうけど......
「____あ、あの、本当に行く気ですか?」
「____えっ、は、はい......」
すると、意外な返答が返ってきた。
俺たちに本当に冒険する気があるのか試してるのか......?
いや、それにしては心配そうな顔をしている。
なんか、いけないことでもしたのか......?
「_________ま、まあ、頑張ってきてください」
「あ、はい、頑張ります......」
今度は、無理やり笑みを浮かべたような顔をしながら、応援してくれた。
もしかして、受付嬢ってみんなこんな感じなんだろうか......
まあ、認められたってことで良いんだよな。
『早く行こうにゃ!』
「はいはい、もう行くよ」
アーシャは、待ちくたびれたのか大声をあげて急かし始めた。
っていか、もう出口のほうにいるし......
「じゃあ、それでは」
そうして、俺は足早にこの受付所を出た。
♢♦♢
「大丈夫かな、あの二人......」
私は、あの新人冒険者の二人が帰ったと同時に声を漏らした。
「どうしたの?そんなにあの二人を心配して」
隣にいた、受付嬢が話しかけてきた。
「まさか、あの二人のステータス見なかったの?」
「いや、見てなかったわ。こっちの作業で忙しかったから」
「だけど、ここ最近、多いのよね。冒険者の死亡率が......」
確か、ベテランの冒険者は、40%。
新人の死亡率は、70%......
「そうよね......」
そして、私はかすかに祈った。
あの二人が、どうか死なないようにと......
~~~~~~~~~~~~
『ま、まだつかないのにゃ?』
「あ、あともう少しだ」
近いといっても、別の王国。
お金がないから、馬車も使えないし、馬だけすらもつかえない......
だから、俺たちは歩くしかない......
多分、あと何時間かはかかるな......
それに、さっきまで朝とだったのにいつの間にか真昼間。
もう暑すぎて、逆に死にそうだ......
「い、一回、休憩しよう、アーシャ」
『う、うん......』
そして、俺たちは近くにあったベンチに腰を掛けた。
「あ、そういえば......」
確か、受付嬢が助言してくれたのって、これだよな。
封筒に入った、紙......
『それは、なんにゃ?』
「見てたらわかるって」
そして、俺は封筒を開けた。
ん?白紙......?
裏も表も何も書いていない。
あ、そうか。確か、受付嬢が言ってたな......
呪文を唱えるんだった。
「Aparecium〈現れよ〉」
俺がそう唱えると、文字が一瞬にして浮かび上がった。
それにしても、本当によくできてるな......っておい......
なんだこれ。
【冒険者:グレン】
Lv:1
クラス:E
魔力質量:F
魔力:14
体力:3
攻撃力:1
防御力:2
スキル:なし
(以上)
「どう見ても、最弱ステータスだな......」
まあ、俺の場合は仕方ない。
だって、この首につけているネックレスがある限り、周りには俺の力は誰にもわからない。
このネックレスって、魔法探知も惑わすんだな......
今更だが、結構びっくりした......
「そうだ、アーシャはどう?」
確か、アーシャは、上位種族と言われている四大種族、【猫型獣人】の内の一人だ。
だから、結構ステータスについては、期待できる。
『え、わ、私は......」
【冒険者:アーシャ】
Lv:1
クラス:F
魔力質量:C
魔力:12
体力:10
攻撃力:15
防御力:13
スキル:風
(以上)
「____ほうほう、ん?えっ......」
どういうことだ......
確か、冒険者初心者でも防御力と攻撃力ぐらいなら、60ぐらいは行くはずなんだが......
なんで、最弱設定の俺並みに弱いん?
あっ、だからあの受付嬢は心配してくれてたのか......
というか、アーシャって上位種族だよな......
『にゃんで、勝手にみるのにゃ!?』
アーシャは顔を赤く染め、大声をあげた。
「え、ちょっと気なって......じゃなくて、これはどういうことなんだよ?」
『そ、そもそも、私は弱すぎてこの種族から追放されてるのにゃよ!』
この種族からね......そりゃあ、そうなるわ。だって実際こんなに弱いんだから。
「だって、俺と俺と初めて会ったときから、アーシャは一人ぼっちだったもんな」
『う、うるさいにゃ......そ、それより早くダンジョンいくのにゃ!』
そして、アーリャはすぐさま立ち上がり指定の場所へと歩きだした......
う......コイツ、話しそらしやがった。
まあ、勝手にアーシャのステータスをみた俺も悪いか......
仕方ない。今回は、大目に見てやるか......
「はいはい、じゃあ俺もそろそろ行きますか」
そして、俺は荷物をもって立ち上がった。
『ぬぅ......』
はあ、まだアーシャは拗ねている。
この状況だと、まだ続くな......
よし......
「おーい、一人で行くとまた蛇に襲われるぞー」
まあ、もちろんご冗談ですけれど......
『えっ、本当......?』
そして、アーシャはすぐさま戻り、俺の後ろに身を隠れた。
ふっ、なんだかんだいってコイツって案外臆病なんだな......
「可愛いやつめ」
『ん?なんかいったにゃ?』
あ、ヤベッ......
つい口が滑った。
「い、いや何も言ってないよ」
『本当に何も言ってなかったのにゃ......?』
げっ......
アーシャって、本当に察しだけは良いよな
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