7.シーリアさんとお勉強会
晩餐会がお開きになり、行きと同じようにフォーリアさんが部屋までエスコートをしてくれた。
そして彼は口を開いた。
「それでアマネ様、明日なのですが……」
「はい、なんでしょう」
「よろしければシーリアの勉強に同席して頂けないでしょうか?」
「勉強会ですか?」
「はい、アマネ様には恐れ多くもこのエピファネイア王国のことをより深く知って頂く必要があるのです。地方やそれぞれの気候など……」
「確かにそれは雨を降らせるのに大事なことですよね……。もちろん参加します!」
「ありがとうございます。シーリアも喜ぶと思います」
フォーリアさんの表情が少し和らいだように見えた。シーリアさん、やっぱり可愛がられてるんだろうなあ。
「では私はこれで。アマネ様お休みなさいませ」
「はい、おやすみなさい」
部屋に入るとケイティーさんがお風呂の支度をしてくれいるところだった。
身支度を手伝ってもらい湯を使った後、またシルクの寝間着に身を包んで眠った。
朝の支度を終え、指定された部屋に向かうとシーリアさんとお付きの方がいた。
「巫女様、ごきげんうるわしゅうございます」
「シーリアさんも、ご機嫌麗しゅう」
必死に挨拶する姿が何とも可愛らしく、私も真似をしてドレスをつまみ上げ膝を折る。
「丁寧な挨拶ありがとうございます。でも、シーリアさんもっと気楽に、あの、お姉さんだと思って接してくださいね!私の名前は天音ですから!」
あれ?私もしかしてとんでもないこと言ってるかな?
「では、アマネお姉さまですね!」
「はい!」
でも可愛いからいっか!
そうこうしていると教師役だという方が現れて、勉強会が始まった。
「ではシーリア様、このエピファネイア王国にある地方がわかりますか?」
「はい、グラス地方、シンボリ地方、ロベルト地方です……!」
私は用意してもらったメモ帳に万年筆でメモしていく。次に行くのが確かグラス地方……。
「ではそれぞれの地方の特色がわかりますか?」
「ええっと…」
シーリアさんはもじもじしてしまう。ここはお姉ちゃんとして助け舟を……。
「グラス地方は農業が盛んだそうですよ」
こそこそとシーリアさんに囁いた。
「えっと、グラス地方は農業が盛んで……」
そこで私も黙り込む。……あんまり助けになってない!
「はい、そうですね。シーリア様も巫女様もよく覚えておいてください」
~天音のメモ帳~
・グラス地方
シルヴァーホーク伯爵領の穀倉地帯で、畜産、酪農なんでもござれの『エピファネイアの食糧庫』
干ばつで大ダメージを受けて全国的に食糧不足が深刻。
・シンボリ地方
シンボリ公爵領で、女神信仰が盛ん。神殿もあるとか。
王都に近く干ばつの影響は比較的少ない。
・ロベルト地方
干ばつが最もひどく砂漠化が進行している地域。いくつかの諸侯が分割して治めているが治安はあまりよくない。ここへの旅は骨が折れそう……。
「ふう、こんなものでしょうか……」
「アマネお姉さまはノートにまとめるのがお上手なのですね」
シーリアさんが私のメモ帳を覗き込んでいる。
「ありがとうございます。確かにいつも友達にノート貸してって頼まれたっけ……」
「アマネお姉さま、寂しいですか?」
ギクッとした。元の世界のことを思い出したから。みんな元気にしてるのかな……。
「アマネお姉さま、シーリアはおそばにおります。ですから……」
「はい!こんなに可愛い妹ができたんですから、しょげたりしません!」
「へー!いつの間に姉上が増えたんだ?フォーリア兄上は手がお早い!!」
「ディーズさん!?」
気づけばそこにはディーズさんが立っていた。
「巫女様が姉上ならそういうことだろー?実際のところどうなんだよ!あ、に、き!」
「フ、フォーリアさん……」
般若のような顔のフォーリアさんが後ろから現れる。
「ディーズ!!貴様巫女様に向かってなんと不敬な!そこに直れ!まだ俺の剣をを受け足りないと見える!!」
「あーもう剣の稽古はいいよって!いやほんとに抜くなって!」
剣を抜いたフォーリアさんが、逃げるディーズさんを追いかけて行ってしまった。
「大丈夫でしょうか……」
「大丈夫ですよ、ディーズ兄上は体だけは丈夫ですから」
いつの間にかそこにいたサートゥルさんが冷静さを崩さずそう言った。
「兄上たちと剣の稽古をしていまして、終わり掛けに勉強の様子を見に行こうとフォーリア兄上が言ったんです。巫女様が心配だと」
フォーリアさん心配してくれていたんですね……。
「でもあれは心配じゃなくてただ会いたかったんでしょうね、アマネ姉上?」
「い、いやあの!シーリアさんに気楽に接してほしかっただけで、フォーリアさんとは決してそういう関係では……!」
このご兄弟、アクが強い!!
天音はノートをすごく綺麗に取るタイプですが、成績は普通くらいでした。
明日も12時頃投稿予定です。
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