5.王城シーザリオ
王城シーザリオ、エピファネイア王国に冠たる白亜の城である。
その威容は他国にも響き渡るほどで、つまり、デカくて広いのである。
「ほえぇ……でっかいなあ」
フォーリアさんに各所を案内される度、そんな感嘆にもなっていないような声が出ていることに私は気づいていなかった。
「はえぇ……すごいなぁ」
「ふふっ」
あれっ!今フォーリアさん笑った?
「なにかおかしかったですか……」
「アマネ様の反応がいちいち面白く……いや、不敬でしたね。申し訳ありません」
「笑顔初めて見ました、嬉しいです!」
「?それなら良いのですが……」
フォーリアさんの笑顔を初めて見れたことで私はなんだかウキウキしていた。
「そしてここが礼拝堂です。既にご存知でしょうが、改めてご紹介します」
「はい」
豪奢な扉を開くと広いホールが現れる。昨日私はホールの中央に置かれた寝台の上で目を覚ましたんだっけ。今は寝台は片付けられて、代わりに沢山の長椅子が置かれている。確かに礼拝堂と呼ぶに相応しい様相だ。
礼拝堂の一番奥を見て私は違和感を覚えた。
「あの奥って、椅子、ですか?」
礼拝堂といえば一番奥には祈りの対象になるシンボルが置かれているものでは無いだろうか。
「はい、雨の女神が座すための椅子です。あるいは雨の巫女が座すこともあるでしょう。アマネ様もです」
雨の女神が座るための椅子……ってことは
「雨の女神さまが本当にいて、座ってたってことですか!?」
フォーリアさんは些かキョトンとしてええ、と首肯した。
「そうか異世界だもんね、本物の女神様が居たっておかしくないか……」
「しかし女神がおわしたのは遥か過去の話です。その後は200年前に召喚された雨の巫女が座ったのみでしょう」
「200年前にも私みたいな人が……?」
「はい、文献に記録がありました。アマネ様の召喚に当たって色々調べたのです」
200年前の巫女さん……一体どんな人だったんだろう?私と同じで不安だったのかな、それとも力を使いこなしていた?知りたい……
「あの、200年前の巫女さんはどんな人か分かりますか?」
「残念ながら、かなり劣化した文献だったもので、彼女の人となりまでは分かりません。申し訳ありません」
フォーリアさんが明らかにしゅんとなる
「いいえ、いいんです、ちょっと気になっただけなので!」
「フォーリア殿下、アマネ様、よろしいでしょうか?」
そこへケイティーさんが現れた
「何事か」
「王子王女殿下方がぜひ巫女様にお会いしたいとのことです」
「なるほど、姉上も帰ってくると仰っていたな。アマネ様、突然ではありますが私の姉弟達にお会い頂けますか?」
「は、はい!フォーリアさん兄弟いたんですね」
「ええ。丁度良いですね、アマネ様は女神の椅子へ」
「えっ!座っていいんですか?」
「もちろんです。さあ」
促されて何段か高いところにある椅子に座ると、不思議となんだか落ち着く感じがした。
傍にフォーリアさんが居てくれるから、そのせいかな。
そして礼拝堂の扉が開かれると、幾人かの見目麗しい王子王女が入って来た。あれがフォーリアさんの兄弟……。
「雨の巫女よ、突然の訪問申し訳ありません、わたくしは元第一王女のヴァイオラと申します。今は隣国に嫁いだ身ですが、一目巫女様にお目通りしたくまかり越してございます。以後お見知り置きを……」
「アマネ様、私の姉に当たります」
「お姉さんがいたんですね、よろしくお願いします」
私もぺこりと頭を下げる。
「巫女様、お初にお目にかかります。第二王女のロザリンドと申します。本当は昨日のうちにご挨拶したかったのですが……」
「ロザリンド」
「はい、兄に止められまして、どうぞ我が国にお恵みを」
はい、がんばります、ぺこり。
「巫女様!俺は第二王子のディーズです!兄上は堅物で苦労するでしょうけどよろしくお願いしますね!」
「ディーズ……お前は……」
そんな事ないです。フォーリアさんはとっても優しいです。
「巫女様、お目にかかれて光栄です。僕は第三王子のサートゥルと申します。どうぞ我らにお恵みをお与えください。さ、シーリア」
「みこさま、わたしはシーリアといいます!えっと……雨のおめぐみを、よろしくお願いします!」
か、かわいい……!
「末の妹のシーリアです。」
嵐のような自己紹介の間私はろくに返事が出来なかったけれど、皆さん気にしてはいないようだった。
なるほど礼拝のためのシンボルになった気分だった。
「久しぶりに姉弟が揃ったので今宵は晩餐会になります。アマネ様も参加されてはいかがですか?」
「そうですね、私ももっと皆さんと交流したいです」
一方的に挨拶されるがままだったので交流の場が持てるのは嬉しい。
「ではまた夜に、お部屋までお迎えに上がります。」
そう言ってフォーリアさんは椅子から降りるのをエスコートしてくれた。
明日も12時頃投稿予定です。
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