39.第三王女は社交界デビューする
私はエピファネイア王国第三王女のシーリアです。
この度社交界デビューすることになりました!
社交界というのは王族や貴族や時には有力な商家の方々か集まる舞踏会やパーティーなのですが、結婚相手を探す場所であったりもします……私が結婚なんてことはまだまだ遠い未来の話だと思うのですが、社交界デビューするからには私のお披露目ということになるそうです。
いままでずっとヴァイオラお姉様やロザリンドお姉様に甘えてばかりいた私ですが、お二人ともお嫁に行ってしまった今、社交界デビュー、一人でも頑張って見せます!
と、思ったのですが。
「シーリアさん、すみません……礼儀作法の勉強も手伝ってください……」
ちょっと涙目のアマネお姉様が一緒でした!
アマネお姉様は王妃様になるための勉強を頑張っていらっしゃいます。
そこで礼儀作法の勉強をロザリンドお姉様が手伝っていたのですが、お嫁に行ってしまったので私にお鉢が回ってきたようです。
「アマネお姉様が一緒で嬉しいです!一緒に社交界でもやっていけるように、頑張りましょう!」
こうして二人で礼儀作法の練習を頑張ったのでした。
———そうして迎えた社交界デビュー当日
お父様がパーティーのゲストに告げました。
「今宵は我が末娘のシーリアが初めて社交界に出る。皆の者よろしく頼む」
「エピファネイア王国第三王女のシーリアと申します。皆様どうぞお見知りおきくださいませ」
練習した通りに、膝を折りドレスをつまみ上げる礼をする。周りからは拍手が湧いて、ほっとした。
今日は弦楽団の皆さんも来ていらっしゃるので、踊ることもあるでしょうか。たくさん練習はしましたが、本番は初めてです。ドキドキします……。
もしかして誰かに誘われるかも……と思ったのですが、誰にも誘われません。やっぱり私は幼すぎるでしょうか……ちょっと悲しいです。
***
シーリアをダンスに誰も誘えないのは、背後にいるフォーリアが睨みをきかせているからだった。
フォーリアは妹に甘いが、この末の妹に関しては特にそうだ。生まれたと同時に母を失ったこの子には上の方の兄弟みな親のように接してきた。つまり、過保護である。
その鋭い視線の睨みに負けずにシーリアをダンスに誘うものが一人現れた。
「わ、私は侯爵家の者、シーリア王女殿下、どうか私と踊っていただけますか?」
「はい、よろこんで!」
シーリアが喜んでいるから見逃したが、変なことをするようなら即刻引き剥がす!
フォーリアは相変わらずの視線を送り続けているのだった。
一方その頃、フォーリアの婚約者として出席したはずの天音は年嵩の貴族たちに囲まれてしまっていた。
「この頃どうしても腰が痛くてね……巫女様治せやしませんか……」
「ええと、ほんとはダメって止められてるんですけど、特別に……」
天音の女神の力、特に癒しの力は需要があまりにも高い。言われるまま使ってしまっては天音が疲弊しきってしまうと、半月に一度の礼拝堂での面会日にのみその力を使うことになっていたが、押しに弱く優しい天音は貴族たちに癒しを施していた。
「私は膝が痛くて痛くて……」
「膝ですね、足を失礼しますよ……」
こうして次々貴族たちの言われるままに癒しを施す天音であった。フォーリアの目に入れば激怒必至である。さらには調子に乗った貴族がこんな申し出をしてきた。
「どうかうちの息子と踊っていただけませんか!」
「えっ!でも私は婚約している身で……!」
「ご利益がありますように、お願いします」
「ええと……」
天音が断りきれずにいたその時、フォーリアが鋭い声で割って入った。
「我が妻と踊ろうなどと、笑止千万。私を殺してからにしてください、できるものならですが」
「フォーリアさん……」
「これは王太子殿下、失礼しました……」
相手は小さくなって引き下がった。
「シーリアの相手を見定めるのに必死になっていたら、天音さんが危ないところでした……一生の不覚です……」
フォーリアは自分自身への怒りでいっぱいのようだった。
なので気づいていない。
「フ、フォーリアさん、我が妻だなんて……気が早いですよ……」
照れる天音を前にして、自分の言った言葉を振り返り赤くなってしまうフォーリアであった。
「で、でも婚約しましたから!もう妻のようなもの、ですよね……?ダメですか……?」
「ダメじゃないです……!」
「では、俺と踊っていただけますか?」
「はい、もちろん!」
そう言って二人は手を取り合い、楽団の近くへと移動し、ステップを踏み始めたのだった。
***
フォーリアお兄様とアマネお姉様が踊っているのを、皆が見ていました。
素敵な、本当にお似合いのお二人です。
シーリアにも、いつかあのように将来を誓い合うひとと踊る時が来るのでしょうか?
いまはまだ早いけれど私だけの素敵な人が現れて欲しいなと思うのでした。




