31.雨の巫女再び
雨の巫女が戻ってきたという知らせは瞬く間に王城中、王都中、そしてエピファネイア王国中を駆け巡った。
「巫女様〜戻ってきてくれたんですね〜!!これでフォーリア兄も安泰ですよ!」
「アマネお姉様とずっと一緒にいられて、嬉しいです」
ロザリンドさんとシーリアさんに両側から抱きつかれる。
「しかし今度の髪の毛もかっけえな!巫女様!」
「女神の力も扱えるというのは本当ですか……?」
士官学校からわざわざ帰ってきてくれたディーズさんと、サートゥルさんが興味津々と言った具合で聞いてくる。
「はい、女神さまは私に力を託してくれました。でも器となって消えることはもうないですよ!」
「フォーリア兄ったらそんな重大なこと私たちに隠してたなんて、まあ、納得しましたけど……」
フォーリアさんは私を儀式で送り帰したあと事情を皆さんに話していたらしい。
「でもよかったです、女神さまは分かってくれたんですね……」
「はい、これからは皆さんもとずっと一緒です!」
雨の神殿に帰っていたケイティーさんも王城に来てくれていた。
「アマネ様!よくぞお戻りになりました!」
「ケイティーさん!!」
私たちは抱き合って喜びを伝えた。
「ケイティーさんの言葉のおかげで、フォーリアさんの、愛する人の手を離さずに済みました。ありがとうございます」
「アマネ様が後悔のない選択を出来たのなら、何よりでございます!このケイティー、これからも一生お仕えいたします」
「ケイティーさん……嬉しいです。これからもよろしくお願いします!」
城下町は巫女の帰還を知った民たちで溢れかえっていた。帰る前、民たちに顔を見せられなかったこともあり、フォーリアさんにお願いした。
「もう女神の器として消えることもないです。大丈夫です、民たちに会う機会をください」
「アマネさん、……そうですね、くれぐれも女神の力は使いすぎないでくださいね」
フォーリアさんはまだ心配なのか、女神の力に頼りすぎることを良しとしていないのか、気をつけるように言われた。
かくして、王城の礼拝堂にはまた民たちで溢れかえり、一目巫女を見ようとか傷や病を治してもらおうと列を成していた。
最初は女神の椅子に座っていたが、結局癒しの奇蹟を求める民が多かったので、椅子のふもとで顔見せを行っていた。
「女神さま、どうか癒しを……」「巫女様……どうかお助け下さい!」
「大丈夫です、いま治しますからね!」
傷を負う人、不治と言われた病にかかった人、それぞれに手を当てて癒していく……。
全ての民が礼拝堂からいなくなった時にはすっかり夜になっていた。
「つ、疲れた……」
「お疲れ様です、アマネさん」
項垂れていると、フォーリアさんは心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「やはりこの民との面会はアマネさんの負担が多すぎます。これっきりにしましょう」
「でも、プルウィアさまから力を預かったので、やっぱりこれは私の仕事なのではないかと思うのです。半月に一回くらいにしてもらえると助かりますけど……」
さすがに疲れが半端なく、弱音を吐いた。
「ではそうしましょう」
「それに、私の世界ならここまで重症にならないような風邪を引いてる人も多かったです。皆に衛生観念を覚えてもらわないと……」
私はお医者さまでもなんでもないけれど、そういった印象を受けた。
「衛生観念、ですか」
「そうです、外から帰ったら手を洗う、うがいをする。それでだいぶ病気は減ると思います」
「なるほど、これも女神の力に頼らないといういい例になりますね!さっそく民衆に周知するよう、議題にあげましょう」
「ありがとうございます、お願いします」
「グラス地方がまだ雨不足だと、シルヴァーホーク伯爵から書状が届いていました」
フォーリアさんが私に告げる。グラス地方のシルヴァーホーク伯爵領、最初に雨を降らせに向かった地方だ。もはや懐かしい。
「では、雨を降らせに行きましょうか」
「ダムの建設予定地の下見もしたいです」
「もうそこまで話が進んでいるんですか?」
私はびっくりして、問いかけた。
「まだ建築家を集めて設計している段階ですが、自分の目で見ておきたかったのです」
「そうなんですね。では、雨を降らせて、ダム建設予定地の視察の旅に出ましょう!」
「はい!」
数日後、近衛騎士団に建築家たちを乗せた馬車、それに私たちを載せた馬車の隊列が出来上がっていた。
馬車に乗り込む前、フォーリアさんに
「なんだか懐かしいです。また新しく旅が始まる。あの時に戻ったみたいです」
と、声をかけた。
「でもあの時とは違いますよ」
「そうですね、わたしはすっかり雨を降らせられるようになりましたし、女神の力も使えます!」
「こういう違いもあります」
ふんすと得意げになった私の頬に、フォーリアさんはキスをした。
「……それは、そうですね。フォーリアさんが好きになりました……」
「……俺もアマネが好きになりました……」
フォーリアさんも照れくさそうにしていた。照れるくらいならしなきゃいいのに、格好つけたがりで、可愛い。
「さあ、グラス地方の人々が待っています!行きましょう、アマネさん!」
「はい!」
私はフォーリアさんの手を取って、馬車に乗り込んだ。
第一部 完
これにて第一部完結です!今まで読んでくださりありがとうございました!
評価、感想などお待ちしております。
第二部は更新速度落ちますが、どうぞもう少しお付き合い下さい!とりあえず明日は1話アップします。




