27.王都への凱旋
隊列が王都に入ると、今までとは比べ物にならないくらいの民衆が出迎えてくれた。
私は馬車の窓から身を乗り出し、手を振っていく。
私が元の世界に帰れば、またこの人々は干ばつで苦しむかもしれない?私が女神と同一化すれば、みんなずっと、幸せでいられる?
フェノーメノ辺境伯の言葉が忘れられない私は、そんなことを思いながら手を振っていくのだった。
「生憎と元の世界に帰る儀式は次の新月の夜を待たなくてはいけません……。それまでは王城でゆっくりお過ごしください」
とはフォーリアさんの言だ。次の新月まで半月はある。それまではこの王城で過ごすのだ。
それからは毎日、フォーリアさんとダムの話をしていた。
とは言っても私はダムの専門家でもないし、遠足で一回行ったことがあるような無いような有様なので、推測でしか話せなかった。
建築物が好きだというサートゥルさんも混じえて、三人でダムの設計図のようなものも描いてみた。
「異世界の叡智は素晴らしいですね、そんな大きな湖を人工のものでせき止めるなんて……!」
ダムの話をしたらサートゥルさんは嬉しそうだった。
サートゥルさんはフォーリアさんを少し小さくしたようにそっくりなので、ダムで盛り上がる二人を見るのは何だか面白く、可愛かった。
ある日、何だか王城の外が騒がしいのに気がついた。
シーリアさんが教えてくれた。
「アマネお姉様の巫女としてのお力がすごいと、国中で評判なのですよ。それで、巫女様にひと目会いたい方や、癒して欲しい方でまた城下町は溢れかえっているみたいです……」
そんなの知らなかった。また礼拝堂で面会をしないんですかとフォーリアさんに尋ねると、
「駄目です」
とフォーリアさんは断固として言った。
「今のアマネさんならどんな奇蹟も女神の力で起こせるでしょう。しかしそんなことを続けていけばアマネさんは消えてしまう……そんなアマネさんを民たちに会わせる訳には行きません」
「せっかく会いに来てくれているのに……」
私が言うとやはりフォーリアさんは頑なだった。
「申し訳ありませんがこればかりは譲れません。アマネさんも外には出しません」
王城は広いから気にならなかったけれど、私ってもしかして軟禁状態!?
「それともまだフェノーメノ辺境伯の言葉を気にしているのですか。あんな戯言早く忘れてください。それともこう言った方がいいですか?……俺以外の男の言葉など忘れてください」
「…………」
あまりに情熱的な口説き文句に唖然としているとフォーリアさんも恥ずかしくなってきたのか赤くなっていた。
「今のは何か違いましたね、忘れてください……」
なんだか小さくなったフォーリアさんが可愛かった。
でもここまで言われたからには、フェノーメノ辺境伯の言葉など忘れてしまおうと決心した。
「フォーリア兄ったらそんなこと言ったんですか?
すごい、すごいですよ、巫女様!これは脈アリ間違いなしです!」
ロザリンドさん主催のお茶会に参加するのも日常の一部になっていた。
「脈アリも何も、兄貴の傷を治した後抱き合ってたよな」
今日はディーズさんも参加だ。それはまだ言ってなかったのに……!ロザリンドさんがきゃあと歓声を上げる。
「巫女様!ほんとーに元の世界に帰っちゃうんですか!?このままフォーリア兄と一緒になってくださいよ〜!ホントの姉妹になりましょうよ〜!」
ロザリンドさんに腕を掴まれて揺さぶられる。
「シーリアも……アマネお姉様がずっと居てくれると嬉しいです……!」
反対側からはシーリアさんに腕を掴まれてしまった。
この二人には私が女神の器として消えてしまうかもしれないことを話していない。髪の毛のことも誤魔化して伝えている。
「……でも、当のフォーリアさんが私を元の世界に帰したいと言っていますから……」
「んもー!一体フォーリア兄が何考えてるか分かりません!私なら好きな人から絶対手を離さないのに!」
愛する人の手を離してはいけない。ケイティーさんが涙ながらに語ってくれたことを思い出した。
「元の世界に帰る儀式の前に、巫女様への感謝を示す舞踏会を行うことになりました。儀式にはどうしても大勢の祈りが必要ですので、人を集めるついででもあるのですが……アマネさんにもぜひ楽しんで頂きたいです」
フォーリアさんからそう告げられた。
お城での舞踏会なんて、おとぎ話の世界みたいで素敵……。
うっとりしているとフォーリアさんが跪き私の手を取って言った。
「アマネさん、私と踊っていただけますか?」
「……はい、もちろん」
フォーリアさんは私と踊りたいと思ってくれるんだ……嬉しかった。
「でも私、踊ったことなんて一度もないです!」
「お教えします。これから練習しましょう」
それからフォーリアさんと練習の日々が始まった。
フォーリアさんは基本のステップから丁寧に教えてくれた。
最初の私はぎこちなく見れたものじゃなかったけれど、段々と様になってきていた。
「これでもう大丈夫でしょう、あとは俺に身を任せてください」
「は、はい……」
顔を上げると唇が触れてしまいそうなほど近くにフォーリアさんの顔があった。
今までずっと足に集中していて気づかなかったけれど、こんなにフォーリアさんと密着していたなんて……!
急に胸が高鳴って、ドキドキしてしまった。
「おや、雨が。珍しい」
すると外は雨が降り出してしまって、私はドキドキを隠すので精一杯だった。
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