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2.最初の奇蹟

 召喚の儀式のために礼拝堂に押し込められていた人々は一旦解散するようにとのフォーリアの号令で、パラパラと散っていった。

 後にはフォーリアと天音だけが残された。


「この国、ええっとエピファネイア王国、でしたっけ。そんなに雨が降らないんですか?」

「はい、巫女様。もうすぐ三月ほどになります。この干ばつで民たちの生活はもうままならないのです」


 3ヶ月!?そんなに雨が降らなかったら、みんな喉が渇いて死んでしまうのでは……。

 それで私が呼び出されたんだ。本当にこの国の人たちは雨の女神様の助けが必要なんだ。

 でも私は女神様でも巫女様でもなんでもない、ただの女子高生の天音で……。


「あの、その巫女さまとか、呼び方どうにかなりませんか……私そんな大層なものじゃないです。本当に雨を降らせられるかわからないです。自信ないです……本当に」


 礼拝堂にいっぱいいた人たちの期待に満ちた顔を思い出す。

 もし期待通りに雨を降らせられなかったら?一体私の立場はどうなってしまうんだろう。あの期待に満ちた顔はみるみる落胆に変わって……そして?私は?


「では、お名前でお呼びします」

「あ、名乗ってもいなかったですね。私は天音、未城天音といいます」

「ミシロアマネ様……ですね」

「うーん、天音でいいです……」

「ではアマネ様」

「様はどうしても付くんですね……」


 フォーリアとの押し問答の結果、やっぱり様付けは回避できなかった。


「そうだ、私はあなたのことを何と呼べばいいですか?」

「どうぞフォーリアとお呼びつけください。私は此度の儀式のすべてを取り仕切って参りました。アマネ様のことも、すべて責任をもってお仕え、お守りいたします」


 少し浅黒い肌を持つ漆黒の髪の王子は、跪いてそう答えた。


「いや、でも王子様なんですよね!?呼びつけるのはちょっと……。多分すごくお世話になるんだと思いますし、フォーリアさん、でいいですか?」

「は、仰せのままに」

「態度も、もっと楽にしてくれていいですから!」

「しかし……」

「そのうち私が大したことないただの人間だってわかりますから、今は無理でも、きっとそのうち

 もっと気楽にお話しましょう。約束です」


 そう言って私は小指を彼に差し出した。


「アマネ様、これは……」

「そっか。わからないですよね。これは私の生まれた国での約束のしるしです」


 彼の右手を少し強引にとって、小指を絡めて何度か上下させる。


「アマネ様にも、生まれた国がおありなのですね……それを我々は……」


 フォーリアさんの目に罪悪感がよぎっている。その思いだけでありがたい。


「どうせ死ぬところだったんです!あんまり気にしないでください!」


 過ぎたことは仕方ない。それよりも私が今すべきことをやろう。

 あのたくさんの期待に応えるために!


「とにかく!私は雨を降らせればいいんですよね?」

「はい、召喚直後で申し訳ないのですが、我が国は一刻も早く雨のお恵みを必要としています」

「本当にできるか分からないですけど、やってみます。私を外に連れて行ってくれませんか」

「は、今すぐ」


 フォーリアさんに導かれて礼拝堂の外へ出ると、まだ人々がたむろしていて、私の姿を見ると歓声が上がった。

 私はこれから奇蹟を起こさなければならない。フォーリアさんの、この人たちの期待に応えるため!


 とりあえず両手を祈る形に組んで、祈ってみる。今日は私の特別な日、誕生日。

 毎年必ず雨だった。それなら今だって雨じゃないとおかしいよね!?


「ああ!見ろ!雲が!」

「雷も鳴っているぞ!」


 どうかどうか神様、いつもみたいに雨を降らせやがれーーっ!



 ―――にわかに降りだした雷雨に打たれながらフォーリアは呟く。


「これは……やはり貴女は本物の雨の巫女に違いありません……」






毎日投稿目指しております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 優しくて大胆な発想ができて、その上ハンサムな王子、素敵。 ポジティブで明るい天音ちゃんも素敵。 2人の関係がどうなるのか、楽しみです。
[良い点] 主人公が雨女。 これはありそうでない設定ですね。 そして異世界でも雨を降らせる女。 これは色々と先が楽しみです。 面白かったので、ブクマさせて頂きました。
[良い点] とても続きが気になるお話の始まり方で今後が楽しみです!! タイトルもすごく好みです! 天音がこれからどうなるのか、フォーリアは何者なのか、気になります。 [一言] フォーリアの見た目が好き…
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