24.ホーリックス商会
私はディーズさんともう一回サラさんの地下牢に来ていた。
「サラさん」
「……またあんたか」
「貴方の雇い主は、ホーリックス商会ですね」
「……私は何も言わない……」
「……それなら、何も言わなくてもいいです。ただ着いてきてくれればいい」
「……まさか、ホーリックス商会に乗り込む気!?やめなよ、今度こそ殺されるよ!」
「大丈夫です。私は女神さまとおなじですから」
私はディーズさんに向き直る
「明日、ホーリックス商会にサラさんを連れて乗り込みましょう。彼女が何よりの証拠です」
「そんな無茶な!危険すぎる!」
「ではこれ以外に方法がありますか?」
「それは……思いつかないけど。兄貴にも話そう。兄貴ならなんか思いつくかもしれないし」
フォーリアさんにはもう無茶させたくなかったけど、頷いた。
念の為ベッドで静養していたフォーリアさんに事の顛末を話した。
「アマネさん、一人で危険なことをしようとはしないでくださいね」
少しキツめに言われてしまった。
「ごめんなさい……」
「しかしほかに手立てがないのも確かです。アマネさんの言う通り、サラを連れてホーリックス商会へ乗り込みましょう。我々と、騎士団の面々もです」
フォーリアさんは続けた。
「あくまで最初はただの面会ということにします。そこでサラに出てきてもらう。自ら罪を認めるならそれでいいですし、抵抗するようなら捕らえます」
また戦いになるかもしれない。盗賊に襲われて震えていたような私じゃ足手まといかもしれないけれど、今の私なら……!
「アマネさんは無闇に女神の力を使わないようにお願いしますよ。髪の毛がまた染まっています……」
「……それは、努力します」
自分の髪の毛をつまんでみると、サラさんの傷を治した分、確かに半分よりも上の方が水色に染まっていっていた。
バリアシオン子爵に頼んで面会の先触れを出してもらって、ホーリックス商会へ向かう。
馬車と騎士団で隊列になって進んでいると、いつの間にか民衆が集まっていた
「巫女さま〜!」「ありがとうございます!」「井戸が蘇りました!」
そんな声があちらこちらから聞こえてくる。
「フォーリアさん、いいですか?」
「少しだけです。用心して下さい」
私は窓を開けて民衆の声に応えて手を振った。こんなに味方がいてくれる。きっと、大丈夫。
ホーリックス商会の前に馬車が着くと、フォーリアさんにエスコートされて降りる。降りたところには白髪混じりの初老の紳士が立っていた。
「これはこれは雨の巫女様。本日は御足労痛み入ります。私がホーリックス商会の代表、アンソニー・ホーリックスです」
「雨の巫女、未城天音です。よろしくお願いします」
お互いに握手する。自分を殺そうとしているかもしれない人と握手している。背筋が寒くなった。
「さ、立ち話もなんですから中へどうぞ」
「し、失礼します……」
店の中、応接室へと歩を進める。アンソニーさんは自分の机へと着き、葉巻を吸い始めた。私は勧められてソファに座った。壁際にはディーズさんと騎士団の方々が立ち並ぶ。フォーリアさんは縄で繋がれたサラさんを連れて馬車に留まっている。
どのタイミングで話を切り出そうか……。
「しかし雨の巫女様がこのホーリックス商会になんの御用でしたかな」
「……水の悪徳商法を、やめて頂きたいのです」
「……ほう?」
「井戸を独占して、水を高値で売っていると聞きました。そのようなことは、やめてください」
「巫女様はなにか勘違いしていらっしゃる、井戸のない地域の民に適正価格で売っているだけですよ、ははは」
アンソニーさんは笑ってのける。この人には人の心というものがないのだ……。
「今日はもうひとつお話があります。」
私はディーズさんに目配せすると、フォーリアさんを呼びに行ってくれた
「私たちがバリアシオン子爵邸へ向かう際、盗賊の襲撃を受けました」
「……それは災難なことで」
「不自然ではありませんか?普通盗賊とは隊商の積荷を狙うものと聞きました」
「確かに、そういった話は多いですな」
ふーっと葉巻の煙を吐き出すアンソニーさん。
「もしもそれが敵の威力偵察だとしたら?」
「ははは、面白い推測ですな」
「そして正面から襲うのを諦め、暗殺者を送り込んだとしたら?」
「…………」
「フォーリアさん!」
フォーリアさんがサラさんを連れて現れる。
サラさんはガタガタと震え明らかに怯えていた。
「……サラ」
「……っはいぃ!」
「お前しくじったな!!」
アンソニーさんが自分の机からなにか取り出してサラさんに向ける、あれは、銃!
私は咄嗟にサラさんの前に出る。
「アマネッ!」
フォーリアさんの叫びが聞こえる。
銃弾が私に迫ってくる。
大丈夫、それは私には当たらない!私は水の防壁をイメージして目の前に展開した。
銃弾は防壁に弾かれて床に落ちた。
アンソニーさんが騎士団の方々に速やかに取り押さえられる。
「エピファネイア王国第一王子フォーリアの名において、あなたを雨の巫女及び私の暗殺未遂で捕らえます!」
「クソっ!クソっ!サラ!しくじりおって!何が雨の巫女だ!このアマが!!」
アンソニーさんが連行されながら毒づく。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
サラさんは可哀想なほど怯えていた。私はサラさんに声をかける。
「大丈夫です、もうあなたを怒る人はいなくなります。サラさんも罪を償ったら、自由に生きてください」
こうして、襲撃の首謀者、実行犯は捕らえられ、事件は終幕となったのだった。
サラは幼い頃からアンソニーに虐待され、利用されてきました。彼女の怯えはそこから来ています。
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