22.女神の力
フォーリアさんが意識を失った。こういう時どうするんだっけ?確か心臓マッサージを、でも胸からは血が溢れてる。どうしたらいいの??
ただ傷口から溢れる血をを押し留めることしかできなかった。段々とフォーリアさんの熱が奪われていくのがわかる。
「ちくしょう……兄貴、俺にあれだけ偉そうにしといてこのザマかよ!あの女も爪を剥いでも何も吐きやがらねえし……!」
ディーズさんも枕元でフォーリアさんに呼びかける。
「俺に最悪の仕事をさせんなよ……」
涙声でつぶやいていた。
「最悪の仕事って……」
「……俺が兄貴の代わりに国王になる事だよ」
ディーズさんが喉の奥から絞り出すような声で答える。それって、フォーリアさんが、死……。
「死なせません!!フォーリアさんは死なせません!」
「雨を降らすのがせいぜいの巫女様に何が出来んだよ!!」
「……ッ!」
「……すまん、すみません巫女様。言いすぎた」
そうだ、私は雨を降らすのがせいぜいのただの巫女。女神さまの力があるわけじゃない……。
……でもそれは今までの話。
(プルウィアさま、どうか応えて……)
(……我が巫女、我が器よ……)
プルウィアさま!どうか貴女の力を貸してください!!
(……力を貸す?おかしなことを言う……)
……どういうことですか。
(……そなたは我が器、わたしとおなじ……)
おなじなら、プルウィアさまと同じ力を使えますか。
(……もちろん……)
わかりました、わたしはあなたとおなじになります。
目を閉じる。意識を傷口に置いた手に集中する。
(フォーリアさんの中の毒を、洗い流す)
雨を降らせるようなイメージでいい、泥を洗い流していくように……。
「巫女様?なんか光ってんぞ!?一体どうしたんだよ……」
ディーズさんの声がするけれど、集中。
傷口から血の代わりに水が溢れ出す。毒を洗い流した水だ。よし、解毒はできた。フォーリアさんの体のこわばりが無くなったのがわかる。
次はこの深すぎる傷口を塞がないと。
(肉と肉を繋ぎ合わせるように、念じる)
段々と肉どうしがくっつき合う。これで、傷口が閉じる。
あとはフォーリアさんの鼓動を取り戻すだけ。
(胸の高鳴りを思い出して、あなたにもこのドキドキが伝わるように)
私の代わりに傷ついてくれた優しい貴方。
貴方のためなら女神の器になって消えてもいい!!
「……アマネ……?」
フォーリアさんが意識を取り戻して目を開く。
「フォーリアさん!!そうです、天音です!分かりますか!?」
私は手を握って答える。フォーリアさんもしっかりとした力で握り返してくれる。
「アマネ……俺は一体どうなって……」
「もう心配は無いです!傷は治りました、毒も解毒できました。もう何も心配いりません!」
フォーリアさんが瞠目してベッドから身を起こす。
「まさか、女神の力を……!」
「はい、使いました。」
「それでは貴女が女神の器に……!」
「フォーリアさんが死んでしまうくらいなら、私が消える方がマシです!」
フォーリアさんは少しの逡巡のあと、私を抱きしめてくれた。
「アマネ……ありがとう」
「はい、フォーリアさん」
手を背中に回して抱き返す。フォーリアさんの確かな鼓動を感じられて、ほっとした。
ディーズさんがおずおずと口を開く
「あの、おふたり良い雰囲気のところ悪いんだけど、問題はまだある。誰がこの襲撃を画策したかだ」
サラさんが単独で犯行に及んだとは考えづらい、彼女は誰かに送り込まれた刺客だろう。ケイティーさんと入れ替わって、私を、殺そうとした。
私を殺して得をする誰か……。
「そういえば、なぜ私のところに来てくれたんですか?声もあげられなかったのに……それにケイティーさんは!ケイティーさんはどうなってるんですか!?」
私は大切なことを忘れていた。ケイティーさんだ。まさか、サラさんに……?
「ケイティーは無事だよ。俺と兄貴が念のため外の見廻りをしていた時に、縛られてたケイティーを見つけたんだ」
「それでアマネさんの身に危険が迫っていると判断して駆けつけたんですが、間一髪でした……」
そうだったんだ……。
「ケイティーさんは今はどこに?」
「別室で休ませてるよ。酷く怯えてる。見舞ってやってくれ」
ディーズさんの言葉に頷いて、ケイティーさんのお見舞いに行こうと立ちあがる。
するとディーズさんが驚愕した顔で叫んだ。
フォーリアさんも愕然とした顔をしている。
「巫女様!か、髪の毛が!」
「え?」
よく見ると私の背中まで伸ばした黒髪は、その毛先半分を、水色に染めていたのだった。
これが、女神とおなじになるということ……。プルウィアさまと同じ色になった毛先。この髪の毛が全て同じ色になる時が、プルウィアさまの再臨の時、そういうことだろうか……。
「巫女の力が強まった証です。気にしないでください!」
私は務めて明るく言う。でも真相を知るフォーリアさんの顔は曇ってしまうのだった。
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