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16.呼び声

 ―――また声が聞こえる。


(……我が……よ……)


(……我が巫女よ……)


(……そ……わた……に)


 ハッとして目が覚める。いけない、こんなところで居眠りなんて……。

 私は今王城シーザリオの礼拝堂、その女神の座に座っていた。


 時は遡る。

「アマネさん、巫女様に一目お会いしたいとの民が城下町に溢れているのです。地方からやってきた者も多いようで……」

 フォーリアさんが困ったように切り出した。

「このままでは商いに影響が出るとの陳情がありまして、申し訳ないのですが、民たちに顔を見せてやってくれませんか。もちろん警備は騎士団で厳重に行います」

 という訳で礼拝堂には言わば聖地巡礼をしに来た人たちで溢れかえっていた。警備に従い私の前を一瞬通るだけ、それでも皆嬉しそうに、またはありがたそうに私を拝んでいくのだった。

 私はと言えば最初は手を振ったり会釈したりと忙しくしていたが、あまりにも長時間に渡るのですっかり疲れてしまった。

 この椅子が何故か落ち着くこともあって居眠りをしてしまったらしい。

 でもそのとき、私は女神様の声を聞いた……。

 女神さま?一体私に何が言いたいんだろう……。

 でも居眠りは良くない。私は気合いを入れて手を振ったり会釈したりすることに集中した。


 ―――また声が聞こえる。


(……我が巫女よ……)


(……わたしに……その……を……)


 ハッとして飛び起きる。私は寝間着でベッドに入っているところだった。女神の椅子に座っていなくても夢の中で声が聞こえた……。これはどういうことだろう。とりあえず朝になったらケイティーさんに相談してみようかな。

 その後なんとなく眠れずに朝までベッドの中をゴロゴロしていたのだった。


 朝になり身支度を手伝ってくれるケイティーさんに事の顛末を話してみると、なんとも困ったような顔をされた。

「まずはフォーリア殿下にも話してみませんと……私からは何も……」

 何となく触れるのが怖くて、城の中でフォーリアさんと顔を合わせてもこのことを話すことは出来なかった。


「次はロベルト地方へ向かいます」

 次の日、フォーリアさんが部屋を訪れて言った。私の部屋はスイートルームのようにベッドルームとその前室に別れているので、リビングのようにテーブルと椅子がある。二人でテーブルに着き、話を進める。

 ロベルト地方……砂漠化が進んだ地域で治安も良くないと習ったっけ。

「まずはブリランテ伯爵邸へと向かいます。その後士官学校のディーズと合流します」

「ディーズさんも一緒なんですか」

 意外な名前が出て驚く。

「治安があまりよくありませんから、警備の人手は多い方が良いでしょう」

「士官学校はロベルト地方にあったんですね」

「ええ、盗賊や山賊の出る地域でもありますから、警備を兼ねて士官学校が建てられたのです」

 盗賊や山賊……ここが異世界であることを思い出した。

「大丈夫です。必ず私がお守りします」

 私の怯えを感じとったのか、フォーリアさんが目を見て言ってくれる。

「いいえ、フォーリアさんにディーズさんも一緒ですから、心配してません!」

「ええ、アマネさんは必ず元の世界に帰して差し上げます」

 これだ。この台詞を言うフォーリアさんの様子はなにか引っかかる。なにか隠されていて、誤魔化されているような……。

 声が聞こえることを、伝えてみようか。

「あの、関係ない話なんですけれど」

「はい、なんでしょう」

「……声が聞こえるんです、多分女神さまの。前よりはっきり、頻繁に。女神の椅子に座っている時だけじゃなく、寝ている時にも夢の中で」

「…………」

「フォーリアさん、私になにか隠していませんか。……教えてはくれないですか?」

「……………………」

 長い沈黙。フォーリアさんの逡巡する様子がみてとれる。

 やがて意を決したようにフォーリアさんは口を開いた。

「……隠し立てはもうできませんね、お話しします」


 それは、200年前の巫女の話だった。

 巫女は女神様の声が聞こえるようになり、さらには雨を降らせる以上の力を使えるようになり始めた。その頃巫女は使命を嫌がり始めたので、任を解き、元の世界に送り帰す儀式をしたとの事だった。


「巫女が何を嫌がったのか、そこまでは分かりませんでした。隠していて申し訳ありません……」

「話してくれて、ありがとうございます……」

「これで私の知っていることは全てです。それと……これは私個人の考えなのですが、人は女神に頼ることをやめていくべきだと思っています。このままでは200年前の巫女やアマネさんのように誰かが召喚され続けなければならない。嫌がられるようなことを、です。ですから、人の力で干ばつを抑える手段を考えていきたいと思っています」

「フォーリアさん……」

 フォーリアさんは決意を秘めた瞳で語ってくれた。

 私は彼の信じる未来を一緒に見たいと思った。


 それにしても、200年前の巫女、彼女は力を更に使えるようになったのに、何を嫌がったの?声が聞こえることと関係があるの……?


 ロベルト地方への旅を前にして、希望と不安の種が心に残ったのだった。


評価、感想、ブックマークありがとうございます!

次回も明日12時時頃更新です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読いたしました。 わーーーー!!!と叫んでしまいました。 フォーリアさん、そういうことだったんですね……。 次話も読ませていただきました、そういうこと、なのね……? 一体天音はどうなっ…
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