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2,手当


「え、ちょっと………!? なんで家の前でひとが倒れてんの!?」


 ()()を前にした私はひたすら困惑した。

 理由は2つ。

 1つ目。私の家は簡単に見つけられないようになっているから。

 2つ目。目の前にある()()は血に塗れていたから。


 以上の理由から疑問符が大量に頭の中を飛び交っている。


「って、ぼんやり現実逃避してる場合じゃない!」


 あり得ない光景を前に固まっていたものの、ハッと我に返る。


私の家の前(こんなところ)で死なれるのは、困る。すっごい困る」


 ぶつぶつと呟きながらバスケットを家の中に置き、物体もとい、ひとを若干引きずりながら、家の中に運ぶ。


「う〜、なんでこんなに重いの!? …………はあ、なんとか中に運べた…………」


 引きずってきたせいで、血が床に付いてしまっているけど、後回しにする。今はこのひとの手当が先。


 綺麗な水と清潔な布を用意する。まずは身体を綺麗にしないと、手当ができない。

 服だっただろう、ボロボロの布を脱がし、水に浸した布で血を拭き取っていく。少し拭いただけで、白かった布があっという間に赤く染まった。


「酷い傷………どんなことをしたら、こんな傷を負うの?」


 何度も拭いては水で洗い、拭いては洗いを繰り返した。透明だった水も濁り、そのたびに新しい水に変える。


 一通り拭いた後、傷口を消毒する。

 反応しないだろうけど、一応声を掛けてみる。


「ちょっと染みるかもだけど、我慢してね……」


 消毒液を付けた布で拭いても、身じろぎすらしない。

 ここまで反応が無いのは、おかしい。………毒でも盛られた?

 けど、息はしてるし………


 (いぶか)しみながらも、消毒を終え、包帯を巻く。


 手当が終わり、ふぅ、とひと息つくも、あることに気付く。


「怪我人を床に寝かしてちゃ駄目だよね……」



 ✤ ✤ ✤ ✤ ✤


 またそのひとを引き摺りながら、移動させ、家にある唯一のベッドに寝かせた。


「消毒液と包帯、あってよかった……まさかこんなふうに使うとは思わなかったけど」


 呟きながら、そのひとをジッと観察する。


 分かるのは、男のひとだということ。そして


「獣人さんだよねぇ………」


 彼の頭には獣耳が、そしてお尻のあたりから尻尾が生えていた。


 すうすうと寝息をたてている彼を見ていると、徐々に眠くなってきた。


 ……私、今血で汚れてるから、お風呂に入ったほうがいいのに………


 重くなるまぶたに抗えず、床に座り込んだ状態のまま、ベッドに突っ伏す。



 最期に見えたのは、やけに整った横顔だった。


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