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ボクトキミノサーガ  作者: 牧惣一郎
第二章 つぎの冒険
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007

先行したソフィアとレオンは階段から続く竪穴の螺旋通路を下り、暗闇に伸びる歩廊を前に待機していた。


「ソフィア。どう思う?」

「どう。とは?」

「薄暗くてよく見えないけどかなり広い空間だと思うんだ。」

「そうですね。風の流れもあるようですし、屋内という感じはしません。」

「アヴァ達はもうすぐ来るだろうからそれまで警戒維持だね!」


二人は再び周囲の気配を探るように集中していると背後から人の気配が近付いてきた。


「ただいま戻りました。二人とも異常はないですか?」

「はい。お疲れ様ですアヴァ。ダンチョーさんこれからどうしますか?」

「そうだな。ここからはカーム旅団が前に出るぞ。西風はついてきてくれ。警戒頼むぞ。」


旅団メンバーは慣れた動きで最小限の光源を確保しながら先導し歩廊を渡った先の開けた場所を拠点に定めた。

徐々に見えてきたのは山中とは思えないほど整備された古代の地下都市のような景観だった。所々劣化している箇所はあるが水道橋に水も流れておりまだ都市機能は生きているようだ。


一行は休息を挟んで周辺探索のために班を分けて行動を開始した。


「降りてきた階段を考えると納得の高さだな。こんな空間どうやって作ったんだ?」


「ダンチョーさん。謎解き魔法使いの出番かしら?まずはひとっ飛びして俯瞰図でも作る?」


「ほぉ。嬢ちゃん優秀だな!でもやめときな。上の方にチラホラ横穴があるだろ?おそらくだがラットマンが巣食ってんだよ。いまは向こうも様子見で攻撃してこないだけで下手に刺激したら蜂の巣になっちまう。」


「大丈夫よ。矢除けも使えるわ!」


「威勢がいいのは結構だが狙われるのは嬢ちゃんだけじゃねぇ。この規模だと物量で押し切られて各個撃破されかねん。いまは温存しとけ。」


リリアンはしぶしぶといった感じで引き下がりその場に腰掛けた。ちょうど複数人の足音が近づき周辺探索チームの帰還を知らせた。


「ダンチョー悪い知らせだ。おそらくこのダンジョンには地龍がいる。この先の区画で完全に破壊し尽くされたところがあるんだが岩場を貫くように巨大な横穴ができていた。」


エリックは報告すると撤退を視野に入れて行動指針を決めるよう進言した。


「そうか。地龍と遭遇はしてねぇな?」

「していない。存在確認もしていないがこの人数ではこれ以上の探索はリスクが高いと思う。」

「お前さんがそういうならそうなんだろうよ。そっちはどうだ?」


ダンチョーはエリック達とは別行動の周辺探索チームに声を掛けた。


「こっち側は特に異常はねぇかな。風を遡ってみたけど、人も通れねえ裂け目があってそこから吹き込んで来ていただけだった。ただ潮の匂いがしてたから大陸北部のどこか端まで来てるってことだと思うぜ。」


「あんちゃん達はどうだ?」

「こっちは面白いものを見つけましたよ。」

「ええ。一度リリアンにも見てほしいですが、おそらく例のダンジョンと同じ壁画だと思います。ただ仕掛けらしきものは見つけられませんでした。」

アヴァとソフィアは探査中に発見した壁画についてできる限り詳細に報告した


「例のってことはまたゴーレムが出るかもしれないわね。弱点は分かってるわ!追加調査にいきましょ!」


「・・・ダメだ。不確定要素が多い中での派手な戦闘は避けるべきだ。お前らは消化不良かもしれねえが今回の探索はここで切り上げる。これだけのダンジョンだ。しばらくは探索が続けられるだろうよ。」


ダンチョーが最終的に下した決定は撤退だった。新発見ダンジョンの初回探索としては十分な成果を得たとの判断だった。


「よし!みんな聞いてくれ。今回の探索はここまでとする。少し名残惜しい気持ちもあるが、これ以上はリスクが高すぎる。交代で休息を取り、体制が整い次第、撤収する。」



--数時間後--


「ねぇエリック。あたしたちだけ残るって選択肢もあるんじゃない?」


一行は拠点を引き上げ、竪穴を目指して移動を開始している。

列中央にいるリリアンは名残惜しい様子でエリックに耳打ちした。


「リリアン。その選択肢はない。今回は合同受注が条件の依頼だったこともあるが、撤退中に何かないとも限らないだろう?俺たちは十人で探索しているが、カーム旅団単独でも十人の探索チームは編成できるんだ。ダンチョーは態度には出さないが、いろんな場面で配慮してくれている。それにこんな時のために最終決定者を決めたんだ。この探索では不測の事態にならない限りダンチョーに従う。裏切ることはできない。」


「わかってるわよ。冗談よ・・」


「ならいいんだ。探索中の身勝手は全体を危険にさらすからな。」


二人の会話を終わらせるように先行するダンチョーが全員に停止指示を出した。


「ここを抜けたら一本道の歩廊だ。なんか嫌な予感がしやがる。ダイ、フッカ。偵察と進路確保を頼む。」


ダンチョーの指示を受けた二人は歩廊の半ばまで進み、進行可の合図を返してきた。偵察役の二人が残した照明魔法でぼんやりと照らされた歩廊は幅は十人が横並びでも十分な広さを備えていた。


「来るときも通ったけどさ、この下はどうなってるんだろうね。」


「見えないほうがいいものもあるかもしれませんよ。それよりもレオン。もし襲撃があるとしたらそろそろですよ。敵は暗闇になれたダンジョン魔獣。幅はあるとは言え一本道の歩廊。淡く光る照明で遠くからでも大まかに視認可能。そして、人は一度通った道には慣れて油断が----っ!!!」


アヴァは素早くバックラーを構え火花を散らした。


「前方敵襲!上から矢です!」

「盾構えろ!照明最大で打ち上げろ!!」



号令に従ってあたしたちは防御態勢をとった。

「なんでこうなるかなっと!!!」

あたしは照明魔法を打ち上げた。閃光に目をくらませたのかギャーギャーと騒ぐ声がうるさい。

「ソフィア!あたしを守ってね!」「自分もお願いします。」

「・・・お任せを。」


「敵はラットマン!数はうじゃうじゃだ。怯んでいるうちに突っ切るぞ!オレに続け!」


あたしたちは適当に射られる矢を盾と魔法ではじきながらダンチョーを追った。


「もう少しだ!きばれよ!」


竪穴に続く通路までもう少しというところで立っていられないほどに大地が揺れた。あたしたちは頭上から降り注ぐ矢と地震で剥がれ落ちる石材と足元を失って落ちてくるラットマンをはじきながら耐えた。天井が崩れ落ちるんじゃないかと思うほどに崩壊音は激しさを増していった。


あたしが立ち上がった時にはほとんどみんなが立ち上がっていてひとつの光景に目を奪われていた。矢も降ってこなかった。


あたしたちは、深い黒色の瞳に炎のような瞳孔に魅了されていた。


地龍だ。あたし死んだわ。


皆様ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますがお楽しみいただけたでしょうか?

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、星5評価をよろしくお願いします。

作者のやる気が漲ります!


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