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三戦目

 昼食会は良くわからない雰囲気で終わってしまった。

 そして、オレ達は部屋を応接間へと移動する事となる。


 この部屋も恐らくは、金を掛けているのだろうと思われる。

 座るソファーも柔らかで、部屋の内装も豪華な感じがする。


 だが、ゴルグは特にそれらを自慢するでも無かった。

 テーブル越しに座るオレへと、単刀直入に話を切り出した。


「貴重なお時間では御座いますので、さっそく本題へ入らせて頂きます。本日、ご訪問頂いたご用件をお伺いしましょう」


 ゴルグは真っ直ぐにオレを見つめていた。

 今までの商人としての顔では無く、領主としての顔を見せていた。


 オレはその視線に気を引き締める。

 そして、ゴルグの問い掛けに真っ直ぐ答えを返す。


「今後、大陸から争いを無くす為、全種族を一つに纏めるつもりだ。鬼人族にも、オレの取り組みに協力して欲しい」


 ゴルグは驚きで目を見開く。

 そして、言葉を選ぶ様に、慎重に問いかけて来る。


「それは、大魔王様が全魔族を、支配下に置くと言う事でしょうか?」


「支配と言うと語弊があるが、最終的には統治する事になるだろう。ああ、それと全魔族ではない。――人族を含めた全種族だ」


 オレの言葉に、ゴルグが再び驚きを示す。

 今度は目だけでは無く、大きく口も開いていた。


 驚きで固まるゴルグに、オレは更なる追い打ちを掛ける。


「エルフ族、ホビット族、ドワーフ族から、オレの配下に入りたいと打診が来ている。今後は人間との関係を含め、各種族と協議する予定だ」


「馬鹿、な……。大魔王様の就任から、まだ一月と経っていないと言うのに……?」


 オレの言葉が信じられないらしく、問う様な視線をシェリルへ向ける。

 そんなゴルグに対し、彼女は微笑みながら肯定の頷きを返していた。


「悪魔族、獣人族、不死族、夢魔族は、既に忠誠を誓っております。もはや、この流れは止まらないでしょう」


「既に魔王国の半分は支配済み……? いや、メルト様を手中に納めたからか……」


 手中に納めるという表現はどうなのだろう?

 ゴルグの中で誤解がないか、少しばかり不安があるな……。


 オレはメルトが欲しくて、国を治める事にしたのである。

 決して国が欲しくて、メルトと政略結婚を決めた訳では無い。


 まあ、その辺りは追々理解して貰えば良いだろうか?

 そんな風に考えていると、ゴルグが意を決した顔で問い掛けて来る。


「……それで、鬼人族はどうなるのでしょうか? 大魔王様は、鬼人族をどの様に支配されるおつもりでしょうか?」


「オレから何かを要求するつもりはない。しいて言うなら、可能な範囲でオレに協力してくれれば良い」


 曖昧な表現になってしまうが、他に言い様が無いのも事実。

 手を取り合って仲良くしたいだけで、何かをして欲しい訳ではないのだから。


 しかし、何故かゴルグの表情が真っ青になって行く。

 彼は何かに怯える様に、追い詰められた表情を浮かべていた。


「……れ、歴代魔王様の、借金については、どの様な状況でしょうか?」


 唐突ではあるが、課題となっていた借金の話を振って来た。

 魔王軍の財政状況について、不安視しているのかもしれない。


 オレはアイテムボックスから、黄金セットと宝石箱を選択する。

 卓上にそれらを敷き詰めながら、ゴルグに対して問い掛ける。


「返済を急ぐなら物品になっても良いか? 何なら、『神酒ソーマ』の様な貴重品でも構わないが?」


「い、いえ……。へ、返済の目途があるのなら、急ぐ必要は御座いません……」


 オレの問い掛けに、ゴルグは慌てて首を振る。

 テーブルの上の黄金や宝石に、怯えた様な視線を向けながら。


 そして、額に大量の汗を浮かべ、ゴルグがオレに言葉を掛ける。


「そ、その……。この地は魔王国の交易の要なのです! 今後も魔族の発展の為、この地をご活用頂くのは如何でしょうか!」


 何故だかゴルグの表情が、領主では無く商人物へと変わる。

 そして、オレに対して自らの領地をアピールし始めた。


 自領発展の為に売り込みを行うのはわかる。

 しかし、それはオレの考える方針とは異なっていた。


「魔族のみなら、それでも良かった。だが、今後は人族とも交流を深める。交易の中心地は、夢魔族の領地に移るだろうな」


「そう、なのですか……」


 プレゼンの失敗で、ゴルグがガックリと肩を落とす。

 顔色が悪く見えるが、彼は気負い過ぎでは無いだろうか?


 とはいえ、鬼人族の領地は人族の国と距離があり過ぎる。

 交易の中心地は、大陸の西端より中央付近の方が望ましいのだ。


 鬼人族はこれから、ドワーフ族等と技術を競って貰いたい所だ。

 そういう関係であれば、双方の繁栄に繋がると思われるのだがな。


「それで、他に気になる事はあるか?」


 オレはゴルグに対して問い掛ける。

 彼は心配性な領主みたいなので、不安の種を潰しておこうと思ったのだ


 ……しかし、ゴルグの口から出たのは、意表を突く言葉であった。


「――そういえば、悪魔族。彼等との契約の話が御座いましたな」


 幽鬼の如く、仄暗い眼差しがシェリルに向く。

 ゴルグの語る内容に、オレ達は思わず息を飲んだ……。

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