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二戦目

 オレ達はメイドの案内で、昼食会の会場へと案内された。

 そして、その会場の風景に驚かされる事となる。


 パーティー会場とも言える大きなホール。

 豪華そうなシャンデリアや、壁際の巨大な絵画にも目を引かれる。


 更には壁際に、ずらりと並べられたメイド達。

 いずれも、綺麗所と思われる美女ばかりである。


 しかし、何よりの驚きは中央を占める大テーブル。

 そこには圧倒的な品数の料理が、所狭しと並べられていたのだ。


「さあさあ、大魔王様! 遠慮なさらず、お座りください!」


 気が付くと、テーブル奥ではゴルグが席に付いていた。

 にこやかに笑みを浮かべて、席に付く様に促していた。


 オレ達はテーブルを挟んで反対側の席へと座る。

 テーブルがかなり大きいので、ゴルグまでの距離が結構あるな……。


「大陸中より集めた美食を再現しました! お口に合う物をお食べ下さい!」


 改めて確認するが、料理の内容に統一性が感じられない。

 本当に寄せ集められた料理が並んでいるといった感じである。


 フランス料理のフルコース等の、上品な配置等は考慮されていない。

 どちらかと言えば、満漢全席がイメージとしては近いだろう。


「ふむ……」


 オレは気になって、右隣に座るメルトへと視線を向ける。

 やはりと言うべきか、彼女は不機嫌そうに眉を寄せていた。


 こういう贅沢を嫌うのは、不死族領の村で把握している。

 とはいえ、もてなしの気持ちを無下にするのも違うだろう。


 オレはメルトの背中を優しく叩く。

 すると、気付いた彼女は済まなさそうに笑みを返してくれた。


「さて、それでは頂くとしよう」


 オレは右のメルトと、左のシェリルへと告げる。

 オレが料理に手を出すのを待ち、二人も食事を開始した。


 オレは見た目からは、味の予想の付かない料理を口にする。

 悪い味では無いが、驚くほどの旨さでもないな。


 ……いや、オレの舌が肥え過ぎなのかもしれない。

 魔王城ではメイド悪魔達の絶品料理が振る舞われていた為だ。


「如何でしょうか? いずれも、私が感動を覚えた品々で御座います」


 胸を張って自慢するゴルグの姿に戸惑いを覚える。

 ここは大人の対応として、褒めておくべき所なのだろうな……。


「ああ、中々に美味だな。これ程のもてなしには感謝せねばな」


 しかし、オレの返答にゴルグの頬が僅かに引き攣る。

 どうも、オレの反応が思ったより淡泊過ぎたのかもしれない。


 オレは慌ててアイテムボックスから樽を取り出す。

 まだまだ在庫の沢山ある、『神酒ソーマ』である。


「もてなしの返礼として、女神マサーコ様より頂いた酒を贈ろう。これは『神酒ソーマ』という貴重な品である」


「『神酒ソーマ』……。それに、女神マサーコ様ですか……?」


 オレが取り出した品に、ゴルグは戸惑った様子を見せていた。

 どうも、どちらも彼には馴染みの無い名前だったみたいだ。


 そして、そこにすかさずシェリルのフォローが入る。

 彼女はにっこりと微笑み、ゴルグへと説明を行う。


「現在の世界の管理者の名を、女神マサーコ様と言います。大魔王様は女神マサーコ様が地上に送られた使者なのです」


「そ、そうなのですか……? 元勇者であり、圧倒的力を持つとは聞いておりましたが……」


 ゴルグが目を丸くしている。

 やはり、オレに関する情報は、あまり出回っていなかったのだろう。


「そして、『神酒ソーマ』は古の伝承に残る霊薬。飲めばたちまち傷や病気を癒し、飲み続ければ不老長寿を得られると言われています。売れば巨額の富を得られますが、まあまず売りませんよね?」


「不老長寿っ?! それを売るなんて、とんでもない……!」


 流石はシェリルである。

 『神酒ソーマ』の情報をしっかりと把握していたらしい。


 オレが感心していると、シェリルはにこりとオレに微笑む。

 そして、オレにだけ聞こえる様に、小さな声で囁いた。


「私だけ、口にした事が御座いませんけど……」


「――っ……?!」


 そういえば、初めて振る舞ったのが獣人の村だった。

 そこで、メルトとリオンは『神酒ソーマ』を口にしている。


 エリーには彼女の城で、晩餐時に振る舞った。

 この旅の前には、ディアブロにも振る舞っている。


 主要メンバーでは、確かにシェリルだけ口にしていない。

 内心の動揺をオレは押し殺し、彼女の耳元でそっと囁いた。


「今夜、個別で振る舞いたいのだが……」


 オレの言葉に、シェリル驚いた表情を浮かべる。

 そして、嬉しそうな笑みでこう返してきた。


「今夜は二人っきり、ですね……?」


 いや、シェリルは何を言っているんだ?

 どうして、そういう話になるのだろうか?


 そして、シェリルの言葉が耳に入ったのだろう。

 メルトはオレの腕を掴んで、鋭い視線をオレに向ける。


「おい、ユウスケ。お前の伴侶が誰か、わかっているよな?」


「む、無論だとも! オレが愛しているのはメルトだからな!」


 オレは慌ててメルトの肩を抱きよせる。

 すると、メルトは嬉しそうなドヤ顔をシェリルに向ける。


 そんなメルトに、シェリルは鋭い視線を返していた。

 それ以上のやり取りは無かったが、内心ではハラハラさせられた。


「…………」


 そして、そんなオレ達の様子に、ゴルグがポカンと口を開く。

 それ以降、昼食会で彼から話し掛けて来る事は無かった。

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