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お出迎え

 ラヴィの領地で休暇を堪能し、オレ達は魔王城へと戻った。

 リゾート地計画も立てたし、後は実物の完成を待つだけである。


 オレ達は城門を超えた所で、メルトと共に馬車を降りる。

 すると、そこには出迎えのシェリルの姿があった。


「お帰りなさいませ、大魔王様」


 シェリルは綺麗な姿勢で頭を下げる。

 微笑みを浮かべており、戻りを喜んでくれているらしい。


 それは良いのだが、何故か目の下に隈が出来ている。

 疲労の色も見えるし、十分な休息を得られなかったのだろうか?


 シェリルの体調を気にしつつ、オレは優先事項を先に片づける。


「ああ、戻った。……それで、それらは何なのだ?」


 オレはシェリルの足元へと視線を落とす。

 そこではメルトと良く似た、三体の人形が頭を下げていた。


 大きさとしては、オレの膝と同程度だろうか?

 ねんど何とかという人形と、良く似たフォルムをしている。


 オレは内心でソワソワしながら、その人形を観察し続ける。

 すると、シェリルは頭を上げて、微笑みを浮かべる。

(三体の人形もシェリルに合わせ、頭を上げて微笑んでいた)


「大魔王様への贈呈用として作成致しました。作業補助用のゴーレムとなります」


「な、何だと……? これが、ゴーレムと言う奴なのか……」


 オレは膝を付いて、三体のミニメルト達を観察する。

 彼女達は挨拶をしているのか、片手を上げてニコニコ笑みを浮かべている。


 オレがそっと手のひらを向けると、ミニメルト達は意図を察したらしい。

 ハイタッチの要領で、オレに対して手を叩いて来た。


「え、えっと……。まだ、試運転中で動作が不安定なのですが……」


「これでまだ、安定していないと言うのか……」


 オレの知る限りだが、生前の世界でもこれ程の性能には達していない。

 ここまで高性能な知性を持つ、AI搭載型ロボットは無かったはずだ。


 それなのに、シェリルにはまだ満足出来る域に無いと言う……。


「あ、それとそれぞれ素材が異なっております! 順に説明致しますね!」


「うむ、よろしく頼む」


 確かに三体のミニメルト達は、それぞれ色も形も異なっている。

 それぞれに、何らかのコンセプトが存在すると思われた。


 シェリルはまず、ゴールドのミニメルトに手を差し向ける。

 手を向けられたミニメルトは、姿勢を正して手を上げていた。


「こちらはオリハルコン製となります。メルト様の通常装備をイメージしております」


「ほう、これが通常スタイルという事か……」


 ゴールデンなミニメルトは、軽鎧を身に纏った姿だった。

 腰に剣もさしており、剣士スタイルと思われる。


 いや、メルトは魔法も使うので、魔法剣士が正しいのか?

 ゴールデン・ミニメルトは両手を振って、オレにアピールをしていた。


「次に、こちらはアダマンタイト製です。魔王の鎧を装備した、完全武装状態となります」


 ブラックなミニメルトは、重鎧で全身を覆っていた。

 顔もヘルムで完全に隠れ、見た目からも非常に守りが硬そうだ。


 オレが初めて対峙したメルトは、確かにこの姿だった記憶がある。

 ブラック・ミニメルトは両手剣を掲げ、オレへとアピールをしていた。


「最後に、こちらはミスリル銀製です。普段のドレス姿で、非戦闘時の姿となっております」


 シルバーのミニメルトは、ヒラヒラとしたドレスを姿だった。

 武器も所持しておらず、オフ状態の可憐なメルトであった。


 オレにとっては、最も見慣れた姿と言える。

 シルバー・ミニメルトはスカートの端を持ち、優雅に一礼して見せた。


「私の技術では、大した性能となりません。あくまでも、玩具の一種とお考え頂ければと……」


「これが、大した性能では無いと……?」


 ミニメルト達は並んでオレとメルトの様子を伺っていた。

 特に今は、オリジナルのメルトの動きを目で追っている様だった。


 すると、オリジナルのメルトが呆れた表情で首を振った。


「何を考えているやら……。私は先に戻る。後は勝手にやっていろ!」


 むすっとした表情で、メルトは魔王城へと一人で向かう。

 どうやら、このミニメルト達が気に入らなかったらしい。


 ミニメルト達は素晴らしい出来栄えだと思う。

 しかし、自身の姿をしていると思えば、複雑な気分なのかもしれんな。


 ……等と考えていると、想定外の出来事が展開される。


「なにをかんがえているのやら。わたしはさきにもどる。あとはかってにやっていろ」


「なっ……?!」


 ゴールデン・ミニメルトが、メルトの真似をしていた。

 そして、メルトの後を追って、魔王城へと歩き出したのだ。


「なにをかんがえているのやら。わたしはさきにもどる。あとはかってにやっていろ」


「ほう……?」


 続いて、ブラック・ミニメルトも同じく真似をする。

 そして、同じ様にゴールデン・ミニメルトの後を追って行った。


「なにをかんがえているのやら。わたしはさきにもどる。あとはかってにやっていろ」


「なるほど、学習機能か……」


 最後にシルバー・ミニメルトも続く。

 三体のミニメルト達は、カルガモの如くメルトを追って行った。


 オレが感心してその姿を眺めていると、シェリルが小さく囁いた。


「え……? しゃべっ……」


 シェリルはポカンと口を開き、ミニメルト達を眺めていた。

 もしかすると、先程の言葉は謙遜で、思ったより良い出来だったのか?


 オレはふっと笑みを浮かべ、シェリルの手をそっと握る。

 そして、戸惑う彼女に向かって賞賛の言葉を贈る。


「最高の贈り物だ。オレは初めて、本物の天才を目の当たりにした」


「え……? ………………うえぇっ?!」


 シェリルはのけ反って、驚きを表現していた。

 中々にオーバーなリアクションである。


 オレは最高の秘書の背中を押し、彼女と共に魔王城へと戻るのだった。

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