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性欲大魔王

 気が付くと、部屋に朝日が差し込んでいた。

 いつの間にか、夜が明けていたらしい。


 オレはベッドに眠るメルトの顔を見つめる。

 安らかな寝顔を見て、ふっと優しい気持ちとなる。


「まさか、この様な未来が待っているとはな……」


 この世界に転生したばかりの頃は思いもしなかった。

 オレが結婚すること――いや、童貞を捨てる事になるなんて。


 オレはこの世界へ呼んでくれた女神様へ感謝を捧げる。

 いずれは、この恩にも報いなければならないな。


「それにしても、喉が渇いたな……」


 オレはベッドから降り、テーブルに置かれた装備を手にする。

 オレが持ち上げたのは、いつも利用している愛用の兜だ。


「『アイス』、『ファイア』」


 兜の中に氷を生み出し、炎で炙って水を生み出す。

 旅の中で、いつも行っている日常の風景だ。


 オレは兜を掲げて口を付ける。

 そして、少し温めの水をゴクゴクと飲み干した。


「大魔王様、失礼いた……」


 そっと扉を開き、シェリルが室内を覗いていた。

 そして、オレと目が合い、その視線が固まってしまう。


 ……おっと、今のオレは全裸だったな。

 オレは兜をテーブルに置き、置かれた衣服を身に着ける。


「ご、ごほん。失礼しました。……えっと、昨晩は良く眠れましたか?」


 シェリルは気まずそうに、視線を逸らして尋ねて来る。

 うら若き女性としては、この反応は当然のものなのだろう。


 オレはあえて気にしていない風を装う。

 そして、淡々とした口調でシェリルへ告げる。


「いや、一睡もしていない。メルトについては先程、眠ったばかりだな」


「い、一睡もしていない……?」


 オレの言葉に、シェリルは顔を青くする。

 そして、ベッドで眠る、メルトの元へとすすっと移動した。


 何やら慌てた様子で、呼吸と脈を確認していた。

 すやすや眠るメルトを確認し、シェリルは胸を撫で下ろしていた。


 ……いや、そんな酷い事は何もしていないが?


「昨晩はメルト様の声が響いていましたもので……。夜遅くまで、『くっ、殺せ……!』という叫びが……」


「いや、それは初めの方だけだろ? 少ししたら、大人しくなった気がするんだが……」


 オレの返事で、再びシェリルが青くなる。

 カタカタと身を震わせながら、唐突に両手を胸の前で組んだ。


「わ、私は悪魔族で、知能担当となります……。肉体的には、脆弱な種族です……」


「うん、それがどうしたんだ?」


 唐突な自己紹介に、流石のオレも戸惑いを隠せない。

 羽と尻尾の形から、もしやと思ってはいたけれど……。


「竜人族のメルト様と違い、とても脆いです……。決して乱暴に扱わないで下さい……」


「ちょっと待って貰えるかな? オレの事を何だと思ってるんだ?」


 何やらオレが、酷く暴力的な存在と思われていないだろうか?

 これでも自身では、温厚な性格だと思っているのだが……。


 そして、オレはシェリルの視線に気が付いた。

 その畏怖する眼差しが、オレの下半身へと注がれている事に……。


「……なるほど、誤解されているな。オレは無差別に手を出すつもりはない」


「はぁ……。そうなのですか……?」


 疑わし気な視線がオレに向けられている。

 どうも、シェリルはオレの言葉を信じていないみたいだった。


 なので、オレは自らの胸に手を当て、シェリルに向かって宣言する。


「オレが惚れたのはメルトだ! 決して、他の女性には手を出さない! オレは全ての思いを、メルトに向けるとここに誓う!」」


 オレが宣言すると、シェリルの震えがピタリと止まる。

 そして、すっとその視線がベッドへと向く。


 シェリルはくすりと笑い、ベッドに向かって問い掛ける。


「だそうですよ、メルト様?」


 その言葉で初めて気付く。

 シーツで顔を隠しながら、プルプル震えるメルトの姿に。


 メルトは擦れる様な声で、ぽつりと囁いた。


「ま、毎日あれは、流石に無理だ……」


「十二時間耐久ですからね。メルト様でも厳しかったですか……」


 メルトは顔を隠しているので、どういう感情か読めなかった。

 照れているなら良いのだが、怯えているなら流石に困る……。


 オレは必死に考えて、妥協案を提示する事にした。


「それなら、六時間で我慢しよう。それなら、どうだろうか?」


「「う、うーん……?」」


 しかし、オレの妥協案に、二人の反応は微妙だった。

 これでもかなり、譲歩したつもりだったのだが……。


 まあ、この件は後々の交渉としよう。

 メルトとしっかり話し合って決めなければな。

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