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方針会議(後半戦)

 魔王専用の執務室にて、ディアブロの説明が続けられる。


「二つ目の魚人族ですが。支配階層は人魚マーメイド。魔力の高さが特徴的です。かの地は海産資源が豊富であり、食材や資材の宝庫と言えるでしょう」


「戦士階級の半魚人マーマンは厄介な相手だ。戦場が海であるなら、私でも相手をしたくない程にな」


 メルトは眉を顰めて補足を加える。

 戦った事があるのか、その時の事を思い出しているみたいだ。


「魚人族は海から離れる事がありません。こちらから手を出さない限り、反乱を起こす事も無いでしょう。優先順位としては、鬼人族の次で宜しいかと存じます」


「ならば、落ち着いたら顔を出すと、魚人族の領主へ伝えておいてくれ」


 オレが伝言を頼むと、ディアブロはニヤリと笑う。

 そして、了承の意を示す様に、ゆっくりと頭を下げた。


 ディアブロは人相が悪いなと思いつつも、それを決して口にしない。

 部下を傷付ける事を口にしても、決して良い事がないからだ。


 オレは人魚に会うのを楽しみに思いつつ、思考を次へと切り替える。

 そして、話を進める様にディアブロへ視線で促す。


「最後に竜人族です。彼等は標高の高い山脈で暮らす戦闘民族です。下界に興味が無く、基本は他種族と関わりません。領地も資源が乏しい為、無理に手出しする必要も無いでしょう」


「…………」


 メルトに視線を向けるが、素知らぬ顔で無言を貫く。

 彼女の口からは、何も言う事が無いらしい。


 どちらかと言えば、触れて欲しく無いのかもしれないな。

 嫌な思いをさせる必要も無いかと、オレはディアブロへ視線を戻す。


「ならば、魚人族同様に領主へ連絡を頼む。少し遅くなるかもしれんとな」


「かしこまりました。それで鬼人族の領地へは、すぐに向かわれますか?」


 ディアブロはオレに対して伺いを立てる。

 向かうと伝えれば、すぐに移動の手配を行う気だろう。


 だが、オレは少し考えて首を振る。


「いや、その前に夢魔族の領地へ向かう。あの地の事も把握しておきたい」


 オレの返答に、ディアブロは考える素振りを見せる。

 そして、納得した様に頷いて、オレへと笑みを向ける。


「素晴らしいお考えです。まずローズとの関係を固めるのは、今後を見据えた最良の一手でしょう」


 そこまで考えた訳では無いが、ディアブロとしても賛成らしい。

 オレとしては、デートスポットの開発状況を知りたいだけなのだがな。


 まあ、それをわざわざ言う必要も無いだろう。

 口にしても、部下のモチベーションを下げるだけだしな。


「状況によっては、少し滞在期間が伸びるかもしれん。その場合、は……」


 途中まで口にして、オレは言葉を続けられなくなる。

 オレはこのタイミングで、ある事に気付いてしまった……。



 ――扉の隙間から、こちらを覗く者がいる。



 頭部はピンクで、黒い服を纏っているらしき人物。

 その人物が、じっと部屋の様子を伺っているのだ……。


「大魔王様? どうかされましたか?」


「い、いや……! 何でもない……!」


 オレは慌てて、ディアブロに対して首を振る。

 そして、その瞬間にふっと視界に入るエリーの横顔。


 表情は何でもない澄まし顔だが、その口元が微かに震えている。

 エリーはあの視線に気付き、ずっと笑いを堪えていたらしい……。


「おい、ユウスケ。本当にどうしたんだ?」


 反対からは、メルトの不思議そうな問い掛け。

 こちらはあの視線に、まったく気付いていないらしい。


 オレは平常心を取り戻すべく、ゆっくり深呼吸を行う。

 そして、自分に言い聞かせる様に、ゆっくりと言葉を吐き出す。


「何でもない……。そう、何でもないんだ……」


 オレはなるべく視線が合わない様に、そっと顔を伏せる。

 そして、内心の動揺を隠しながら、会議の時間を耐え忍んだ……。

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