表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/131

魔王四天王筆頭

 オレ達は揃って、玉座の間へ移動した。

 オレは当然ながら玉座に座り、左右にメルトとエリーが並んでいる。


 そして、シェリルは戸惑った様子で、エリーの事を見つめていた。


「あ、あの、大魔王様? そちらの女性は一体……?」


「ああ、彼女はエリーだ。『神酒ソーマ』の効果で成長したらしい」


 オレの答えに、シェリルはポカンと口を開く。

 そんなシェリルに対し、メルトが疲れた声で補足を加える。


「エリザベートは存在進化を果たした。恐らく、強さも私と同程度だろう」


「そ、それは……。メルト様は、歴代魔王でも強者に位置する言うのに?」


 シェリルは悩む素振りを見せていた。

 その視線がエリーを捉え、眉間を更に深くさせる。


 十三歳からニ十歳の姿へと急に変わってしまったのだ。

 だが、見た目の雰囲気からして、面影は強く残している。


 現実を受け入れられぬシェリルに、エリーはクスクスと笑い掛けた。


「これまでは子供と思い、随分と手玉に取ってくれたわね? ――四天王最弱のシェリル」


「なっ……?!」


 エリーの言葉に、シェリルが目を見開く。

 そして、怒りというよりは、恐怖により顔を引き攣らせていた。


 エリーは冷たい視線をシェリルから外し、オレに向かって優しく微笑む。


「序列一位はLv80のローズ。二位はLv75の私。三位はLv70のリオンで、最後にLv65のシェリル。――まあ、今では私が一位ですが」


「なるほどな。レベルの高さが、序列に直結しているのか」


 魔王軍というだけあり、強さが物を言うのだろう。

 そう考えると、指標としてはレベルがわかりやすい。


 そして、オレは力を一割に封じてもLv99ある。

 彼等の中では、最も強い存在として認められているのだろう。


 ……というか、今更だがLv99でも強すぎではないだろうか?


「なのにメルト様にすり寄って、魔王四天王筆頭? 随分と好き勝手してきたものね……」


「い、いえ……。それは、その……」


 腕を組んで見下ろすエリー。

 その鋭い視線に、汗をダラダラと流すシェリル。


「ローズとリオンは温厚ですしね。私もこれまでは興味無かったわ。――でも、これからは違う」


「ヒィッ……?!」


 キッと睨まれ、悲鳴を上げるシェリル。

 レベルの差が20もあると、ここまで立場が明確になるのか?


「大魔王様の就任後、その補佐役は私が務めます。序列一位の私に、何か不満があるかしら?」


「そ、そんなぁ~……。今日まで、ずっと頑張って来たのにぃ~……」


 めそめそと泣きだし、その場に崩れ落ちるシェリル。

 そんな彼女に、エリーは勝ち誇った表情で見下ろしていた。


 見ていて何だか不憫になって来た。

 どうした物かとメルトを見ると、彼女は任せろとばかり頷いた。


 そして、シェリルを庇って、メルトがエリーを睨む。


「シェリルが弱い事は、自分が一番わかっている。それでも、彼女はずっと努力していた」


「ふぅん? どう努力したって言うの?」


 メルトの言葉に、エリーが面白そうな視線を向ける。

 その視線に対し、メルトは怯まず言葉を続ける。


「自分は知識担当だと言い張り、『知将』と自称し始めた。ずっと自分自身に、私は負けてないと言い聞かせて!」


「うぐっ……!」


 胸を押さえて蹲るシェリル。

 何やら、雲行きが怪しいのは気のせいだろうか?


「どんな雑用でも嫌な顔せず、率先して取り組んでくれた。自分がどれ程役立つか、私に必死にアピールしてな!」


「お、おい……。メルト……?」


 メルトの表情は真剣そのもの。

 決して、シェリルを煽っている訳ではないらしい。


 しかし、シェリルは俯いたまま、ブルブルと震え出している。


「裏ではいつも、帳簿を睨んで溜息を吐き続けていた。それでも大丈夫と、表では部下達を激励していたのだぞ!」


「それ以上は止めてやれ。彼女の精神力はもうゼロだ」


 メルトの腕を掴み、オレはゆっくりと首を振る。

 すると、そこで初めてメルトは状況を理解した。


 シェリルが床に突っ伏して、泣き崩れていた。

 もう嫌だとか、何やら悲し気な呟きを漏らしながら……。


 状況がわからず、戸惑った様子のメルト。

 それに対し、腹を抱えて笑いを堪えるエリー。


 余りにも余りな状況に、オレは玉座を離れてシェリルの元へ向かう。

 彼女の肩にそっと手を置き、オレは極力優しく語り掛けた。


「今まで苦労したのだな……。その努力を、少なくともオレは認めよう……」


「だ、だいばおうざま~……!!!」


 鼻水交じりの泣き声で、声にならない様子だった。

 酷い泣き顔のシェリルは、オレに抱き着きオイオイと無く。


 そして、我慢出来ずに笑い出すエリー。

 その声を無視し、オレはシェリルの背中を優しく叩く。


 その様な状況の中、ぽつりとメルトの声が聞こえた。


「え……? ど、どういう事だ……?」


 動揺したメルトの声に、オレは何となく理解した。

 彼女は優しい心の持ち主だが、不器用なタイプなのだろうと。


 ならば、そのフォローは夫であるオレの役割だ。

 そう考えながら、オレはシェリルを宥め続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ