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みんなのうらみ

 エリーがドヤ顔で、マンドラゴラを狩り続ける。

 馬車には既に、十本のマンドラゴラが積まれている。


 どうもこのマンドラゴラは、城でのメイン料理になるらしい。

 そういう理由もあって、オレ達はその狩りを見守っていた。



 ――と、そこで異変が起こる。



「ゴラァァァ! ゴラァァァ!!!」


 それは、これまでの嘆きの声では無かった。

 怒りに満ちた、巨獣の如き咆哮であった。


 声の方へ視線を向けると、対象を確認出来た。

 森から姿を現す、二メートル越えのマンドラゴラである。


 いつの間にか、オレの隣にエリーが並んでいた。

 彼女は嬉しそうな表情で二っと笑う。


「アレは百年物……。ついに見つけた、幻のエルダー・マンドラゴラ!」


「エルダー・マンドラゴラ?」


 巨大なマンドラゴラを前に、エリーは霧となって姿を消す。

 どうやら、これまで通り問答無用で攻撃を仕掛けるみたいだ。



 ――だがそこで、想定外の結果を目にする。



「ゴラァッ!」


「ごふっ……?!」


 巨大マンドラゴラの太い腕が、鞭の様に鋭くしなる。

 そして、エリーの腹を捉えて、背後の巨木へと叩きつけた。


「エリザベート……!」


 エリーの身を案じ、メルトが思わず叫び声を上げる。

 しかし、槍の様に生えた根が牽制し、駆け寄る事が出来ずにいた。


「あ、あぁぁぁ……!!!」


 マンドラゴラはその隙に、エリーへ馬乗りとなる。

 そして、ボッコボコに顔面を連打し始めた。


 流石にこれは不味いとわかる。

 少女の顔面殴打は、絵面的にも色々と不味い……。


 しかし、地面から生えた根っこが、触手のみたいに牽制している。

 焦るオレに対し、メルトが早口で捲し立てる。


「アレはこの森の主。殺されたマンドラゴラの数だけ強くなる。呪力で魔法を無効化するので、私でも倒せない存在だ」


「何だと? あれは魔王を超えると言うのか?」


 オレの驚きの声に、メルトはコクリと頷いた。

 そして、悔しそうに声を漏らす。


「エリザベートは、マンドラゴラを殺し過ぎた。エリザベートが居なければ、奴は雑魚にしかすぎんのだが……」


「エリザベートに対しては、天敵となる存在なのか……」


 状況的にかなり不味いと理解出来た。

 だが、それを理由に静観している訳にもいかない。


 焦るオレに対し、メルトは冷静にオレへと告げた。


「指輪を外せ。そして、頭部の葉を握るんだ」


「なに? 女神マサーコ様の指輪を外せと?」


 それはつまり、オレにLv999になれと言う事だ。

 奴はそこまでしなければ、倒せない存在と言うのか……。



 ――いや、躊躇している時ではない。



 オレは即座に指輪を外す。

 それをアイテムボックスへ収納し、奴に向かって駆けだした。


「こ、これは……?」


 この世界に来てから、初めて本気で駆けた。

 余りに高速で動ける為、世界の動きが緩やかに感じてしまう。


 そして、蠢く根っこを手で払いのける。

 根っこは紙切れの如く、あっさりと千切れて散ってしまった。


 更にオレは跳躍し、奴の頭に手を伸ばす。

 掴んだ葉っぱは、勢い余って引き千切ってしまった。


「ゴ、ラァァァ……」


 結果的に、活け締めとなったのだろうか?

 身を震わせたかと思うと、森の主はゆっくり背中から倒れてしまう。


 オレは慌てて、倒れたエリーの元へ駆けつける。

 そして、酷い顔で動かぬエリーに声を掛けた。


「エリー! 大丈夫かっ?!」


 オレがその身を抱き起こすと、エリーはゆっくり手を上げる。

 その震える手をオレの首に回し、彼女は耳元で囁いた。


「……ああ、死ぬかと思った。――あ、私もう死んでるんだけどね!」


 何やら明るい声で笑いだすエリー。

 驚いて身を引くと、彼女の顔は元の状態に戻っていた。


 まるで、先程の怪我が嘘だったかの様に……。


吸血鬼ヴァンパイアの女王であるエリザベートは、多少の怪我はすぐ治る。むしろ、物理的手段では倒せない種族だしな」


「火とか光の属性じゃないと、それ程は効かないわね。それでも、殴られたら痛いんだからね?」


 オレの首に抱き着きながらも、エリーはメルトに不満を漏らす。

 どうやら、痛みはあったらしいが、怪我としては大した事が無かったらしい。


 とりあえず安堵したオレは、エリーの頭を優しく撫でた。

 彼女は嬉しそうに、オレの頬へと頬ずりを返してきた。

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