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超獣部隊

 魔族と人族の国境線では、今も小競り合いが続いていた。

 その最も激しい戦地に、オレ、メルト、リオンの三人はやって来た。


 前線基地となる砦には、獣人の戦士達が常駐している。

 オレ達は彼等からの熱烈な出迎えを受ける事となる。


「これはこれは、大魔王様! ようこそ、我等が要塞へ!」


「ああ、少しばかり邪魔をする。すぐに砦を発つのだがな」


 要塞というには少しばかり、心許ない作りではあった。

 森の中に建てられた、素材の多くが木製の砦だからである。


 人族が見境なく火を放てば、あっという間に落ちそうだな……。


 オレは目の前に立つ、黒豹の獣人に対して問い掛ける。

 どうも、彼がこの砦の隊長的な立場にあるらしい。


「そういえば、送った『超神水』はどうだった? アレは役に立ったか?」


「へい、勿論でさ! お陰様で、部隊の平均レベルが20は上がりました!」


 ……部隊の平均レベルが20は上がった?

 『超神水』の効果は、使用者のレベルを上げる物だったのか?


 内心で戸惑うオレに対し、黒豹獣人は嬉しそうに語る。


「最初は効果もわからず飲んで、毒かって思う位に苦しみやした! けど、あれは『神酒ソーマ』とセットで飲むもんなんすね! すぐ痛みも治まって、気付いたら超絶なパワーアップが出来ちまいやした!」


「そ、そうか……。役に立ったなら何よりだ……」


 『神酒ソーマ』とセットで飲むもの?

 セットでなければ、どうなっていたというのだ?


 オレは恐ろしい物を感じ、考えるのを止める事にした。

 すると、背後のリオンからも戸惑った声で質問があった。


「おいおい、平均レベルが20アップだと? 元々、ここの部隊は平均レベルが30はあったよな?」


「へい、ボス! 今では最低でもLv40、小隊長クラスでLv60はありやすぜ!」


 元々のLv30がどの程度の強さかはわからない。

 しかし、リオンが『特戦隊並みじゃないか……』という呟くのを聞いた。


 恐らくは、かなりのパワーアップなのだろう。

 一兵卒からエリート将校へランクアップした様なものかもしれない。


 いずれにしても、黒豹獣人が喜んでいるのは理解出来た。

 オレはここぞとばかりにアピールを加えておく。


「あれは女神マサーコ様の加護。その恩恵に感謝し、日々祈りを捧げるのだ」


「女神マサーコ様の加護ですって! 道理でとんでもねえ効果な訳ですね!」


 身をのけ反って驚く黒豹獣人。

 オレはその反応に満足し、腕を組んで大きく頷く。


 納得した様子の黒豹獣人は、ニヤリと笑ってオレへと尋ねる。


「それで、いつ反撃に出やす? いつでも、人族の部隊を滅ぼせやすぜ?」


「いや、ちょっと待て。オレは和睦の使者として来たのだが?」


 何やら物騒なセリフが飛び出して来た。

 オレはそんな指示を出した記憶が無いのだが……?


 しかし、メルトが難しそうな声を漏らす。


「ここまで過剰な戦力増強……。やり返すのが当然と思うだろうな……」


「なんだと……? やり返すのが当然って……」


 それは魔族的な発想なのだろうか?

 それとも、獣人種族が特別に好戦的なのだろうか?


 いずれにしても、そんな常識をオレは持ち合わせていない。


「……勝てないと思わせ、相手に言う事を聞かせる為だ。最終目的は和睦だからな」


「そうなんすか? オレ等からすりゃ、やっちまった方が早いと思うんすけどね」


 何やら納得してなさそうな黒豹獣人。

 背後のリオンに視線を向けると、彼は困った様に頭を掻いていた。


「正直オレも同じ考えなんですがね。ガツンと殴って、言う事聞かせる方が早いって言うか……」


 続けてオレはメルトに視線を向ける。

 彼女は慌てた様子で、首を振っていた。


「わ、私は違うからな! 気持ちはわかるが、それでは戦争が終わらない!」


 ……気持ちはわかるのか。

 やはり、魔族的には『まずは一発殴る』スタイルなのだろう。


 オレはふうっと息を吐いて、彼等に対して告げる。


「予定通りにオレが交渉を行う。基本はこちらから手を出すなよ?」


「へい、承知しました!」


 一抹の不安を感じつつも、胸を叩く黒豹獣人に頷きを返す。

 とりあえず、オレの交渉中は防戦だけして貰うとしよう。


 まるで、獣人族の部隊はヤンキーの集まりみたいだな……。

 そして、オレはこの瞬間、シェリルの人選の意味を理解したのだった。

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