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信仰の力

 今夜も営みを終え、城のベッドで眠りにつく。

 当然ながら、オレの隣ではメルトもぐっすり眠っている。



 ――しかし、この日は差し込んだ光によって目が覚めた。



「……うん? 一体、何だ……?」


 夜とは思えぬ明るさに、オレはゆっくり目を開く。

 そして、見える光景に呆然となる。


 そこには青空が広がっていた。

 天井も無ければ、夜空ですら無かったのだ。


「ご、ごめんね、ゆう君! 寝ている所を呼び出しちゃって!」


「女神……マサーコ様……?」


 女神マサーコ様が、オレを覗き込むんでいた。

 申し訳なさそうに、しゅんとした態度で。


 しかし、オレの呟きに対し、不思議そうに首を傾げる。


「女神マサーコ様……? ――あっ! そうだったね! 私は女神マサーコだったね!」


 何やら不思議な事を口にしているな。

 それはまるで、自分の名前を忘れていたかの様な……。


 オレはその事を不思議に思うが、質問のチャンスを失ってしまう。


「そうそう、ゆう君を呼んだ説明をしないとだね! とっても、大切な話があるんだよ!」


「大切な話ですか? それは、どの様な内容でしょうか?」


 真剣な表情を浮かべる女神マサーコ様。

 ブンブンと両手を振り、その必死さをアピールしている。


「何故だか信仰心が集まってるの! もしかすると、私の信者が増えたのかも!」


「信仰心が集まっている? ああ、そういうお話ですか……」


 それならば、オレにも心当たりがある。

 これまでの活動を振り返れば、その答えは一目瞭然と言えた。


「頂きました数々の品を、女神マサーコ様の名で配りました。彼等の多くが、感謝の祈りを捧げているはずです」


「……へ? ゆう君に渡した道具が、そんなに喜ばれてるの?」


 女神マサーコ様は不思議そうに首を傾げている。

 何やら、その表情からは、心当たりが無い様子に見えた。


「ええ、数々の財宝もそうですが、『神酒ソーマ』が特に大きかったですね。ケガや病気を完治しましたので」


「ええっ! あのお酒って、そんな効果があったの……?!」


 女神マサーコ様が、目を丸くして驚いている。

 どうやら、贈り物の『神酒ソーマ』の効果を知らなかったらしい。


 オレはその事実に動揺しつつ、女神マサーコ様へお伺いを立てる。


「少しばかり消費しましたが、お返しした方が良いでしょうか? 相当に貴重な品と思われるのですが……」


「あ、それは気にしなくて大丈夫だよ! 元々、私はお酒が飲めなくて、ゆう君にプレゼントしたんだし!」


 女神マサーコ様は、気前よく笑顔で首を振る。

 その様子から、本当に『神酒ソーマ』への興味が無いみたいだった。


 そして、ニコニコと笑みを浮かべて説明してくれる。


「ゆう君への贈り物って、歴代の神様の置き土産なの! でも、私には使い道が無い物ばかりだったからね!」


「そうなのですか? それでは頂いた品は、今後も人々の為に使って宜しいでしょうか?」


 オレがそう尋ねると、女神マサーコ様は目を見開く。

 そして、じわりと涙を浮かべて、オレの両手を握った。


「ゆう君って本当に優しいんだね……。好きなだけ使って良いよ! 全部、ゆう君の好きにして良いからね!」


「ありがとう御座います。それでは、女神マサーコ様の御心のままに……」


 オレは感謝の思いを込めて頭を下げる。

 女神マサーコ様はハンカチで目元を拭い、満足そうに頷いていた。


 そして、あっと何かを思い出した様にオレへと告げる。


「そうそう、信仰心が集まると、私の出来る事が増えるから! ポイントが溜まったら、またゆう君を呼ぶからね!」


「そうなのですか? それでは、私も頑張ってお手伝いをさせて頂きます」


 オレが笑顔を浮かべると、女神マサーコ様も笑顔を返してくれた。

 そして、次の瞬間には、その手をオレへと振っていた。


「余り長く居ると寝る時間が無くなっちゃうね。それじゃあ、今日はこの辺りでバイバイ!」


「はい、いつもありがとうございます。それでは、また近い内に……」


 その挨拶と同時に、オレの体がゆっくりと薄れて行く。

 それと同時に、オレの感覚もゆっくり薄れて行った……。

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