表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/131

城内会議

 オレ達は魔王城を発ち、三日後にリオン城へ辿り着いた。

 そこは歴史を感じる石の城で、城下町も賑わいを見せている。


 そして、この賑わいは立地のお陰なのだろう。

 以前の進行ルートから、大きく外れた場所にあったのだからな。


「さて、大魔王の旦那。お勤めを果たす為にも、現状確認と行きやしょうか?」


「うむ、それでは説明を頼む」


 場所は城内の会議室。

 参加者はオレ、メルト、リオンに数名の獣人である。


 獣人側の参加者は、大臣らしき物と騎士団長だったか?

 軍司がフクロウで、騎士団長はトラや豹等の顔をしていた。


 リオンが顎をしゃくると、軍司による説明が開始された。


「現在、我が軍は厳しい状況にありますな。十日前より、人族の攻撃が開始されている為ですな」


「十日前から? それまでは、攻撃が行われていなかったのか?」


 オレの問い掛けに、軍司はコクリと頷いた。

 そして、目を瞑って訥々《とつとつ》と言葉を紡ぐ。


「勇者様の出立後、十日程は様子見を……。その後、何度かの小競り合いを……。そして、十日前に痺れを切らした様で……」


「そのタイミングには意味があるのか?」


 人族の行動が約十日単位で変化している。

 それが、どういう状況の変化なのか気になったのだ。


 すると、軍司はコクコクと小さく頷いて答える。


「初めの十日は、勇者様の消息を失った為……。何とか情報を得ようとしていましたな……。その後は、何度か小競り合いを……。こちらの戦力低下を、把握した様ですな……」


「ユウスケは不眠不休での強行軍だったろう? 後を付ける者達も、途中で着いて来れなくなったらしいからな」


 メルトがオレに補足説明を加える。

 その説明に、オレは軽く驚きを覚えた。


 オレの後を付ける者達がいたのか。

 そんな者達が居たとは気付かなかったがな……。


 とはいえ、付いて来るのはまず不可能だったろう。

 オレと違って、30日も寝ずの行動等は出来なかっただろうしな。


 そして、オレの行方がわからなくなり、方針を変更した訳か。

 主力を撃破したせいで、苦しい戦力はすぐにバレたのだろう……。


「ならば、今も戦闘は続いているのか? 戦況はどうなっているのだ?」


「第一防衛ラインは限界……。もって……数日という……ぐぅぐぅ……」


 フクロウ軍司が会話の途中でイビキを書き出す。

 まさかの唐突な寝落ちに、オレは驚いて目を見開く。


 すると、周囲の団長達は、困った様子で肩を竦めていた。


「やはり昼間の活動は無理だったか……」


「まあ、まだ持った方なんじゃねぇの?」


 フクロウの獣人だけに、夜行性だったという事か?

 それにしても、それがわかって何故連れて来たのだ?


 オレが戸惑っていると、リオンが苦笑交じりに説明する。


「いやまあ、軍の中で頭仕える奴が、余り居ないもんでして……」


「何だと……? 彼が唯一の、頭脳担当ということなのか……?」


 余りの人材の薄さに、オレは思わず戦慄する。

 よくそんな状況で、戦線を維持出来ていたものだな……。


 オレは頭を抱えながらも、考えていた代案を披露する事にした。


「やはり、防衛線の回復が必要だろうな。それ無しに、和睦の交渉も難しかろう?」


「まあな。劣勢の相手に停戦を申し込まれ、それを飲む軍人は居ないだろうからな」


 オレの質問にメルトが答える。

 仮にも魔王だっただけあり、その辺りの理解は早い様だ。


 オレはその回答に満足し、用意してあったプランを提案する。


「オレの持つアイテムに『巨神兵』と言う物がある。これを防衛に使ってみないか?」


 道中に確認したのだが、このアイテムが99個存在していた。

 生き物はボックスに入らなかったので、機械の兵隊ではと睨んでいる。


 どの程度の戦力かは未知数だが、仮にも名に『神』と付くのだ。

 使い物にならないと言う事は考えにくいだろう。


 しかし、オレの提案に、メルトが渋い表情を浮かべていた。


「それは、何か不吉な予感がする……。私の本能が、使うべきでないと告げている……」


「オレも古い神話で聞いた記憶があるな……。文明を破壊する兵器とかだった気が……」


 メルトに続いて、リオンも苦し気な声を出していた。

 はっきりとした根拠は無いが、使って欲しくは無いのだろう。


 野生の感という奴なのかもしれないな。

 ならば、この案は無理に採用する事も無いだろう。


「なら、『超神水』というアイテムは? 『神酒ソーマ』と似た物と思うのだが」


「ふむ、飲料水か……。それならば、試に使ってみても良いかもしれないな……」


 今度は特に反対意見も出なかった。

 オレは満足げに頷き、リオンへと視線を向ける。


「では、早速前線の兵達に送ってくれ。念の為に、『神酒ソーマ』も送っておけ」


「へい、それじゃあすぐにでも。――おい、今夜中に戦場へ救援物資を送るぞ!」


 リオンの呼び掛けに、周囲の団長達が慌てて動き出す。

 城内の兵士達に、荷物運びや荷馬車の手配を伝えている様だった。


「それでは、後の事はよろしく頼む」


 オレは会議室に『超神水』の樽を10本配置した。

 それらをリオンに託し、メルトと共に部屋から出る。



 ――なお、リオンの話では、城内に浴場があるそうだ。



 その為、オレはメルトとの混浴で、頭の中が一杯なのだ。

 まずは腹ごしらえを行い、それから今夜はお楽しみなのである……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ