車内反省会
昨晩は大いに盛り上がった。
神酒ソーマのお陰で、オレもメルトも疲れ知らずだった。
オレは不眠にも関わらず、疲れも眠気も感じていない。
指輪を付けてから、これ程ハッスルしたのは初めてだろう。
オレは城へ向かう車内で、昨晩を思い出して大いに満足する。
そして、ふと妙案が頭を過る……。
「――はっ! 毎晩、就寝前に、アレを呑めれば……」
「不敬な考えを止めろ。神酒を精力剤代わりに使うな」
オレの呟きに、隣のメルトが反応する。
ギロリと睨まれ、本気でムッとしているのがわかる。
「確かに今のは失言だった。神酒も女神マサーコ様のご慈悲なのだからな」
「その通りだ。女神マサーコ様の慈悲は、個人の欲望に使うべきではない」
メルトはオレの言葉を肯定し、ウンウンと頷いている。
その表情は少し和らぎ、オレにも優しい視線を向けていた。
オレはその視線に満足しつつ、この先の予定を再確認する。
「確か今夜も、別の村に一泊だったな。そこでも肉と神酒を振る舞うべきか?」
「肉は先程確保してあるしな。神酒も数本程度ならば、空けても問題無かろう」
オレ達は揃って、背後へと視線を向ける。
窓から見える景色には、二台の荷馬車を確認する事が出来た。
そして、その荷台に積まれた荷物こそ、神酒ソーマの樽である。
未開封の大半は回収し、リオンの城に運ぶ事になったのだ。
あれ程の品を補完するには、宿場町では荷が重い。
強盗に合わない為にも、リオンが城の宝物庫に入れると言うのだ。
まあ、物が物だけに、リオンが私的利用をする事もあるまい。
「肉も先程のワイバーンで良いのか? かなりボロボロの姿だったが」
「ボロボロなのは表面だけだ。血抜きもしてあるし、問題無いだろう」
先程のワイバーンとは、リオンが仕留めた獲物である。
空を飛ぶワイバーンに対し、おもむろにリオンがスキルを使ったのだ。
スキルの名前は『獣王会心撃』だったかな?
レベルアップで威力が上がったと、リオンは喜んでいたが……。
「そう言えば、聞きそびれたな。女神マサーコ様の前は、どの様な神が居たのだ?」
「以前の男性神か? 管理者となり五百年。余り世界には関与をしなかったそうだ」
管理者となり五百年?
それはつまり、神々は世代交代で世界を管理しているのか?
「過去にどれ程の神が居たのだ? そして、どの様な存在が居たかわかるか?」
「無数の神としか聞いていないな。善神も悪神も、様々な神が居たらしいがな」
メルトは何処か、興味なさげに応えていた。
その態度から、以前までの神々に良い感情を抱いていなさそうだ。
そして、オレはそんなメルトの態度に、ふと気になった事を質問する。
「メルトは女神マサーコ様を、歴代の神々と比べてどう思っている?」
「私とユウスケと引き合わせたのだ。過去最高の神に決まってるだろ」
ノータイムでの返しであった。
その真っ直ぐな言葉に、オレは思わず言葉に詰まる。
間を置いて、オレはふっと笑顔を浮かべる。
そして、オレはメルトに向かって想いを伝える。
「メルトもそう思ってくれるか。やはり、この導きに感謝せねばな……」
「――へ? あ、いや……。ち、違う……! い、今のは無しだ……!」
メルトは顔を赤くして、慌てて首を振っていた。
いつもの照れ隠しに、オレは思わず彼女を抱き寄せた。
「や、止めろっ! そういう意味じゃないからな! 勘違いするなよ!」
腕の中で暴れるメルトに、オレの愛情ゲージは天元突破する。
こんな可愛い女性と結婚する等、以前の世界では考えられない。
この世界へ招いた、女神マサーコ様に生涯を掛けて感謝を返さねばな……。




