四天王会議(シェリル視点)
玉座の間から、大魔王様とメルト様が飛び出して行く。
その姿が見えなくなると、私は仲間達へと笑みを向けた。
「どうでしたか? 新しい我らの王は?」
まずは、リオン=ライオネルへ視線を向ける。
彼は腕を組んで、満足げに頷いていた。
「まだ若いが申し分無い。力と財を持ち、人心を掴む術を心得ている。歴代魔王様の中でも類稀な資質の持ち主。大魔王を名乗るのに、これ程相応しい御仁は他におられまい」
「ユウスケ様の大魔王就任に賛成と言う事ですね」
普段は寡黙なリオンが、実に滑らかに称賛を述べる。
それ程までに、大魔王様の事を気に入られたのでしょう。
私は内心でほくそ笑む。
そして、次はラビアン=ローズへ視線を向けた。
「本当に良い男よね。人の欲望を良く心得ていらっしゃる。機会があれば、その夢を味見してみたい位だわ」
「止めておきなさい。貴方のモノが吹き飛びますよ?」
無謀な発言をするローズへ、私は警告の言葉を発する。
そんな私の言葉に、ローズは頬を引き攣らせて問い掛ける。
「わ、私の何が吹き飛ぶと言うのかしら……?」
「貴方のナニが吹き飛ぶと言っているのですよ」
私はただ真実を述べただけだ。
だが、ローズは驚愕に目を見開いて固まってしまった。
そして、ローズに変わって、リオンが慌てて割って入る。
「待て待て、ローズは仮にも夢魔族の支配者。そのローズが、いくら何でも……」
「――メルト様は、12時間無休で責め続けられました。一切の抵抗を許されずに」
その言葉に、今度はリオンが固まってしまう。
恐れ戦く二人に対し、私は更に追い打ちをかける。
「そして、戦闘不能のメルト様を前に、大魔王様は衰えを知らず。激戦を終えてなお、その剣を天に掲げておられました」
「だ、大魔王様は……。本物の、化け物か……?」
リオンがワナワナと身を震わせていた。
その規格外の精力に、男として敗北感を感じたのでしょう。
だが、それとは別に、もう片方は覚悟の表情を浮かべていた。
「……決めたわ。私の最後は、大魔王様にお願いするって」
「そ、そうですか……。それは、頑張ってみて下さい……」
ローズが決めるのは自由だが、大魔王様が許可するかは別問題だ。
それに対して、私がどうこう言う事でもないでしょう……。
畏怖の表情を浮かべる二人は問題無いでしょう。
大魔王様へは絶対の忠誠を誓うはずである。
だが、問題はこの子だ……。
私は不服顔のエリザベート=ツェペシュに視線を向ける。
「エリザベート。貴女の感想は?」
「大魔王様は私のパパ。それは決定事項だから」
――やはり、そういう回答か……。
12歳で吸血鬼と化し、それから頭が育っていないのだ。
実力だけなら魔王軍随一だが、頭の弱さはメルト様を超える……。
「ユウスケ様の大魔王就任を認めると言う事で宜しいですね?」
「そんな事はどうでも良い。問題は私も旅行に行けるかどうか」
大魔王様とメルト様の婚前旅行に同行する気なのか?
それは、流石の大魔王様も、ご機嫌を損ねる恐れがある……。
「こ、今回は親睦の使者としてのお仕事もありますので。エリザベートは適任とは言えないでしょう」
「なら、敵国の人族を全て殺す。そうすれば、パパの仕事は必要なくなる」
――やっぱり、そいう回答になるよね……。
エリザベートに理屈や常識は通用しない。
彼女を従わせるには感情しかないのだ。
……極端な思考回路が、パパに似すぎでは無いだろうか?
「では、帰りはエリザベートの城に寄り、お泊り会でどうでしょう? 大魔王様をもてなして下さい」
「私は今すぐ城に帰る。お迎えの準備で忙しくなったから」
ギラギラした目で飛び出すエリザベート。
今の彼女の頭は、お泊り会の計画で一杯と思われる。
これについては、ローズの計画が功を奏したと言える。
この状態でなければ、いずれ大魔王様に殺されていただろう。
「それでは、リオンは大魔王様達のご案内を。ローズは領地の再開発計画をお願いします」
私の言葉に二人は頷く。
そして、踵を返して、自らの役割を果たしに向かった。
「さて、それでは私も始めますか……」
私は背後に控えるディアブロに向き直る。
彼は意思を宿さぬ瞳で、私の命令をただ待ち続けていた。
「ふふふ、これで私は名実ともに四天王最強……」
ディアブロの実力はメルト様にも近い。
その彼が私の片腕として、自由に扱う事が出来るのである。
これでもう、裏でコソコソと行動する必要が無くなった。
私は大手を振って、自らの望みを叶える事が出来るのである!
「さあ、悪魔達によるパーティーを始めましょう……」
私は込み上げる笑いを我慢せず、高らかに声を上げる。
そして、ディアブロを引き連れ、城の金庫へと向かうのだった。
第二章が終了となります。
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