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戦闘開始

 指輪を外したオレは、一人で『巨神兵』の背を見つめる。

 赤褐色の鋼で覆われた巨体は、別次元の存在としか思えない。


 つるりとした体表には、模様や突起がある訳では無い。

 簡素なフルプレートアーマーか、昆虫を思わせる姿をしている。


 動きはそれ程早く無く、のそのそとゆっくり歩むだけ。

 手には武器も持っておらず、ただその巨体だけが脅威であった。


 とはいえ、今も木々を踏み砕いて歩み続けている。

 このまま放っておけば、被害は更に広がって行く事だろう……。


 オレはマンション程の高さを持つ巨体へ狙いを定める。

 まずは、小手調べとしてこの辺りから始めて見るか。


「――メガフレア!」


 メルトが得意とする炎系の魔法だ。

 森林火災を起こさぬ様に、気を付けてその背中へと火球を放つ。


 一抱えもある火球は、狙い違わず『巨神兵』の背に当たる。

 そして、盛大な花火を散らし、爆音が森林に響き渡った。


「やったか……?」


 黒い煙が晴れた後、その結果が姿を現す。

 『巨神兵』の背中はうっすら溶け、ダメージの後が確認出来た。


 とはいえ、全体の表面積を考えると致命傷には程遠い。

 サイズ的には、背中にタバコを押し付けられた程度の火傷でしかない。


 渋い結果に唸るオレ。

 すると、『巨神兵』がゆっくりこちらへ振り返った。


『敵対生命体を確認。脅威レベル大と判定』


 巨大な音声が、奴の口元から発せられる。

 片言では無い流暢な声だが、内容的にはSFっぽさが出ている。


 どうやら、あちらもオレの事を脅威だと判断したらしい。

 そして、『巨神兵』の口元がパカッと開いた。


『敵対生命体の排除を開始する』


「む? デビルウィング……!」


 嫌な予感がして、オレは羽を生やして空を飛ぶ。

 これも過去の魔王が使った、スキルの一つである。


 扱いが難しくて使いずらいのだが、海での一件で習得を決意。

 今ではオレも、メルト並みに空を飛べる様になったのである。


 そして、高速で空へ離脱したオレは眼下を見る。

 すると、オレの立っていた一帯が、熱光線で溶ける光景が見えた。


「――なっ……?!」


 更に奴は、口から出すビームでオレを追い掛ける。

 オレは慌てて、空を飛び回ってその射線上から逃げ回る。


 どうやら、素手と思ったが武器が無い訳では無いらしい。

 溶けた大地を見る限り、オレでも当たれば唯では済むまい……。


 そして、オレは逃げ回りながらも、対抗手段を模索する。

 具体的には、『デビルアイ』で奴の弱点をサーチするのだった。


「……体内に熱源体があるな。あれが奴のエンジンか?」


 見ていてわかったのだが、どうも奴は魔力で動く存在ではない。

 本格的にファンタジーではなく、SFの世界の住人らしいのだ。


 溶けた背中の傷も、徐々に自動修復されている。

 もしやあれな、ナノマシンとかではないだろうか……?


 機械の神が操ったと言うし、『巨神兵』はロボットと思うべきだろう。

 魂や精神は持たぬ為、精神攻撃の『ドラグスレイブ』も意味を成さない。


 ……まあ、あの魔法は指輪無しでは禁止されているが。


「仕方が無い……。多少の森林破壊は、多めに見て貰うとするか……」


 まずオレは、『闇の衣』と言うスキルを使用する。

 これにより、攻撃に対する高い防御能力を得る事が出来る。


 このスキルは、光属性の効果でかき消される弱点もある。

 しかし、魔法を使わなそうな『巨神兵』なら、その心配も不要であろう。


 これで、うっかり熱光線に当たっても、一撃でどうこうなる事はないだろう。

 今なら多少の隙が出来ても問題無いので、大技の利用も可能という事である。


「さて、メルトには悪いが使わせて貰うか……」


 オレは腰に手を構え、魔力の充填を開始する。

 使う魔法は『メガフレア』よりも上位の『ギガフレア』……。



 ――ではなく、更に上位の『テラフレア』である。



 メルトでもかなりの下準備があり、『ギガフレア』をようやく使えるらしいのだ。

 オレがあっさり使った際には、拗ねてその日は口をきいてくれなかった事もある。


 その為、この『テラフレア』は、今まで使える事を皆に黙っていた。

 まあ、指輪無しでは使えないので、言う必要も無かったとも言うがな。


「さて、流石に効いてくれよ?」


 小刻みに熱光線を繰り出し続ける『巨神兵』。

 オレはそれを『∞』を描く様に回避し続ける。


 そして、何とか事故も無く、魔力の充填が完了した。

 オレは二っと笑みを浮かべ、オレが持つ最大級の大技を繰り出す。


「――喰らえ! テラフレア……!」


 恐ろしい程の熱量が、オレの掌から放出される。

 どこぞの波動使い空手家も、真っ青になる威力である。


 オレは羽で姿勢を何とか制御し続ける。

 そして、膨大な熱を浴びる『巨神兵』へと視線を向ける。


 『巨神兵』は両手で『テラフレア』をガードする。

 しかし、全身を包み込む炎により、その身が徐々に溶け始めていた。


「――はあっ、はあっ! どうだ……!」


 流石にこの魔法は、魔力の消費量が馬鹿にならない。

 オレでもとてつもない疲労感を覚えてしまう。


 だが、眼下の『巨神兵』は明らかにダメージを受けていた。

 その体表が殆ど溶けて、ドロドロの姿でオレを見上げていた。


『――脅威度を修正。敵対生命体を人類の脅威と認定』


「む……?」


 何故だか、『巨神兵』の雰囲気が大きく変わる。

 青かった目は赤く変わり、腰を落としてオレへと構える。


 危険な雰囲気に、オレも警戒度を更に上げる。

 そして、オレと『巨神兵』の戦いは、次のステージへと移る。

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