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童話

 リオン達と共に、人族の領地を馬車で駆ける。

 北上を続けていると言う、巨神兵の後を追い掛けながら。


 そして、オレ達は道中で崩壊した街を発見した。

 建物は焼け焦げ、融解して、見るも無残な状態であった。


 しかし、不幸中の幸いと言うべきか死者はいないらしい。

 残っていた町人から、近隣の村へと非難したと聞かされている。


 それと言うのも、巨神兵は攻撃前に警告を行ったそうなのだ。

 一時間後に街を破壊するので、住人は直ちに避難する様にと。


 王城の騎士達と違い、誰も立ち向かわずに逃げ出したそうだ。

 そのお陰もあって、怪我人すら殆ど出なかったらしい。


「うーむ……。本当に、文明を滅ぼすだけの存在なのか……?」


「どうでしょうね? 人間を攻撃する意思はねぇみてえですが」


 馬車に同席するリオンが、オレの呟きに返事を返す。

 独り言ではあったのだが、折角なので意見を交わす事にしよう。


「しかし、『巨神兵』が城や町を壊す理由がわからんな……。奴は一体、何を目的に行動してるんだ?」


「童話通りなら、自然回帰じゃねえですか? オレ達みたいな森の暮らしを、理想とするみてぇですよ」


 あっさり答えを返すリオンに、オレは驚いて見つめてしまう。

 そういえば、オレは肝心の童話について何も知らなかった。


 何かしらのヒントが得られるかと期待し、オレはリオンに尋ねてみる。


「その童話は、どういった内容なのだ? 『巨神兵』は、どう描かれている?」


「童話の内容ですかい? えっと、聞いたのはガキん時になりやすが……」


 オレの問い掛けに、リオンは眉を寄せて考える。

 どうやら、うろ覚えの記憶を何とか引き出しているらしい。


 そして、少ししてからオレに対して説明を始める。


「その昔、人間達は高度な文明を持ってたそうです。その文明を管理する為に、人間達は機械の神を生み出した……」


「人間達が、機械の神を生み出した……」


 いきなり、話がSFになってしまった。

 この世界がファンタジーと思ったのは、オレの錯覚だったのか?


 オレの戸惑いを他所に、リオンは話を続けて行く。


「限られた大地に、増え続ける人類。森を切り開き、住居を増やすが限界が来た。このままでは、全ての生命が生きられなくなる。そこで機械の神は決断をした。高度な文明を捨てて、『自然回帰』で世界を健全な状態へ戻そうと」


「何と言うか、頭の痛くなる話だな……」


 この世界の住人からすると、確かにこれは童話の世界だ。

 高度文明を知らず、自分達の生活とかけ離れた世界の話なのだから。


 だからこそ、誰も本当の事とは信じなかったのだろう。

 オレみたいな異世界人からすると、ありがちな話であっても……。


「機械の神は、人類を守る『巨神兵』に命じた。自然に反する建物を破壊せよ。ただし、人類が生きられるだけの、最低限の文明だけは残すようにと」


 確かに、道中で見かけた小さな村は無傷だった。

 自然と共存するような、田舎を思わせる環境であった。


 つまり、その程度は必要最低限、生きるのに必要と判断されたのだろう。

 逆に、この世界水準でも、町程度の文明レベルはアウトらしい。


「100体の『巨神兵』は、7日間掛けて世界を壊した。文明と呼べる物は全て滅び去った。そして、機械の神は眠りに付き、人々は一から全てをやり直す事になった。……ってのが、童話の内容でさぁ」


「ふむ、なるほどな……」


 童話だけあって、話の内容はわかりやすい。

 機械の神が、人々を守る為に『巨神兵』を動かしたとわかる。


 そして、かつてオレが『巨神兵』を使おうとした時の事だ。

 リオンはその提案に難色を示したが、その理由が今になって理解出来た。


 こんなものは利用すべきではない。

 使用者の意図に反し、勝手に文明のリセットを始めるのだろうから。


「童話通りかはわからんが、童話の通りなら人類を攻撃する存在では無いという事か」


「ただ、滅んだって言う人間の騎士団を考えると、反撃はするみてぇですけどね……」


 確かに邪魔者であれば、人類への攻撃も行うのだろう。

 その行動を阻止するオレとは、必ず戦いになるのだろうな。


 だが、それは想定通りなので問題無い。

 むしろ、避難する者が襲われないとわかっただけで僥倖である。


「だが、一つだけ疑問なのが……」


 童話に伝わる100体の『巨神兵』。

 オレのアイテムボックスに眠る99個の『巨神兵』。


 これは偶然と言う事では無いのだろう。

 女神マサーコ様より前の管理者が、何かやらかしたのではないだろうか?


 考えても仕方が無いかと、オレはゆっくり首を振る。

 そして、内心では盛大な溜息を吐くのだった。

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