夜明け2(シェリル視点)
目を覚まして唖然とします。
窓の外を見て、朝焼けが確認出来たからです。
時計を見ても、眠りに付いた時間より早い。
身の軽さからしても、眠ってすぐに目覚めた感じではありません。
つまり、私はほぼ24時間眠っていたという事です。
どんなに徹夜を続けても、これ程眠った事は一度もありません。
規格外の寝坊に呆然としている私は、そこでふと気が付きます。
「…………え?」
テーブルの上で、ミニメルト人形が事切れています。
今までじっとする事はあっても、死んだように倒れた事はありません。
焦った私は、テーブルへと駆け寄って確かめてみます。
手に取って確認しましたが、魔力切れを起こしているみたいでした。
「魔力切れを始めて見ましたね……。――いえ、その方が異常なのですが」
試しに魔力を注ぎますが、動き出す気配がありません。
こうなると、これまでが魔力で動いていたかも疑わしいです。
そして、どうしたものかと悩む中で、私は妙な違和感に気付きます。
「――ん? 妙に力が湧いて来る様な……?」
24時間の睡眠でスッキリしたからでは無いでしょう。
疲れが取れたとかでは無く、体の底からかつてない程の力を感じるのです。
もしやと思った私は、棚に置いたステータスオーブを手に取ります。
そして、その表示される結果に、再び唖然としてしまいます。
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<ステータス>
名前:シェリル=ノア
職業:大魔王の花嫁&星の巫女 Lv90
最大HP:4500 最大MP:850
攻撃力:350 守備力:350 力:350
体力:450 魔力:850 魔法抵抗力:850
素早さ:600 器用さ:700 幸運:999
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「このレベルは……。いえ、職業も変わっている?」
『大魔王の花嫁』は、まだ理解が出来ます。
メルト様も『魔王』から、気付くと変わっていましたので。
しかし、『星の巫女』とは何でしょう?
その様な職業は、これまで一度も聞いた事が無いのですが……。
そして、Lv90も意味が解りませんね。
昨日――いえ、二日前まで、私はLv65だったのですよ?
寝て起きたら、レベルが25も上がっていた?
そんな事は、女神マサーコ様の祝福でもなければ……。
「――って、もしかして、祝福の効果?」
私はネグリジェの上から、そっと腹部に手を触れます。
そこにある『誓いの紋章』から、微かに力を感じる事が出来ました。
恐らく、本来の『誓いの紋章』には、その様な効果は無いはずです。
何らかの条件を満たす事で、刻まれた者が超パワーアップを果すなど。
しかし、これは女神マサーコ様からの贈り物です。
普通の『誓いの紋章』では無かったという事なのでしょう。
レベルアップの正体については目途が立ちました。
カラクリに当たりが付けば、安堵を超えて歓喜が身を包みます。
それに、『星の巫女』も女神マサーコ様の絡みでしょう。
意味はわかりませんが、きっと悪い物では無いはずです。
そして、私は安堵して再び視線を落とします。
手の中のオーブを確認し、ニンマリと口元を歪めます。
「そして、何より素晴らしいのが、この『幸運値』です! この流れなら、表示エラー等では無いはず!」
これまでは、どれ程レベルを上げても『0』だった。
私の幸運値は、『0』から上がる事が無かったのだ。
……それが、目が覚めたら『999』ですよ?
全種族共通の限界値と言われる、『999』に達しているのですよ!
これこそが、女神マサーコ様の真の祝福に違いない。
今までの全ての苦労を覆す、女神マサーコ様の愛に違いなかった。
「ああ、これ程の祝福を授けて頂けるなんて……。どれ程の信仰を捧げれば良いのか……」
私はその場に膝を付き、両手を合わせて祈りを捧げる。
この私の感謝の気持ちが、僅かでも女神マサーコ様へと届く様にと。
そして、十分な時間を祈りに費やし、満足した私は気付いてしまいました。
「素晴らしき祝福を、私は直接賜りました。しかし、メルト様にはそれが無い。それは、つまり……?」
女神マサーコにご贔屓して頂いている?
メルト様より私の方が、大魔王様に相応しいという事では?
きっとそうに違いない。
そうで無ければ、同じ花嫁にこれ程の差は有り得ないでしょう。
「勝った……。これは完全に、私の勝ちが確定しました!」
ここに来てのどんでん返し……。
もはや私は、メルト様に振り回される立場では無い!
私は天に拳を掲げ、勝利の余韻に一人酔いしれる。
そして、ふと物音に気付き、視線をテーブルへと向けます。
「…………え?」
そこでは、ミニメルト達が万歳をしていました。
いつの間にか、復活を果たしていたみたいです。
いつも驚きに固まる私ですが、今日ばかりは違います。
私はテーブルへと駆け寄り、ミニメルト達とハイタッチを行うのでした。
第十三章が終了となります。
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