7話 雷と老人
「暇だなぁ。フィアンナのやつらはA級とやってんだろ。いいなあ。」
「そんなことより雲行きが怪しくなってきたぞ。クーフーリン。雷が鳴るかもしれない。この森を抜けたら休憩しよう。」
「そうか。師匠、雲とか操れねぇーか?」
「馬鹿者。そんな魔力はない。第一、雲まで魔力が届くわけなかろう。コナルの言う通り野宿だ。」
「了解。雷が降る前に抜けるぞ。」
突如、激しい光が馬車の前方に落ちた。
(ッチ。遅かったか)
目の前には燃え尽きた木々があった。その先には白い服を纏った老人がいた。
「ご老人、無事か?」
彼はどこからか槍を取り出し、
「問答無用!」
と叫び、槍を突き上げた。
(っく、敵か!)
俺が飛び出る一瞬前にコナルが飛び出した。
「待て!」
師匠制止した。しかし、コナルの耳には届かない。
「ッ、防御魔法!」
すると、コナルの上に何層もの障壁が築かれた。
「無駄じゃ」
ドッカーン!
青い閃光がはしり、気づいたときには火傷を全身に負ったコナルがいた。皮膚は焼け爛れ、青い髪も灰と化していた。
(馬鹿な。なんて威力だ、、)
「全兵、撤退しろ!」
「爆発魔法」
小規模な爆発が起こった。しかし、それはあたりの砂を巻き上げるには十分だ。
この隙にコナルを回収し、撤収する。
(まだ息はある。)
砂ぼこりが収まったころ、あたりには無人の馬車しかなかった。
そして老人は呟く。
「やれやれ。まあじき終わる。」
(なんだあいつは。天候を操るだと?そんな馬鹿な。)
コナルに応急処置をしながら思考を巡らせる。
「なあ師匠、あの爺さんなにもんだ?」
「わからん。しかし、何かしら秘密があるはずだ。さもなくば奴が神かもな。」
幸いここは森だ。木々に紛れることができる。しかし、あの雷をどうにかせねば、私たちに勝利はない。
おそらく私が全力で防御しても数年は戦えないほどの傷を負うだろう。直撃しようものなら消し飛ぶだろう。
「師匠、とりあえず作戦だ」
「わかっている。まず、あの雷が当たれば終わりだ。まだ一度しか見ていないから正確かはわからないが、発動条件を予測した。」
「おお!流石師匠」
「おそらく、あの槍を突き上げると雷が落ちる。そして、当たると終わりだ。」
「単純明快だな」
「まず、あれには魔力を多く使うからどこに落ちるかは予想できる。ここからは確実性が低いが、雷がおちるまで若干の時差がある。そして、ここからが重要だ。雷はまっすぐ落ちた。つまり、奴は雷がおちるまでの時間を計算し、その時に対象がいるであろう場所に落としている。」
「つまり、どういうことだ?」
「つまり、槍を突き上げたときに相手がいるところより少し前に雷が落ちるということだ。」
「なんでだ?」
「相手の真上に落とそうとしても、実際に落ちたときには相手が移動した後だから当たらないんだ」
「なるほど!つまり相手は先読みで魔法を打ってるのか」
「そう。だから完全な後出しじゃんけんなんだよ。」
(全く、馬鹿な弟子を持つと苦労するな、、)
「だからお前は相手が槍を突き上げたらこれまでと違う方向に進めばいいんだ。」
「よし!反撃だ」
「もうかくれんぼは終いか。」
「ああ」
まずはまっすぐ走る。
「終わりじゃ」
(槍を突いた。今だ)
90度方向う転換をする。
ドッカーン
爺さんが目を見開く。
「やるのぉ」
またもや槍を突き上げる。
その一瞬、無防備になる。その隙を逃さず、槍を投げる。
「っな!」
(勝った)
しかし、爺さんは自分の槍で師匠の槍をはらった。
ドッカーン
雷が落ちる。
「この槍妙な小細工がしてあるのぅ。なんじゃこの文字は?」
そう。俺が投げたのは師匠の槍だ。師匠はルーン魔術を使える。あの槍が刺さったらだれであれ死ぬ。そういう意味の文字が書かれているからだ。
「さて、少し本気を出すとするかのう」
老人はニヤリと笑った。
次話からは基本毎週土曜日の朝10時に更新します。