17話 ドラゴン
「おいおい、マジかよ。なんでドラゴンなんかテイムしてるんだ?」
「ドラゴンなんて初めてっすね。それよりも兵士たちを避難させないと全滅しますよ。」
とは言ったものの、ドラゴンの全長はゆうに50メートルに達している。そしてここは開けた大地。逃げ場などあるはずがない。
「まずはあいつを地上に引きずり降ろさないとな。アーラシュ、なんか見えるか?」
「そうっすね。多分俺の魔眼じゃ無理っすね」
「どういうことだ?」
スパルタクスの眉間にしわが寄る。
「俺の魔眼は未来視じゃないんすよ。」
「はぁ?どういうことだ?さっきだってテイマーの存在どころか出てくる位置とタイミングまで当てただろ」
「俺の魔眼は人や物の本質を見抜く物っす。それに加えてちょっとした予測ができる程度っす」
あたりが真っ白になる。それと共に頭の奥まで響く雷鳴。
なんの音だ?目が見えない。耳に痛みが走り何も聞こえなくなった。
(これはなんだ?)
声を喉から吐き出せない。しゃべっている感覚はあるのに。いや、声は出ている。その声が聞き取れないのだ。上から焦げ臭い匂いがする。目を開けると何も見えない。いや、暗すぎるのだ。
まばゆい緑の光が見えた。体が軽くなる。無音の世界に音が戻る。
(回復魔法?)
「アーラシュ、平気か?」
「はい。ドラゴンも相当な痛手を負ったみたいっすけどもう通りっす。」
「まあいい。拡声魔法。」
『まずはドラゴン討伐だ!まずは翼を狙って地面に落とす。下敷きになる前に避難しろ。魔法使い、弓使いは翼を撃つんだ!討伐開始!』
雄叫びが上がる。ドラゴンを中心に兵士が広がる。
「アーラシュ、頼んだ。」
「了解。」
矢に青い魔力を流す。
「武器強化、雷!」
様々な魔法や矢が一点に集中する。ドラゴンの周辺には包囲網ができていた。
「だめだ、まったく効いてない」
アーラシュが息をのんで目を見開く。
「防御魔法!」
それに数十名が続く。
突然駆け抜ける熱気。奴の口から黒い煙が立つ胸の辺りが赤く光り、それが喉を通り口に到達する。炎が放たれた。それは真正面にいた兵士を焼き尽くし遠くまで伸びていく。障壁も破れ、百名ほどの兵士が塵となった。
「怯むな!」
再び攻撃が続く。
「スパルさん、奴の前に移動しましょう。俺たちが攻撃を食い止めるんっす。」
「そうだな。」
足に魔力をためて走り出す。
「結構イカつい顔してんすね。」
そう言いながら矢を放つ。鈍い音が鳴りドラゴンの歯が矢を跳ね返す。
突然後ろに気配を感じた。
「誰だ!」
振り返るとローブを羽織った弓使いがいた。もちろん弓を持っているからそう思ったのだが。
「私は通りすがりの弓使いだ。助太刀いたす。」
どうやらこいつは女のようだ。
答える暇もなく頬を風が掠める。
もうそこに女の姿はなかった。
弓がなる。振り返るとローブの女はドラゴンに矢を放っていた。
傷を与えるまではいかないが、確実に痛みを与えている。
ドラゴンの咆哮。風が吹き付ける。
「逃げた!」
雲を突き破り、さらなる上昇を続ける。
「見えなくなった!」
「スパルさん、大変っす。あいつ、ここに突っ込む気だ!」
もう夏休み期間ですね。どこかのタイミングで毎日投稿始めたいと思います。