14話 女魔法使い
投稿日を間違えてました。申し訳ございません。
今、彼らは人探しをしている。なぜ防衛任務中にそんなことをしているかというと、3時間前に話は遡る。
4軍の副隊長の一人、ナルテが行方不明になったからである。
4軍の担当地域はアルスター地方、フィアンナ地方の境界線付近である。その周辺には集落一つなく、延々と続く浜辺と広大な林があるだけだった。ほかになにかあるとすれば、水平線の近くにポツンと浮かぶミューシアー島くらいである。
「だめだ。どこにもいねぇー。」
「フィアンナ隊の所に行ってないかしら?ここから歩いて10分くらいでしょう?」
「僕の探知魔法にも反応がないからもっと遠くへ行ったんだと思います。」
「そんな遠くへはいっていないと思うわ。」
「ナルテはさっき浜辺の方に行ってたよね。だからあの島に行ってたりしないかな?たしか船で30分くらいだったよね。」
「船なんかねぇーだろ」
突如轟音が響く。それとともに黒いローブを着た人物飛んできた。その胸には氷が刺さっている
ローブからはみ出るオレンジ色の長髪から女であることが予測できた。
「彼女は?胸に氷が刺さっている。」
「これは氷魔法ですね。この様子では彼女はもう、、、」
「浜辺の方から来たわね。行ってみましょうよ。あっちには兵たちもいるし。」
そういうなり彼女は駆けだした。
「パーシャさん、ちょっと待ってください。恐らく相手は相当な手練れです。彼女を見てください」
そう言ってローブの女を指さす。彼女の死体は凍りかけていた。胸の氷が冷たすぎるのだ。
そんなに温度の低い氷を作れる魔法使いはこの国にはいないだろう。
「それでも行くっきゃねぇだろ。なぁ、ベギス。」
「あぁ。怖いのならばそこで見ていろ。いくぞ。」
そう言って4軍の幹部は駆けだした。臆病な一人を除いて。
「おいおい、嘘だろ、、、」
ここの海は特別きれいだ。ロムルス帝国ができる前、最強の魔法使いとして名高く、海を愛して海神とも呼ばれた賢者ポルコスが別荘を建てたともいわれる程だ。
その海は真っ赤になっていた。兵士たちの血で染まっていたのだ。彼らの胸には氷が刺さっている。
「あれは氷魔法!」
先ほどのローブ女の仲間だろうか。二人のローブが白い女と戦っている。その女はとても白い。陽の光を浴びてキラキラと光っている白い髪。肌も透き通るように美しく、4軍の皆は一瞬見惚れてしまった。
「おい、どっちの味方をするべきだ?」
「たぶんローブの味方をするのが賢明ね。うちの兵を殺したのはあの女でしょうし。」
「よし、攻撃開始だ!」
隊長の号令と共に3人は駆け出した。
「あら。あなた達は反逆軍の四軍の隊長さん達じゃない。」
そう女が言った。
「てめぇは誰だ?」
「あら、名前を聞くには先に名乗るのが常識じゃなくて?と言ってもあなた達の名前は知っているけれど。アレク、ベギス、パーシャ。他の2人はいないようね。おおかたサイフォーは怖くて隠れてるのかしら。それともかく、私のことは白の魔女とでも呼びなさい。まぁ、いずれ死ぬあなた達には関係ないけどね!」
そう言って白の魔女は氷を放った。
カキン!
小柄な方のローブの男が剣で氷を防いだ。
「おめぇーらは下がってろ!死ぬぞ!」
そう言い捨てると魔女の方へ走り出した。
魔女が氷で剣を作り出す。ローブ2人と魔女との激しい剣劇が続く。
「どうする?俺たちは行っても足手まといだ。というか戦いに入る隙がない。」
「そんなん関係ねぇ。俺は行く。」
「アレク!」
3人の間にアレクが割って入る。彼は自分には戦いに付いていけないと悟っているにも関わらず無理矢理参戦した。やはり、彼は氷の餌食となり副隊長の元に帰った。
「大丈夫?無茶したらダメよ。肩に氷が刺さってる。サイフォーのとこに行って治してもらいなさい。私はちょっと戦ってくるから。」
そう言って彼女は歩き出した。
「強化魔法!」
彼女は赤いオーラを纏う。
ダンッ!
と地面を蹴り、魔女目掛けて駆け出した。放たれる氷は彼女から発せられる熱気で溶けてしまう。
魔法では、温度を低温、高温にするのは至難の業だ。魔法使いの実力を見るには温度を測るのが一番と言われるほどだ。しかし、魔法にする前の魔力の状態ならば超高温にすることが可能なのだ。もともと、魔力を魔法にする時に温度が奪われてしまう。優れた魔法使いならば魔力から魔法にするときの熱伝導率が高いのだ。
そのまま彼女は魔女に一撃を喰らわせた。その瞬間に火花が散る。
「この小娘が!」
魔女はそう言って起き上がる。蒸気と共に彼女は頬の火傷を修復する。
「少し本気を出してあげる。」
そう言って彼女は氷、炎の魔法を空に放つ。轟音と共にそれらが爆発した。
「水蒸気爆発だ!」
背が高い方のローブが叫ぶ。
「あいつは全属性の魔法を使える。パーシャ!心してかかるんだ!」