13話 謎の二人組
「そろそろお出ましっすねぇ」
そういってアーラシュは斜め45度に弓を構える。
「おい、どこ狙ってる?」
ヒュン!
弓が放たれる。
突然、空中に黒い魔方陣が現れた。それはすぐにゲートのようなものになった。それに吸い込まれるように矢が刺さる。
「グ八ッ!」
ゲートから悲鳴があがった。
「転移魔法!?」
転移魔法などそうそうできるものではない。100年に一人の天才でなければ使えないと言われている。
「アッツー」
ゲートから人が二人飛び降りた。片方は白髪の女、もう一方は薄浅葱色長髪の男だった。
「君たち、結構やるねえ。まさかゲートを開いた瞬間に矢が飛んでくるとは。フィービー、援護よろしく」
そう言って男は全身に魔力を巡らせた。
ダンッ!
地割れとともに男はアーラシュの方に走る。戦いでは、弓使いを真っ先に倒すのがよいのだ。なぜなら、近接戦闘に向いていない職業なので容易に倒せることが多い。それに、今後の戦いで遠距離攻撃を気にせずに済むからだ。
アーラシュは後ろ向きに飛びながら矢を三本つがえて放つ。男もスピードを落とさずに躱す。
「援護します!」
剣を抜き、二人のところに駆け寄ろうとした。
「っつ!待て」
スパルタクスが首根っこを掴んで止めるすると、血の付いた矢が飛んできた。
「っち。まあいいわ。召喚魔法。」
突然黄色い鳥が何十匹も現れた。
「サンダーバード?いや、それにしては小さすぎる。」
「この子たちはミニサンダーバード。機動性を重視した型よ。」
ピー!
一泣きすると、魔獣たちが消えた。
(消えた?)
次の瞬間、シモンは目の前が見えなくなった。シモンの前にスパルタクスが移動したのだ。剣を振る音が聞こえる。そして、周りには魔獣の死骸が落ちている。
(動きが見えなかった)
一度魔獣たちは距離を置いた。全身に魔力を帯びる。
「雷魔法?」
「こいつらも魔法を使うのかよ。」
みるみるうちに魔獣の体が黄色く光ってゆく。
「避雷針」
魔獣から放たれた電気は、手のひらに集められる。
「っ、なにそれっ」
「スパイラルボール!」
(距離を詰めればこっちのもんだ!)
アーラシュは男の攻撃を避ける。
「クソッ」
男はひるまずに攻撃を繰り出す。アーラシュは弓を振り回し、攻撃する。互いに一撃も入れられないまま、戦闘が続いた。
ドッカーン!
シモンが攻撃を放った。
「ったく、使えねぇなあ。フィービー、撤退だ。」
「…りょ、了解。」
「最後に少しは絶望させてやろう。あれ出せ。」
「わかったわよ。召喚。」
(おいおい、なんだよあれ。)
全天を黒い魔獣がおおいつくした。
「そうそう!その絶望に染まった心が見たかったんだ!じゃあアルスターに行こうか。」
そういうと黒い球を取り出して魔力を込める。
「おい、待ちやがれ!」
「シモン!」
そうして三人はゲートの奥へと消えていった後には兵士とスパルタクス、アーラシュとドラゴンだけが取り残された。