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delete〜花〜

作者: 花瓶

deleteの第二作です。

かなり時間がかかりました。と言っても実際は数週間で書き終えました。どこかの星で起きているかもしれない話をご堪能ください。

第二のdelete〜花〜

世の中には約20万種の花を咲かせる植物がある。

花は一人でにぽつりと咲くこともあれば、一つのグループを作って群れることもある。

まるで人間社会のようだ。

けれど人間に花のような力強い生命力や美しさは無い。

花はどんなに暑い場所、寒い場所、狭いところ、何も無いところでも美しく咲き散っていく。これほどまでに華麗で儚いものがあるだろうか。

そんなことを一冊の本に綴っていたこの男は"ジェス"という名前だった。

ジェスは幼い頃から植物が大好きだった。特に花が大好きで毎日植物園に行っては見惚れていた。

そしてジェスは成長し植物の博士になった。

自分で植物園を建て、毎日毎日お世話をした。とても平和な毎日だった。

だがその日常は淡々と終わりを告げた。

ある日ジェスはコーヒーを片手にニュースを見ていた。

つまらないニュースばかりだと思いつつも、世の中を知ることは新たなる発見の兆しだと言い聞かせながら見ていた。

ジェスの日常が終わるのは、やっとニュースが終わりを迎えるその時だった。

一本の速報が入った。

「速報です。ただいま全世界の有害な植物を駆除するための薬品を作る研究所が何者かによって爆破されました。犯人は特定できておらず、警察は行方を追っています。」

ジェスは手に持っていたコーヒーカップを落としてしまった。

実は数年前から有害な植物を駆除する計画が世界政府で進んでいた。だが反対も多くなかなか進まなかった。ジェスも反対派の一人で抗議を何回もしてきた。有害な植物を救うためにも、人間に危害を与えないための薬を作れないかなどと、ジェスは一人で何回も試行を繰り返した。

だがジェス一人の力ではどうしようもなかった。

世界政府の奴らは、24時間数百人という体制で薬品の開発を極秘研究所で進めていた。

その研究所が遂に爆破された。

さすがのジェスでも爆破をするなんてことは考えていなかった。

ジェスは知り合いの植物を研究している仲間に連絡をしてみた。数人に電話をかけたが、誰もが口を揃えてこう言った。

「このままだと、我々の研究所が政府に乗っ取られる。これから厳しい捜査が始まるはずだ。」

ジェスは背筋が凍った。だが、どうすることも出来なかった。椅子に座って突っ伏していると、犯人が捕まったというニュースが入った。犯人は、反害植物撲滅派の一人だった。

ジェスは深いため息をついた。

ニュースの終わりの方でこうも言っていた。

「これから全ての植物に関わる研究所などを捜査をするとのことです。」

ジェスは急いで研究所に走り出した。スマホを片手にメールアプリを開くと、そこには仲間の研究者から捜査員がもう来たというメールが届いていた。

ジェスは今ある植物は救えなくても未来に残そうとした。金庫に厳重に保管して置いた全ての植物の種を取り出して、隠れようと思った。

だが、もう遅かった。

捜査員は車で研究所を囲んで訪れた。

「君がジェス博士ですか?捜査をさせていただきます。抵抗する場合はあなたを牢屋にぶち込むことになります。」

ジェスは、めちゃくちゃなことを言っていると思ったが、落ち着いて話した。

「わかった。植物園は向こうだ。」

ジェスは捜査員を全員、植物園に誘導して、金庫から全ての種を取り出した。そして全速力で走り出した。どこに向かっているかもわからなかった。けれどこの種は決して捜査員に渡してはならないと遠くに逃げようとした。

数時間もすれば捜査は終わった。有害な植物は全て燃やされて処分された。捜査員が最後の挨拶に研究所に訪れてみると、そこには博士はいない。

部屋がさっきよりも荒れていることに気づいた。

捜査員は上に連絡して、博士の行き先を追うように応援を頼んだ。

ジェスは大きな森に隠れた。ここなら水もあるし、なんとか数日は生きられるだろうと考えた。

だが、空にはもうヘリが何機も飛んでいる。

ジェスは水と、わずかな果物で三日逃げた。

そして、四日目の朝。

森の中で息を潜めていると、背後から音がした。

後ろを振り向くと、そこには銃口がある。

死ぬ。終わった。とジェスは思った。

ジェスは捜査員の声に聞く耳を持たずに、種を握って走り出した。袋は二つある。


一つは全ての種。


もう一つは全ての起源"アルカナ"の種。


ジェスは全ての種を渡せば、捜査員は満足して帰るだろうと考えた。

なので、ジェスは全ての種の入った袋から一つ種を取り出して、袋をを捜査員に差し出した。

そして、アルカナの種を木の根と根の間にこっそり隠し、全ての種の入った袋から取り出した一つの種を近くに埋めた。いつか目印になるように。


この事件があってから数ヶ月、世界からほとんどの害をもたらす植物がいなくなった。

ジェスは要注意人物として24時間監視されていたが、今日やっと監視も解除されて自由になった。

ジェスはかつて死に物狂いで逃げたあの森にやってきた。

"アルカナ"の種を隠した木を探した。1時間ほど森を彷徨って、やっと見つけた。かつて埋めた種が綺麗な花となって咲いていた。近くの根をナイフで切り分けてみた。するとそこには"アルカナ"の種の入った袋があった。ジェスはその袋を手に取り大事に研究所に持って帰った。


ジェスが"アルカナ"の種を取り戻した数十年後...


ジェスはいつものようにコーヒーを片手にニュースを見ていた。

ニュースはある話題で持ちきりだった。ある博士が"アルカナ"の種を利用して、かつて失われた植物を復元し、周りに害をもたらす部分を解消したらしい。その博士の名は、「ジェス・ディリテリィオ」である。そう、テレビの前でコーヒーを片手にくつろいでいるこの男である。

結果的には偉大な研究者かもしれないが、やっていたことは違法行為なので、人生で2度目の24時間監視に置かれている。むしろこれで済んだのが嘘のようだ。

ジェスはテレビを消して立ち上がった。ぐーっと背伸びをすると、植物園の方に向かった。我が子のように愛でている植物に"おはよう"を届けに。


読んでいただきありがとうございました。

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