闇から現れたもの
これは手探り状態の投稿です。
未知の宇宙に転送したジェネシス号。
その宙域は幾何かの恒星の光が程遠く届いていて、暗闇の宇宙を標している。その光に導きを求めるようにソレイユとクライスは空間座標を計算する方法を模索していた。
「クライス、電波望遠鏡を使って最も近い恒星を探して、そこから地球との距離を割り出せない? 」
「見えてる恒星から三角測量をすれば地球への距離は割り出せるはずだ。エレミアも手伝って欲しい」
ソレイユとクライス、エレミアは恒星を探して空間座標を導き出している。後部座席で機窓の宙域を眺めていたギアが何かに気づいて声を上げた。
「おいっ! なんだよあれ! 」
全員が一斉に機窓に目を向けると、宇宙の闇が膨張しながら大きく渦を巻いている。その中心から鋭く巨大な爪が伸びてくる。広大な宇宙の暗黒を突き破るように突如現れる青く鋭い爪は長く伸び切ると大きな胴体を現し始めていた。
見ていた全員が星明かりに浮かぶ禍々しい青い爪に不穏な空気を感じていた。
「宇宙の浮遊物? 」
「変わった形。隕石かもしれないわ……」
突如現れた巨大物体は細く長い隕石のように全体を浮かび上がらせると、吐き出し終えた闇の渦は収縮して消えていく。
そして鋭く尖った爪先はゆっくりとジェネシス号に向けられていく。
「あの隕石動いてるぞ! 」
「重力で衝突する可能性もあるわ。クライス! 反重力推進で船体を反転して」
「反重力スラスター作動、方向転換してあの隕石から退避する! 」
ジェネシス号が方向転換し始めた時、先端が尖った巨大物体はこちらに向かって突進し始めた。
「こっちに来る! みんな操縦席に座って! 」
巨大物体はジェネシス号に狙いを定めて高速に突進してくる。
全員がモニター画面を見たまま息を飲むと、視界が大きく揺らぐ衝撃と耳を劈く炸裂音が船体の外郭から伝わってきた。巨大物体の鋭い爪先はジェネシス号の側面を突き破り、穴を開けて衝突した。
「船体右後方側面! 格納庫に衝突! 」
「動力源が破壊されてしまいます! 」
「あの物体から逃げられねぇのかよ! 」
「エレミア。空気が漏れないように各スペースの遮蔽扉を閉めて」
「はい。船体コア、格納庫、居住スペース、遮蔽扉で封鎖します! 」
想定外の事態にそれぞれがパニックに陥った。
操縦室と居住スペースの間に遮蔽扉の厚く鋼鉄の扉が閉まると突然……。
「きゃあ! 」
ソレイユ達の悲鳴と共に操縦室の電源がシャットダウンした。周囲は暗闇に包まれ、電源を失った室内は薄青い非常用ライトに切り替わる。
「送電配線が破損した……」
「動力源からの電力送信が完全に切れたようだ。非常用ではメイン動力の反物質コアが使えない……」
「俺が見に行ってくるよ!」
非常用ライトと空中タッチパネルの明かりだけが浮かび上がる室内。ギアがシートロックを外して席を立ち遮蔽扉の前で手動で開けようとした。
「ギア! 待つんだ! 突き破られた格納庫の様子がおかしい……」
「格納庫に2体の生命反応があります。何かが動いて、居住スペースに入ろうと……」
「エレミア、どういうこと? 」
「格納庫と居住スペースの間の遮蔽扉が破られました。居住スペースからこちらに、2体の生命反応が操縦室に向かっています」
「あの巨大隕石が衝突した時に何かが入って来たのかも……」
「何がどうやって入って来たんだ! 」
船内フレームを確認しているギアは認証が無ければ遮蔽扉が開かないことをわかっている。
何がどのように船内に侵入して蠢いているのか。操縦室に近づいてくる2つの謎の生命体にクライスは呆然と立ち尽くして呟いた。
「今、ここにそれが入ってきたら僕達はどうすることもできない……」
突然、操縦室と居住スペースを閉ざしている厚い鉄の遮蔽扉が「ドンッ! 」と何かがぶつかる鈍い音が響き渡ると全員が息を飲んだ。非常用の薄青い暗がりの中で全員が扉に振り向いて戦慄を走らせていた。
「全員扉から離れて!なるべく扉から距離をとってみんなで集まって! 」
ソレイユの指示に全員席を立って前方に集まると、分厚い鉄の遮蔽扉の中央が砂のように崩れ出す。熱で溶けているのか、液体に溶けているのかわからない。開いた小さな穴はあっという間に広がって遮蔽扉は粉々に消えて無くなった。
そこから入って来たのは硬い骨格を身に纏い、髪は長く顔は死人のように血色を失い、人の輪郭と変わらない白い眼を向けた怪物。
体つきから男と女の2体が操縦室に入ると何かの言語を話して口から白く冷たい息を浮かび上がらせている。そして室内の隅に集まっている6人のうちの誰かを見つけて近寄ってくる。
「みんな隠れてろ! 」
全員が暗い室内の隅に集まるとギアはその前に立ちはだかって踏み出した。左右の拳を握り締め両足に力を入れて構えている。
睨みつけるギアに女の怪物は気にも止めない様子で近寄ると、服に着いた虫けらを振り払うようにギアの体を片手で吹き飛ばした。吹き飛んだギアは壁に強く打ち据えて崩れるように地面に倒れていく。
圧倒的な力を見せつけられた未知の怪物に恐怖を覚え、全員が後退り距離を取るとティアリスだけはその場を動かなかった。
なるべく擬音語や擬態語を減らそうとしてますが、使いたい時は出てしまいます。音や状態をそのまま文字にした方が読者さんにとってもわかりやすい場面もありますしね。こだわった描写も避けてます。今回は怖めのシーン。次は戦闘シーンとなります。ファーストコンタクトを印象付けるためファーストインパクトです。そしてあとは緩く展開していく感じです。




