表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

神の導き

 クオリアは仄かに浮かび上がる白焔を見据えていた。それは造られた光では無い求められた光。ガイウスが転送して消え去った操縦室でライセはクオリアに刀を向けた。


「少年、私を倒したところで艦隊に出されたレアールの司令は変わらない」


 以前出会ったクオリアと外見は変わらない。胸に灯る白の光だけが燃えるように輝きを増していた。ライセは刀を下ろしてクオリアに問いかけた。


「……クオリア、なぜハイドラントに……」


「我々の目的は『再生』。滅亡した惑星レアールの繁栄を再び取り戻すことがクオリアに与えられた至上の使命」


「ハイドラントの人達をクオリアの集合意識に取り込んでもレアールは再生しない」


「レアールが無くしたものをハイドラントは持っている。我々はレアール再生のため、新しい人類を創り復活を遂げなければならない」


「他の人類の命を費やして創った命なんて後悔しながら生きてくだけだよ」


「人類はこの宇宙に創られた定理定数の中でしか生きられない。それを変えることが出来なければこの銀河の人類に新しい未来は無い」


 透き通る体を白く光らせたクオリアはその言葉がかつて滅んだレアールの統一意志であるように話している。クオリアはライセの傍に寄り添うティアリスに目を向けた。


「私はその娘に聞きたいことがある」


 ティアリスは青く透き通る大きな瞳で見つめるとクオリアはその瞳に問いかけるように話し始めた。


「お前は神は人を救わない。神は人を導くものと言っていた。惑星の滅亡、人類の滅亡さえも神の導きか? 」


 人の意識の集合体、英智を結集した人工知能クオリアの問いかけにティアリスは戸惑いつつもあるがままの応えを声にした。


「……終わりがあるとしたらそれはあるべき姿。滅亡に抗ったり恐れたりするのは意識が罪を感じてるから……」


「滅亡すれば何も残らない。もしそれがこの宇宙の理であるとすれば虚しいとは思わないか? 」


「滅亡する時に人は虚しさを感じるかしら。精一杯生きたのであれば安らかな感謝があるだけ。あなたもきっとそう思えるはずよ」


「私は惑星レアール再生のために造られた。この船にあるレアール人達の意識を新しい未来に導かなければならない」


「……私なら滅亡よりも人の意識を閉じ込める滅亡した惑星の中に生きてる方が悲しいわ。あなたもあなた自身の心に従うべきよ」


「集合意識クオリアは、惑星レアールはこの宇宙に新しい人類を創らなければならない。たとえそれが背徳の白の炎であったとしても」


 クオリアは自らの胸に収縮する白の光に手を当て、空間を埋め尽くす意識に語りかけるように宇宙を眺めていた。


 寂寞とした宇宙が広がる操縦室、整然と並んだレアール艦隊は砲撃を止めていた。2人のバッジにエレミアとソレイユの声が聞こえてくる。


「……エポナを発見しましたわ。今から脱出します」


「……こちらは中枢司令旗艦ツァラトゥストラを破壊します。みんな今すぐ脱出して! 」


 その通信を聞いてライセはクオリアに呼び掛けた。


「クオリア! この中枢司令旗艦ツァラトゥストラは今から崩壊する。君も逃げた方がいい」


「私は惑星レアールにあるクオリアの断片でしかない。崩壊するならこの船と運命を共にしたい」


「君は断片なんかじゃない。自我を持った生きた生命だよ」


「もし、人が想像する生まれ変わりというものがあるのなら次はお前達のような地球人に生まれてみたいものだ……」


 滅亡した人類を再生するために惑星レアールを出たクオリアが、失いかけた希望を取り戻すために地球を発った自分達と同調してライセの心を惑わせていた。


「行きましょう。ライセ」


 ティアリスの声にライセは憂色を振り切るように操縦室を後にした。


 通路を抜けて小型探査艇トラリスに転送すると周りには3機の小型探査艇トラリスがライセ達を待っていた。操縦席の通信からみんなの声が聞こえてくる。


電磁加速推進プラズマソニックって1回しか使えねぇのかよっ!」


「クリスタルウォールの向こう、半径100kmを10分以内……。音速を超えなければ無理ですわ」


 通信機に映る表情といつもの声。ライセとティアリスは発進準備を整えて声を掛けた。


「こちら3番機、遅くなってごめん! 離脱準備OK! 」


「では戻りましょう。とりあえずこの艦隊の領域を越えないと……」


「まあ爆死するなら全員一緒か。それも悪くねぇな」


「ギア! 余計なこと言わないの! 」


 4機の小型探査艇トラリス中枢司令旗艦ツァラトゥストラを遠ざけていく。ライセが後ろのモニターを見てみると艦隊の後方、巨大な暗黒の渦が黒爪の巨大船を飲み込んでいた。


 反重力スラスターでゆるゆると進んでいくと、整然と並ぶ新鋭艦アヴェスターは動力源を失うように白く輝く光が消えていく。光を失った新鋭艦アヴェスターは宇宙空間でバランスを失った無人船のように漂っていた。


「中にいるクリスタルロイドも動きを止めてる」


中枢司令旗艦ツァラトゥストラ以外の船の全て光が消えていってる……」


 次々と光を失う新鋭艦アヴェスターを唖然と眺めながら艦隊を通り抜けると、正面から船体を白く光らせた1隻の新鋭艦アヴェスターがこちらに向かって突進してくる。


「おい! ぶつかるぞ! 」


「みんな回避行動を! 」


 間近に迫った新鋭艦アヴェスターから4機に向けて通信が聞こえてきた。


「ヨシュアです。迎えに来ました。皆さんご無事ですか? 」


「ヨシュア!! 」


 それぞれが小型探査艇トラリスからヨシュアの新鋭艦アヴェスターへと転送して乗船する。白く透き通った操縦室にはヨシュアとナルシアが待っていた。全員の生存を確認したヨシュアは迅速にクリスタルウォールの外へと亜空間転送した。


 転送を終えた操縦室でそれぞれが遭遇した宇宙を眺めていた。中枢司令旗艦ツァラトゥストラは白く眩い光を放って爆散する。爆散は連鎖反応を起こし、レアール艦隊が次々に崩壊していく。


 宇宙の星屑に白の光が散りばめられていくように、レアール艦隊は暗い宇宙に最後の光を解き放ち消滅していった。


宗教にある7つの大罪は現代に合わない形骸化した過去の遺物でしかないと考えてます。

背徳に対する美徳は純潔、これも感覚的に間違っている気がします。背徳、神への裏切りに対しての美徳は神聖や敬虔でもあるような気もします。

それをもう1歩踏み込んで現実と見比べて考えてみると面白いかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ