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設計者フォルナクス

 小型探査艇トラリスで先頭を突き進んだギアとソレイユは中枢司令旗艦ツァラトゥストラの後方底部に取り付いた。転送して中へと潜入した広い通路。ギアはクリスタルロイドを見掛けると二挺拳銃で容赦なく破壊していた。


「ギア、破壊するために潜入したんじゃないのよ? 」


「わかってるって! エポナを探すためだろ? 」


 通路に銃撃音が響き渡る中でソレイユはタブレットを見て頭を抱え込んでいた。


「磁気探知機が効かないの。どこに向かっていいか……」


「それならこっちだ。光に向かって進めばいい」


「ギア、なんかわかるの? 」


「あぁ。なんかいるんだ。まるで俺達を呼んでるような……」


 ギアはクリスタルロイドを次々に破壊する。威力が増した二挺拳銃は1発当たるだけで硬質ガラスの頭は粉々に吹き飛んでいく。ソレイユはグローブの電磁バリアを張りながら近寄る相手を重力波で吹き飛ばしていた。


 氾れる光へ向かった先には白く輝く巨大な球体が設置されていた。見上げる球体からは白い髪にライトグレーの瞳をしたレアール人達の映像が浮かんでは吸い込まれていく。その中央にはプラズマが共振を繰り返していた。


「なんだよこれ……」


「動力コアかな……。まるで人の意識を吸収しているような……」


 据え置かれた巨大な白い卵の外殻からは電磁波が氾れ出している。その莫大なエネルギーを安定供給させようと壁に向いたクリスタルロイドが無機質に作業を続けていた。ギアは周囲を警戒しながらソレイユは導かれるように巨大な卵へと近づいていく。


「こいつからなんか気配を感じたんだ……」


「この中枢司令旗艦ツァラトゥストラを動かしてる融合炉かもしれない……」


 白く透き通る巨大な卵の下に、1体の胸が青く光ったクリスタルロイドが佇んでいた。ソレイユはその青に見覚えがある。エレミアが受け継いだ蒼星の光に似た輝きを見せるクリスタルロイドに声を掛けてみた。


「あなたは、青く光ってる。もしかしてアーキテクト……」


「私はフォルナクス。人口惑星レアールを設計した技術者の意識の残像」


 胸が燃えるように青く光ったクリスタルロイド。ハイドラントの言語で話してくるフォルナクスにソレイユは問いかけてみた。


「フォルナクス、レアール人のあなた達が、なぜハイドラントに侵攻したの? 」


「クオリアは虐げられた意識に触発してハイドラントに侵攻したようだ」


「虐げられた意識とは? 」


「ラーザゼルだよ。彼らはかつてこの宙域を支配しようとしていた。そして我々レアールも新しい進化を望んでいる。それがハイドラント侵攻という結果を導き出したのだろう」


 ソレイユは思い出す。ジェネシス号が惑星レアールを離れる時、宙域にガイウスの黒爪の巨大船が突然現れたことを。あの後にガイウスはクオリアと会ったのかもしれない。


「ハイドラントには最も多くの多種多様の人類が住んでいる。その人達をクオリアはレアールの進化に役立てようとしてるのね」


「我々レアールは滅亡した。しかし繁栄した意識は再生を願って生きている。いずれ君たち地球人にもその時が来ればわかるだろう」


「どんな理由であれ、他の人類を利用して再生することなんて許されないわ」


 その言葉にフォルナクスはソレイユに体を向け、目を見るように話し出した。


「融合炉はレアールの意識からは破壊できないようにプログラムされている。私もそのプログラムの中にあり、君たちが持っているラムウの脳量子共鳴サイコシンパサイズを使えば破壊を可能とする」


「これが融合炉なら中央にある高出力のプラズマを閉じ込めるために周囲は高磁場の共鳴を起こしているはず。どこか1ヶ所を破壊すれば共鳴は崩れてエネルギーは一気に放出してしまう」


「衝撃の範囲は半径100km。君たちがこの船を脱出するための時間は稼げるだろう」


「フォルナクス、もしかしてあなたはこの中枢司令旗艦ツァラトゥストラを破壊させようと私達をここに? 」


「この中枢司令旗艦ツァラトゥストラは他の惑星を滅ぼすために造られたのでは無い。人類の『再生』を新しい進化を願って造られた」


「あなたは技術者であるために自らの設計を最後まで責任を持って見届けたかった」


「意識の進化とは難しい。人の集合意識というものは内にある時は穏やかであるが、一旦外に出ると敵意を剥き出しにするようだ」


 フォルナクスはまた白く巨大な卵を見上げていた。透き通った外殻に映る映像を見てみると、レアール人の意識は無表情であったり怒りを見せていたり恐れている。意識が融合炉を動かすのか融合炉が意識を生かすのかはわからない。


「……エポナを救出しましたわ。今から脱出します」


 胸に着けた金のバッジから磁場に乱れたエレミアの声が聞こえてくる。その声に2人は顔を見合わせ笑顔を見せると、ソレイユはフォルナクスに向けてはっきりと伝えた。


「今からこの融合炉を破壊します」


 フォルナクスは見上げたまま何も言わなかった。ソレイユは少し離れて脳量子共鳴サイコシンパサイズで重力波を操ろうと集中すると、隣で警戒していたギアが声を掛けてくる。


「ソレイユ、破壊が目的じゃないって言ってなかったか? 」


「ギア、今集中してるの。余計なこと言わないで」


「おぅ……」


 巨大な白い卵はソレイユの重力波で上部から僅かにひび割れていく。ヒビが少しづつ大きくなっていくとギアは心配そうに見上げていた。


「ソレイユ……こいつが壊れたらまずくねぇか……」


「壊してって言われたからしょうがないでしょ! 」


「さすが破壊神……」


「ん? なんか言った? 」


「な、なんでもねぇよ……」


 外殻が割れていく融合炉をフォルナクスは無表情のまま静かに眺めていた。周りのクリスタルロイドも変わらず無機質な作業を続けている。


「こちらは中枢司令旗艦ツァラトゥストラを破壊します。みんな今すぐ脱出して! 」


 ソレイユがみんなに知らせると2人は部屋を出て小型探査艇トラリスの転送地点へと戻って行った。


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