宇宙で奏でるピアノの音色
オールグリーン←戦闘機やロケットのパイロットが正常に稼働した時に使う言葉らしいです。
「船体外壁、船内気圧、異常無し。ハドロン衝突型加速器稼働、反重力スラスター作動。機内各機器異常無し。オールグリーン」
「船体固定ドック解除確認完了。周辺空域並びに進行方向異常無し。天候良好。観測レーダー異常無し。オールグリーン」
クライスが船体の確認をエレミアが周辺状況を確認すると前方中央に座るソレイユは地上の夜空を眺めている。深夜2時、街が寝静まった暗闇の中で宇宙への第一歩が始まる。
ライセは後部座席に父からもらった日本刀を固定して機窓の夜空を見据えていた。その隣にはティアリスが、1つ向こうにはギアが座っている。全ての確認を終えてソレイユは合図した。
「準備完了しました。ジェネシス号、発進します」
操作室からの通信で四道教授の声が聞こえてくる。
「今から君達が向かうのは未知の宇宙だ。何が起こるかわからない。何があっても6人で協力して乗り越えて欲しい。君達の無事と健闘を祈るよ」
「はい。宇宙に行ってきます! 」
ソレイユの空中タッチパネルの入力で船体がゆっくりと浮上する。シャトルは地下から地上に暗く静かな星空へ、重い機体は密閉されたエレベーターのように静かに上がっていく。思っていたより緩やかな発進にギアはモニターを見ながら飛び立っているのかを確認していた。
「なぁソレイユ。ロケット発射!みたいな秒読みみたいなやつはないのか? 」
「あっ! 秒読み欲しかった? 火力推進じゃないから爆発や轟音は無くて」
「なんか思ってたよりゆっくり静かに発進だな」
「緩衝物が無くなる上空までは反重力スラスターで移動よ。それから反物質ブースターを使って秒速10kmに到達するの。機内の重圧は調整してるけど念のため地球の大気圏を出るまではシートロックを外さないでね」
上空に上がった機体は地球を外周するように雲を突き抜け高速移動を始めると瞬く間に地上を離れていく。前方の機窓から見えた夜空に向かって気が付けば太陽の輝きと満天の星空の世界。ジェネシス号は地球を見下ろす別世界へと辿り着いていた。
「大気圏外到達。船内を微重力に調整しました。気圧、重力ともに異常無し。機内各機器オールグリーン」
「周辺宙域オールグリーン。航路調整後、目的地ポイントの空間座標まで船体外郭を開いて慣性航行になります」
「シートロックを外してもいいわ。機内は船体底部に微重力で調整してるから、みんなもう動き回ってもだいじょうぶよ」
後部座席のライセ、ティアリス、ギアの3人は席を立つと、軽く飛び跳ねて微重力を楽しみながら操縦室から居住スペースへと移動した。
大気圏を抜けて地球を離れるしばらくの間、居住スペースから宇宙の星々が見えるように船体中央の外郭が開いていた。満天のパノラマに敷き詰められた星々の輝きを仰いでいると心が解き放たれた気持ちになる。
「こんなにたくさんの美しい星達が輝いているんだ。人はもっと宇宙に飛び出すべきだよ」
「そうだな。なんかこうやって宇宙から地球見てると国境だ民族だとか、人間同士が争うのってすげぇくだらなく思えてくるよな」
「そうね。一度宇宙に出た人は考え方とか変わってしまうらしいのだけれど、この透き通った星々の輝きを見ているとわかる気がするわ」
次の日から操縦室はソレイユ、クライス、エレミアが交代で確認をして、ライセとギアは24時間に1回、コアとフレームの点検をする。ティアリスはみんなの健康状態を確認しながら宇宙の旅を楽しんだ。
朝は全員がリビングスペースに集まってティアリスが用意した手作りの朝食を食べ終えて、紅茶を飲みながらライセはクライスと話していた。
「宇宙探査って思ってた以上にくつろげるんだね」
「この船体はこれからのことを考えて誰でも宇宙旅行を楽しめる造りにしてあるからさ」
みんなでくつろいでいると朝食を片付け終えたティアリスはソファーに座って一息ついている。青い瞳を伏せて静かに佇むティアリスの姿は柔らかいソファーに置かれた美しい人形のように、目線を落とした彼女はリビングスペースに置かれたピアノを見て首を傾げている。
「んっ? これ……。ピアノって最初からあったかしら?」
ティアリスの呟きに足を出して座っていたギアが応えた。
「あっ。俺が頼んで搬入しといてもらった。ピアノとバイクだけは欲しいって頼んどいたんだ」
「えっ?ギアがピアノ弾くの? 」
「あぁ。なんか悪いか? 」
「いえ。全然いいとは思うけれど……。よかったら弾いてみて? 」
「いいよ」
ギアはソファーから立ち上がると鍵盤蓋を開けて、おもむろに座ってピアノを弾き始める。その音は彼の外見から想像できない美しい音色。譜面も無く複雑な音色を奏でるギアにみんなは驚いていた。
ギアが時折奏でるピアノの音色を聴いて、宇宙の星々を観測しながら到着ポイントまでの時間はあっという間に過ぎていった。
なるべく科学的な証明や物理的な詳細の説明にならないように気をつけてます。読みにくい!って人は言ってください。もっとこうした方がいい、これはやめた方がいいなど言ってくださるとすごく助かります。まだまだ改善していきたいと思っていますので、プライドをトイレに流した底辺作家は助言はなんでもありがたく受け止めますのでなんでもおっしゃってください。




