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ガラスケースの中の王女

 目標の中枢司令旗艦ツァラトゥストラ辿り着いた3機の小型探査艇トラリスは緊急停止を始めて外壁に取り付いていく。1番機は後方底部に、2番機は前方底部に、3番機は上部艦橋に着地するとクリスタルロイドが動き回る透明の外壁の中へと転送していった。


 クライスとエレミアは潜入した船内で揉めていた。

 外の宇宙が透けて見えるクリスタルの広く長い通路でクライスがレーザーライフルで周囲を警戒する中、エレミアはタブレットの磁気探知機で内部構造を割り出していた。


「やはり磁気が乱れて内部構造がわかりませんわ……」


「この巨大な船内を勘を頼りにエポナを探すしかないか……」


「こっちですわ」


「いや、こういう時は中央に向かった方がいいのさ。こっちにしよう」


「いえ。敵に見つからないよう外を周るべきですわ」


「いや、情報や重要なものは中央に集まるものさ」


 2人が声をひそめて言い合っていると通路の奥から胸を白く光らせたクリスタルロイドが歩いてくる。周囲を見渡しても隠れるところは見当たらない。2人は気付かれないように壁に張りついてやり過ごすことにした。


 透き通る女性の体型を模したクリスタルロイド。無表情な顔は真っ直ぐに前を向き、単調に足を運んでくる。2人は息を殺して静観していると、目の前で立ち止まってすーっと首だけをこちらに向けてくる。


「127ブロックにて侵入者を発見しました」


 抑揚の無い機械音、無表情な顔だけがこちらを向いている。咄嗟にエレミアは両手に抜いた2本のレーザーブレードを交差して、目前のクリスタルロイドの首に切り落とした。威力を増した青く光るレーザーブレードは高密度ガラスを一瞬で切り抜いた。


「クライス、ここから離れましょう!」


「あぁ。」


「こっちに行きますわ! 」


「いや……」


 クライスの目の前にはエレミアに切られ、胴体を残して崩れ落ちたクリスタルロイドとその首が床に転がっている。


「……はい」


 2人がその場を離れた床が白く光った透明の通路。胴体を残したクリスタルロイドは胸に白い光を灯し始めると、メラメラと分子再生を始め首が元の姿を取り戻していく。


「……侵入者を……発見……しました」



 エレミアを先頭に船内の外周を走って進むと広い通路にはクリスタルロイドが次々に増えていく。クライスはレーザーライフルで、エレミアはブレードで倒していくが数が減らない。武器を持たずに無表情に手を差し出して2人を捕獲しようと突き進んでくる。


「エレミア、レーザーで倒してもまた動き出す! 」


「ブレードで切っても切り口が再生してますわ! 」


 躙り寄る数十体のクリスタルロイドにクライスは電磁バリアと脳量子共鳴サイコシンパサイズのプラズマを使って防戦する。エレミアも電磁バリアを張ってブレードで切るが防ぎ切れない。数十体のガラスの腕が2人の体を掴み、押さえつけようと襲い掛かっている。


「エレミア、数が多すぎる!一旦転送して小型探査艇トラリス戻れないかい? 」


「バッジを押しましたが転送できませんわ!さっきの場所に戻らないと……」


 心を失くした亡者の意識が生気を貪るように無数の手が2人の体にしがみつく。防ぎ切れず身動きが取れなくなると、遠くからガラスを粉々に砕く破砕音が鳴り響いてくる。


「エレミア、何か来る! 」


「はい。もう身動きが……取れません……」


 破砕音は2人に近づいて、クリスタルロイドを次々に破壊していく。床に伏して動けない2人が暴風を巻き起こしたような耳を劈く破砕音に目を向けると……。


「アルティオ様! 」


「アルティオ! 」


 パワードスーツを身に着けたアルティオがクリスタルロイドを壁に投げ飛ばし床に押し潰し、原型を留めないまでに粉々に砕いていた。


「クリスタルロイドはすぐに再生します。完全に破壊してください」


 重装備のアルティオが破壊を続けると、意識が統一されたクリスタルロイドはアルティオの方へと向かっていく。起き上がったエレミアはブレードで粉々に切り刻み、クライスは近距離でレーザーライフルを撃ち込んでいく。


「アルティオ様、船体の爆発から脱出したのですね」


「はい。爆発の際の衝撃波を利用して小型探査艇トラリスでここまで辿り着きました」


「よかったですわ……」


 全てを粉砕し、ガラスの破片が散らばる通路でエレミアはアルティオとの再会に涙する。


探査船トラビストは無くなってしまいましたが、皆さんと一緒にエポナを探すことができます」


「アルティオ様! 行きましょう! 」


「はい。こっちです」


 アルティオは中央に向かって先導するとエレミアは陶酔する目で追いながら着いていく。クライスはそれを黙って見ながら着いて行った。


「またクリスタルロイドが来ます」


「これではキリがないのさ……」


 通路の先から数十体のクリスタルロイドが向かってくると、アルティオは低く構えて肩のロケットランチャーを通路に向けて撃ち放つ。敵に見つかろうが船内を破壊しようが気にしない。アルティオの目にはエポナを救出する固い決意が表れていた。

 破壊した壁や床が再生するのを目にしたクライスは驚いていた。


「クリスタルロイドもこの船内の壁も破壊しても再生を繰り返している……」


「クリスタルウォールと同じ分子再生のようです。相応の科学技術と莫大なエネルギーを必要とします」


「惑星のエネルギーを最大限に活用するレアールにしか成し得ない先端技術のようだね」


 走り回って向かった中央の広い部屋。暗がりの部屋に潜入すると白い光が照らされた空っぽのガラスケースが大量に展示されていた。


「まるで博物館のような……」


「きっと何かを展示するためですわ」


 ガラスケースが並ぶ奥の暗がりにクリスタルロイドに守られた白い光が浮かんでくる。飾られた生きた標本のように両腕を広げて磔られたエポナが閉じ込められていた。


「エポナ! 」


 白い光に照らされたエポナは力無く項垂れている。周囲のクリスタルロイドをクライスが狙い撃ち、エレミアは切り刻む。アルティオはパワードスーツでエポナを閉じ込める硬質ガラスを粉々に破壊していく。


「エポナ、助けに来ました」


「ビリビリするのです……」


 弱電流が流れるガラスケースでエポナは耐えていた。アルティオに抱えられ意識が朦朧とする中でエポナはみんなの顔を見て弱々しい笑顔を見せていた。


「すぐに転送した地点まで戻りましょう」


 急いで部屋を出た広い通路には、ここに来るまでに粉砕したクリスタルロイドが再生して大量に向かってくる。クライスはクリスタルロイドの大群にレーザーライフルの照準を向け、全身に電撃が走らせた。


「ここは僕に任せて欲しい」


 脳量子共鳴サイコシンパサイズに反応するレーザーライフルは通路を金の閃光で埋め尽くす。取り戻した笑顔にクライスの感情がほとばしる。発射されたレーザーに数十体のクリスタルロイドは粉々に粉砕されていく。


「エポナを発見しましたわ。今から脱出します」


 エレミアが金のバッジで伝えるとアルティオとエポナ、クライスとエレミアは小型探査艇トラリスの転送地点へと戻っていった。


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