作戦決行
アルティオの探査船の上下左右を囲む形でヨシュア達の新鋭艦は配置に着いた。全ハイドラント艦隊とヨシュア艦隊にアルティオの司令が行き渡る。
「これよりエポナ救出作戦を決行します。ハイドラント艦隊は電磁魚雷の装填を、ヨシュア艦隊は光子レーザーの準備を願います」
ハイドラントの300m級の探査船が36隻、ヨシュア達の200m級の新鋭艦が12隻、計48機が配置に着いてクリスタルウォールを挟みレアール艦隊に対峙する。張りつめた緊張感が高まる作戦決行の瞬間、アルティオの号令が響き渡った。
「全軍!指示の着弾地点へ砲撃開始!」
ハイドラントの探査船の船体両側から電磁魚雷が展開すると全艦隊が一気に発射する。着弾地点を確認したヨシュア艦隊からも光子レーザーが放射されると、クリスタルウォールに大きな風穴が開いていく。
クリスタルウォールの向こう側、レアール艦隊へと繋がる風穴を確認したアルティオは船体底部の射出デッキを展開して1番機に指示を出した。
「小型探査艇、1番機射出します」
「1番機、了解」
ギアとソレイユが乗った小型探査艇1番機。固定ロックが外されると吹出弁の空気が噴出する。射出口までのパイプライン、機体は電磁レールの上を火花を散らして加速していく。
1番機が射出口から飛び出した直後、クライス、エレミアの2番機が、ライセ、ティアリスの3番機もアルティオの声と共に次々に射出していく。
先頭を飛び出したギアは目標に向かって照準を合わせると操縦桿のスイッチに指を掛けた。
「1番機、電磁加速推進機動! 」
機体後部に着いた1つだけの巨大ブースター。機動と共に炸裂音と閃光を走らせ旋回気流を巻き起こす。「ドンッ」という轟音を響かせて小型探査艇は音速を超えて急加速していく。
飛び出した2番機、3番機も続けて電磁加速推進を機動して音速の世界に飛び込んでいく。
宇宙空間を切り裂く電光石火のハイスピード。
1番機、2番機がクリスタルウォールの風穴を抜ける瞬間、3番機も壁が閉じ塞ぐ僅かな隙間を擦り抜けた。長く尾を引いた白銀煌めく3つの彗星がレアール艦隊に向かって直進していく。
クリスタルウォールを越えて敵艦隊領域に入り込むと、突き進む正面から白い光を帯びたレーザーが大粒の雨のように降り注いでくる。
「おい、敵艦のレーザー多すぎだろ! 」
「ギア、あなたが先頭を切ってるのは脳量子共鳴でレーザーを避けるためよ」
「いや無理だろこれ……」
1番機のギアとソレイユ。200隻近いレアール艦の小口径のレーザー砲が無数の光の矢となって小型探査艇に襲い掛かってくる。ギアの脳量子共鳴はレーザーの軌道を読み取ると、機体は白銀の稲妻のように突き進んでいく。
「い、今、レーザーが機体に掠った気がするのさ……」
「機体の外壁は電磁バリアを覆ってますわ。少しくらい当たっても気にせず前を向いて操縦してください」
「……あぁ……」
2番機のクライスとエレミア。人間魚雷のように敵艦隊に向かって突き進む機体をクライスは祈るように操縦桿を操作する。光子レーザーを瞬時に避けながらギアの1番機に着いていく。
「そういえばライセ、私、武器何も持って来なかったの」
「えぇ!? 」
「守ってね」
「う、うん……」
3番機のライセとティアリス。王女救出作戦のはずなのに後ろの座るティアの方が王女のような気がしてならない。ライセは必死に操縦桿を握り締めレーザーを避けながらクライスの2番機に着いていった。
等間隔に整列する白く光った透明の新鋭艦。その間を3機の小型探査艇は擦り抜けていく。新鋭艦からは一斉に光子レーザーが撃ち放たれる白光に包まれた視界の奥の旗艦へと突破していた時。
「おい、アルティオの船が……」
ギアの声に背後を映し出す後部モニターを見てみると白銀の探査船が集中砲火を浴びていた。ヨシュア艦隊を守るために前に出てきたアルティオの巨大船が光子レーザーを浴びて崩壊している。
「アルティオ様!」
「アルティオ!」
前方の中枢司令旗艦から白雷を轟かせた巨大な光子レーザー砲が発射され、アルティオの船に直撃する。6人を地球から連れ出してくれた白銀のクジラ型の巨大船は宇宙空間に最後の光を放ち、爆散して消えていった。
「きっとアルティオなら脱出してるはず……。今はエポナの救出を考えましょう……」
ソレイユの声に全員が前を向く。アルティオ達の味方艦隊が自らの命を賭けて送り出してくれたことを胸に刻んで。
ヨシュア艦隊は後退しながらも光子レーザーを撃ち続けていた。残ったハイドラントの探査船も6人が辿り着けるように砲撃を止めなかった。
6人が前を向いて突き進んだその目前には想像を遥かに超えた全長1千メートル級の巨大な中枢司令旗艦が差し迫っていた。




