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ダイソン球

久々の投稿です。

 濁った大気を突き抜け、一気に飛び出した星空の世界。機窓から眺める星々の美しさにナルシアは思わず声を上げた。


「すごい! まるで星の海の中をを泳いでるみたい! 」


 太陽系よりも密度の高い銀河の恒星の輝き。

 様々な色を見せる星々や星雲の美しさにナルシアは目を輝かせて眺めていた。


「今から転送地点まで慣性航行に入るね。みんな一旦休憩しましょう」


 ソレイユの声に操縦席のシートロックを外して席を立とうとするナルシアは船内の軽い重力にも驚いている。


「わぁ! 体が軽くてふわふわする……」


「船内を微重力で調整してるのさ。重力場を発生させる高密度プラズマが動力室に圧縮されていて、それが船体の推進や姿勢維持の反重力スラスターに利用されている。もちろん動力源は量子の対消滅を利用した反物質コアになる。反物質コアとは……」


 クライスの終わらない話にみんなはまた始まったとばかりに部屋に戻って行くと、ナルシアは目を輝かせて聞いている。他の女子には無いナルシアの素直な優しさにクライスが惹かれているのがよくわかる。


 エレミアを操縦室に置いて6人はリビングスペースへと移動した。クライスは軽い重力に驚くナルシアのために室内の微重力を操作している。


「船内で生活するためにはある程度の重力は必要なのさ。今日はこの部屋の微重力を軽く調整してみよう」


 リビングスペースのモニターでクライスが部屋の重力を調整するとナルシアの体がゆっくりと浮いてくる。


「うわっ! どうしよう、クライス! 体が……」


「無重力では無いからだいじょうぶさ。体の重心を感じながら落ち着いて浮いてごらん」


 クライスはナルシアの両手を取って体が宙に浮く軽い微重力をエスコートする。

 他のみんなも床を軽く蹴るとふわりと浮いた体は宙に浮いてゆっくり降りていく。広いリビングスペースでみんなが飛び跳ねて楽しんでいると、1人だけ壁を背にして見ていたギアが呟いた。


「なぁソレイユ。パンツ見えてんぞ? 」


「えっ? やっ……」


「最低っ! 変態ギア! 」


 恥ずかしがっているソレイユをかばうティアリスは獣を見るような目でギアに言い放つ。クライスは笑いながら手を広げて忠告する。


「ギア。そういう時は言わないでおくのがマナーなのさ」


「言わねぇで見てるとかそっちのが変態だろ。なぁ、ライセ」


「僕なら見ないでおくよ……」


「見えたもんしょうがねぇだろ!見せる方が悪い!」


「ギアはもうこっち向かなくていいからね」


「なんだよっ!せっかく言ってやったのに」


 ティアリスに言われても開き直った態度を見せるギアに女子の冷たい視線が突き刺さる。ギアが1人で拗ねているとナルシアはふわりと浮きながら笑い転げていた。

 みんなが浮いた体で向き合うとソレイユが次の惑星の話をし始めた。


「次の惑星レアールは最も科学技術が進んだ惑星よ。地球に帰る高次元転送のための磁場制御装置を作りたくて行ってみようと思ってるの」


「カザロフで手に入れたジルリウム鉱石を使ってレアールの最先端技術で磁場制御装置を作ってみるのさ」


「アルティオは惑星レアールはあまりお勧めしないって言ってたけど……」


 みんなで囲んで話をしていると1人だけ壁を向いて腕組みをしているギアが聞いてくる。


「ソレイユ、それはどういうことだ?」


「危険とかじゃなく、文明がすごく進んでいるからみたいで」


「きっと最新の文明にも僕達の常識を超えたいろいろなことがあるんだよ」


 ライセが言うとみんなは不安よりも最先端の科学技術への好奇心に満たされていた。



 翌日には転送を終えて惑星レアールまでの自動操縦の間、みんなはギアが弾くピアノの音色に耳を傾けていた。

 ソレイユに操縦室を任せてくつろいでいると甘く焼けたいい香りがする。ティアリスとナルシアが部屋でケーキを作って紅茶と一緒に持ってきてくれた。

 手作りのケーキを目にしたクライスは驚いている。


「こ、これはもしかして……」


「キルシュトルテよ。 地球のレシピを見てナルシアと一緒に作ってみたの」


「キルシュトルテ! ドイツ伝統のケーキさ。この宇宙で出会えるとは……」


「クライス、よく知ってるね」


「僕は生粋のドイツ人さ。そして僕の名前はクライス・キルシュナー。キルシュトルテは我が家の伝統のケーキなのさ」


「美味しい! 」


「美味しいですわ! 」


 みんなが一口食べて思わず声を上げると、ナルシアは心配そうにクライスを見ている。


「クライスのは私が作ってみたの……どうかな? 」


「Sehr lecker! 《とても美味しい!》口の中に星々の輝きを散りばめたような美味しさ! あぁ僕はなんて幸せなんだ。ありがとう。ナルシア」


 キルシュトルテの美味しさに舞い上がるクライスは片膝を着いてナルシアの手を取ってキスをする。中世の騎士のような挨拶にナルシアは照れ笑いながら喜んでいた。


「私もティアと一緒に作るの楽しかったし、美味しく食べてもらえてとても嬉しいわ」


 甘いものはみんなを笑顔にしてくれる。みんなでピアノの音色とケーキの味を楽しんで、くつろいだ後に操縦室に向かうとジェネシス号は惑星レアールへと近づいていた。


 全員が集まった機窓から見えてくるのは白色矮星。

 膨大なエネルギーを吐き出し終えて輪郭を残した白い恒星は宇宙の闇に飲み込まれそうな光を放っていた。その軌道上にはもう1つ、最小恒星の白い輝きを閉じ込めた人口惑星が見えてくる。


「……あれは、ダイソン球! 」


「軌道上の最小恒星を硬質ガラスで覆って惑星のエネルギーを全て活用しているようね」


 白色矮星の軌道上、地表が透明のクリスタルに覆われている精緻を極めた人口惑星へと近づいていく。


「惑星の周囲を宇宙船が巡航しているようです。モニターに映してみますわ」


 モニターに映し出されたのは全面クリスタルの平たく鋭い洗練された造りの宇宙船。全長200m以上の巨大新鋭艦が映っているだけでも数十機、惑星の周囲を取り囲んでいた。


「恒星のエネルギーを閉じ込めた技術力に人口惑星を取り囲む新鋭艦。惑星レアールは英智を超えた科学技術を持ち合わせているようだね」


 近づいていくと船体を白く光らせた新鋭艦からジェネシス号に向けて、ハイドラントの言語で通信が入ってくる。


「ようこそ惑星レアールへ。ハイドラントから訪問された地球の方々ですね。宙域に光る指示灯があなた方を入港施設へとご案内します」


「はい。よろしくお願いします」


 大気圏へと入る衛星軌道上、2つの並行した白い光が行先を導いてくれる。すれ違う巨大新鋭艦を眺めていると白く透き通った外壁からは中で動いているクリスタルのアンドロイドが見えていた。

 7人は惑星レアールの科学技術に圧倒されながら案内されるままに入港施設へと降りて行った。


ダイソン球は例えば太陽を全て覆って、その熱エネルギー等の宇宙の恒星エネルギーを全て利用するシステムです。

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