宇宙への想い
エレミアに言われて宮殿へと転送した6人。
コーネリアスが消えていなくなった宮殿をエレミアが仕切っていた。コーネリアスの支配にうんざりしていた女性達は喜んでエレミアに従っている。
宮殿の医務室に並べられた3つのベッド。丸一日をぐっすり眠って治療を終えた3人の男子は、朝を迎えて目を覚ましていた。
「……まるで女王エレミアだな」
「うん。エレミアには女王の素質あるかも」
「誰もエレミアには逆らえないさ」
まだ目が覚めきらない3人が話をしてると突然エレミアと女子達が医務室に入ってきた。
「何か言いましたかしら? 」
「なんでもないです! ! ! 」
「おはよう。みんな体の調子はどうかしら?」
「あぁ。もう大丈夫。ハイドラントの装備のおかげだ。傷も浅くて背中の傷もすっかり治ったな」
「まだ無理とかしないでね」
ティアリスが心配しているとソレイユが直った装備を渡してくれる。
「みんなの服の傷はエレミアが直してくれたみたいよ」
「ありがとう! 助かるよ。エレミア」
「こ、これくらい当然ですわ……」
エレミアの気遣いに男子達が感謝すると、彼女は照れ隠すように眼鏡を整えている。
ソレイユは爽やかな朝の声でみんなに呼び掛けた。
「今からみんなで朝食にしましょう!」
ネメシスの青の爪船は宮殿の女性達によって宇宙空間に放り出されていた。空いたドックにはジェネシス号が修理をしている。
宮殿の豪華な朝食を食べ終えると明日の出発までの時間。ギアはバイクでスラム街へ、ライセとクライスはナルシアの家に、女子3人はジェネシス号の点検と補充をすることにした。
クライスは宮殿の医務室でナルシアの薬を手に入れてライセと2人で彼女の家に転送する。2人が顔を見せるとナルシアは驚いていた。
「丘の上の船が無くなってたからもう出発してしまったのかと……」
「今はカザロフの入港施設で修理してるのさ。それにナルシアを飛行船に乗せるって約束したからね」
家に入れてもらった2人はナルシアとお婆さんと4人でテーブルを囲んで話をした。
「……あの、クライス」
「ん? どうしたんだい? 」
「あの飛行船って。……宇宙船よね? 」
「えっ……」
「わかってたの。きっと驚かせないようにクライスが私のために嘘をついてくれたんだって」
「ど、どうしてわかったんだい? 」
「だって、あなた達は服装はカザロフのものじゃないし、食べ物も違ってたから」
「ナルシア。嘘をついてしまってごめん……」
「私の方こそ言えなくて。クライス!お願いがあるの」
「どうしたんだい? ナルシア」
「私を宇宙に連れて行ってくれないかしら」
「えっ! いや、それは……」
「決して迷惑はかけないわ! 料理でも掃除でも言われたことはなんでもするから私を宇宙に連れてって! 」
胸の前で手を組んで祈るように頼み込むナルシアにクライスは困った表情を見せて返事を避けた。
「……宇宙は。とても危ないところなのさ。君のような優しい子が危険な宇宙には耐えられない」
「私はこの丘でいつか宇宙に行きたいってずっと願ってたの。もし叶うなら宇宙に行ってみたくて……」
「……」
無理とわかって落ち込むナルシアをクライスも聞いていたライセも黙り込んでしまう。今までの航海を考えれば病気がちなナルシアが宇宙に連れて行くのは危険なことは2人にもよくわかる。
返事に困った沈黙のあと、彼女の隣に座っていたお婆さんが話し出した。
「……この子は幼い頃から病気であとどれくらい生きられるかわからない。皆さんに迷惑をかけることになるのは承知で私からもお願いします。どうか最後にこの子の夢を叶えてやってくれないでしょうか」
ライセは地球で初めてシャトルを見た時のことを思い出していた。きっとナルシアはあの時の自分達以上に宇宙に行きたいはず。
悩んでいるクライスの気持ちもわかるライセはそっと声を掛けてみる。
「クライス……」
額に手を当て迷っていたクライス。
しばらく考え込んだあとにナルシアに向かって真剣な表情で話し始めた。
「宇宙に行けばもうここに帰れなくなるかもしれませんがそれでもよろしいですか? 」
「はい。帰れなくなることもわかっています」
「わかりました。僕が責任を持って宇宙に連れて行きましょう」
「ありがとう! クライス! 」
「明日の朝にもう一度来ます。それまでに準備をしておいてください」
ナルシアの家を出たクライスとライセは頭を抱えていた。ソレイユ達にどう話せばいいか。きっと反対するに決まっている。
どうやって説得するか悩みながら転送した入港施設。修理を終えたジェネシス号の補充をしているソレイユ達にクライスが聞いてみた。
「……無理なのはわかってるのさ。でも彼女の願いを叶えさせたくて。ナルシアを一緒に乗せてはもらえないだろうか? 」
「……いいわよ? 」
「えっ? いいのかい? 」
「エレミア。あのシャトルは将来の宇宙旅行用に設計されていて8人乗りだったよね? 」
「はい。あと2つの船員室は倉庫として使ってますわ」
「ナルシアが宇宙に行きたいそうよ。あと1つ空けてくれない? 」
「はい。わかりました。そこの2人、今から手伝ってくださる?」
「はい! ! 」
その日はナルシアのためにみんなと同じ部屋、ベッドにバス、トイレ、キッチンが付いた船員室を空けることにした。操縦室にも席を設置してリビングルームにも椅子を増やしておいた。
次の日の朝にクライスが迎えに行くと、ジェネシス号のハッチの前には旅行鞄を手に持ったナルシアがいた。みんなで出迎えて一通りの説明が終わると操縦室へと案内した。
「さて、ナルシアもみんなも準備はいい? 次の惑星に向けて出発するわよ 」
「皆さん、よろしくお願いします」
ナルシアはティアリスの隣の後部座席。
全員が操縦室に座って出発の準備が整うとカザロフの入港施設からの通信が入ってくる。
「地球の皆様、あなた方はコーネリアスを倒した惑星カザロフの救世主です。またこの宙域に立ち寄った際にはいつでも訪問を歓迎致します。皆様の無事を願っています」
みんなを代表して司令官のソレイユが応答した。
「船体の修理に補充、ジルリウム鉱石まで頂いてありがとうございます。私達も惑星カザロフの発展と皆様の幸せを願っています」
操縦士のクライスと副操縦士のエレミアが確認をする。
「船体並びに船内機器に異常無し。ハドロン衝突型加速器稼働、反重力スラスター作動。オールグリーン」
「周辺空域並びに進行方向異常無し。天候良好。視界良好。オールグリーン」
「みんなシートロックの確認してね! 惑星カザロフ上空の大気圏に突入します。ジェネシス号、発進! 」
ソレイユの合図で上空へと浮遊するジェネシス号は惑星カザロフのスラム街を遠ざけ、濁った大気の中を一気に加速する。
新しい船員ナルシアを乗せた7人は次の惑星へと向かって行った。
惑星カザロフ編が終わりました。
読んでくれてありがとうございます。
ブックマークや★や感想を頂けると大変励みになります!これからもよろしくお願いします(*_ _)




