氷爪の巨大船
新章です。
丘の上のジェネシス号へと戻った6人。船内のリビングスペースに集まると夜は更けていた。
無事に帰った女子達はティアリスを気遣っている。
「ティア大丈夫?怪我とかしてない?」
「私もよくわかんなくて、なんであんなところにいたのかしら……」
「もう大丈夫だよ。コーネリアスはエレミアがボコったし、宮殿はソレイユがボコったし」
ライセがティアリスを気遣うとエレミアは男子達に向かって問い詰める。
「そうね。男子3人は何をしていたのでしょうか?」
「……えっ、僕達は……」
「て、転送されて捕まるとは想定外だったからさ」
「俺はほら! 今日は街に行って薬を調達してきたし」
「そうね。薬は3粒でしたわ。今日の働きは3粒男子ですわ」
宮殿でソレイユの破壊力とエレミアの身の凍る冷たさを目にした男子3人は何も言えずに小さくなっていた。
全員の体調を診断し終えた後にソレイユがみんなに向けて話し始める。
「エレミアが聞いた話では私達を襲ったネメシスがコーネリアスに指示を出していたようね……」
「ネメシスに言われてコーネリアスは私達の上空に金の宇宙船を向かわせて全員を宮殿に連れ去った」
「ラーザゼル人がなんで俺達を狙うのかわかんねぇけど、ここにいたって安全とは言えねぇな」
「ここを襲われたらナルシア達も無事ではいられないのさ」
「あの巨大船が襲ってきたら僕達は地球に帰れない」
「地図と場所は聞いていますわ。ネメシスは入港施設の36番ドックです」
「私達から迎え撃ちましょう。みんな装備を整えて!準備ができたらネメシスの爪船が格納されているドックに転送します! 」
「了解!! 」
エレミアが空間座標を特定して全員が準備をした。
背中のバックパックと肩のホルダー、ベルトとブーツ、ソレイユとティアリスは治療キットを身に着け、準備が整うと集合する。
「転送後は何が起こるかわからないわ。全員戦闘態勢を取って転送バッジを押して! 」
ソレイユの合図で転送した場所は入港施設の36番ドック。広大な格納庫には人の気配は無く、眼前にはあの歪な巨大爪船が入港していた。
最初の高次元転送をした時にジェネシス号を襲った青の巨大爪船が氷爪を凍りつかせて横たわっている。
「……あの船だ」
「あぁ。こいつに間違いない」
あの時の記憶が甦る。全員が息を飲んで見上げると格納庫は巨大船から洩れる冷気で冷え切っていた。
船体の開いたままの入口からは怪しげな冷気が漂っている。
「誰もいないようね。中に入ってみましょう」
タブレットを持ったソレイユの合図でそれぞれが装備を手にして中へと入っていく。
船内は青白く光って凍りついた通路。ソレイユは通路を進む途中でタブレットを見て立ち止まった。
「……船内の見取り図を作成する磁場探知機が乱れてる。少し調整してみるから見張ってて」
ソレイユは船内の内部構造を把握するための磁場探知機を調べていた。
寒く凍った通路を見張っているとクライスはみんなを気遣っている。
「みんな寒くないかい?」
「僕はだいじょうぶ。ハイドラントの装備が寒さを調整してるみたい」
「……私も足を出してるのに寒くない」
ティアリスもソレイユも短いスカート、エレミアもショートパンツだが、ハイドラントの白銀の装備が体温を調整してくれている。
タブレットを操作するソレイユは困惑した表情を見せていた。
「磁気探知機が表示が乱れて船内の見取り図が出てこなくて。……どこに進んでいいかわからない」
「きっとこの氷の壁が磁気を乱反射させているのですわ」
船内の様子が掴めず困っているソレイユに、ギアは笑って周囲を見渡すと、その瞳が闇に染まる。
「ソレイユ、タブレットなんて無くても俺の目には見えてんぞ。この船に蠢くいくつものドス黒い闇がな」
脳量子共鳴で気配を察知するギアを先頭に6人は青白く入り組んだ氷の通路を警戒しながら進んで行く。
通路に響く氷の鳴動。
気配を殺して進む吐く息が白い。
凍った氷壁に自身の姿が映ると思わず息を飲む。
静まり返る通路に突然銃撃音が鳴り響いた。
ギアが通路の先に向けて銃弾を撃ち放つとラーザゼル人は倒れて闇に消えていく。
「後ろは任せたぞ……」
二挺拳銃を構えたギアと超音波刀を持ったライセを先頭に、エレミアの両手のレーザーブレードとクライスのレーザーライフルが後ろを警戒する。ソレイユとティアリスはタブレットを見ながら周囲を確認していた。
数回の銃撃音が氷壁の通路に反響する。ギアが確実に相手を仕留めながら先に進むと通路の角で立ち止まる。
「……ソレイユ。この先は悪い予感しかしねぇ」
「ギアだいじょうぶよ。私達は充分戦える。6人で協力すれば必ず相手を倒せるはず」
「そうだな。ここで決着つけねぇと宇宙で襲われたら地球になんて帰れねぇよな」
ギアが闇の気配を辿って進んだ船内には壁一面が氷に閉ざされた巨大なドームが広がっていた。




