黄金の巨大宇宙艇
コーネリアスの宮殿を後にしたライセとギア。
バイクを停めていた店に戻ってジルリウム鉱石を探していた。店主はケースに入った爪先程の小さな鉱石を取り出してきた。
「こんな小さな鉱石で硬貨100万枚!? 」
「あぁそれが今の相場だ」
ジルコニア鉱石を諦めたギアはクライスに言われた薬のメモを渡して聞いてみる。
「じゃあこの薬は無ぇか? 」
「これなら硬貨10枚だな」
「えぇ!? 頼む! おっさん! 病気の女の子がいるんだ。硬貨1枚でなんとかしてくれ! 」
「しょうがねぇな……。じゃあ3粒だけだぞ」
「ありがとな! 助かるよ」
「ありがとうございます」
薬を手にしたギアとライセはバイクを走らせ、汚れたスラム街を抜けて空気の綺麗な丘の上へと戻って行った。
昼前には戻るとみんなは船体の修理を続けていた。
「……す、すまねぇ。金が無くて薬しか手に入らなかった」
「なるほど。この惑星の貨幣が必要なのね」
ソレイユが無事に帰ってきた2人を笑顔で迎えていると、エレミアは冷たく諌めている。
「貨幣ね。……そのバイク売れば貨幣が手に入りましたわ」
「そうか! その手があったか……ってこのバイク売ったら俺達が帰って来れねぇじゃん! 」
「転送バッジで帰ってくればいいですわ」
「えっでも……俺のバイク……」
「バイクなら地球に帰ればまた手に入ります。今は地球に帰ることが優先ですわ」
「そ、そうだな……」
ギアはバイクが売り払われないように速やかに船内へと搬入する。ライセとクライスはナルシアの家に薬を届けに行くことにした。
小道を降りて向かった柵に囲まれた小さな家。そこにはナルシアと一緒に住んでいるお婆さんが出迎えてくれた。
「ありがとう。本当に助かるわ。ナルシアは今は眠ってるからあとで飲ませてあげるね」
「お婆さん、ナルシアは病気ですか? 」
ナルシアのことが気になるクライスは薬を渡してお婆さんと話していた。
「ナルシアは体が弱くてね。生まれてから15年間ずっと空気のいいこの丘で私と2人だけで暮らしていて」
「そうなんですね」
「友達のいないあの子にとって部屋の窓から見える夜空の星や空に見える飛行船を眺めることだけが楽しみだったの」
「だから僕達がここに来た時に見に来たんですね」
「あなた達が来てからすごく楽しそうに話をしてくれてね。あんなに明るいナルシアを見るのは久しぶり」
「ナルシアが元気になったらまた来るように言ってください」
「どうかあの子と仲良くしてやってね。本当にありがとうね」
薬を渡してライセと帰るクライスは無言で歩いていた。いつもよく話すクライスはナルシアの回復を心から願っていた。
ジェネシス号のハッチの前に戻るとティアリスが昼食の準備をしてテーブルに並べている。地球から持ち込んだ小麦粉や卵でサンドイッチを作ってくれていた。
みんなで昼食を囲んでいると曇った厚い雲の上から巨大な黄金の宇宙艇が降りてきた。
異様な空の様子にギアは拳銃に手を翳し、ライセは刀の入ったリュックを肩に掛けた。
「なんか近づいてくんぞ! 」
「こっちに降りてくる……」
「宇宙船ね。どこの船かしら」
「ハイドラントは白銀のクジラ型、ラーザゼルのような巨大な爪も無い。あの釣り鐘型の宇宙艇は入港の際にすれ違った巨大輸送船にも似ている」
「ということは惑星カザロフの宇宙艇ですわ」
「カザロフの人達が降りてくるかもしれないわ。みんな落ち着いて友好的に話してみましょう」
見上げる上空を覆い隠す程の黄金の巨大艇は6人の真下に降りてくると光を浴びせてくる。
6人は光に吸い上げられるように転送され、殺風景な狭い格納庫に入れられた。
「……船内に閉じ込められたようね」
「どこかに連れて行かれるのかな」
閉ざされた部屋には窓も出入口も無い。
突然壁上の吸気口が開いて空気が流れ出すと6人は抵抗する間もなく眠らされてしまう。黄金の巨大宇宙艇は眠ったままの6人を連れ去って行った。
宮殿の中にあるトレーニングジムではコーネリアスが体を鍛えていた。盛り上がった筋肉、浅黒い肌に剃り上がった短髪。目は吊り上がり、薄ら笑う表情は鍛え上げた体を満足気に曝け出していた。
多くの女性に囲まれ賑わう中でコーネリアスはお仕えの女性に囁いた。
「ティアリスへの催眠療法は効いてるのか? 」
「はい。捕えてから宮殿の医務室で8時間。愛妾としての催眠療法は充分に効いています」
「では湯に浸かろう。彼女を連れてきなさい」
「はい。かしこまりました」
丈の短い金のタイツを吐いて金のストールを肩に掛けたコーネリアスは浴場へと足を運ぶ。
黄金の広い浴場には4人の薄い服を着た愛妾が入ってきたコーネリアスに見蕩れていた。
浴場の入口には目が虚ろなティアリスが佇んでいる。肌を露出した薄生地のストールを肩に掛けて、薄く短いスカートを履かされて心を失ったように一点を見つめていた。
「やはり思った通りだ。美しい。ティアリス、お前は今から私のものになる」
「……はい。……ご主人様」
コーネリアスの淀んだ目は品定めをするようにティアリスの顔や体を見回すと満足気に近寄っていく。ティアリスはすーっと顔を上げて目を合わせていた。
「女神アストライアの生き写し。ラーザゼル人なんぞにくれてやるにはもったいない」
「……私の全てはご主人様のものです」
「今からお前と遊んでやる。私の愛妾の1人として存分に楽しませてくれ」
「……はい。……ご主人様のお好きなようにしてください」
ティアリスの柔らかな金色の髪を指の裏で撫でながら、コーネリアスは彼女の肩に掛けた薄生地のストールへと手を伸ばしていた。




