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入港審査

新章です。

 惑星ハイドラントを出発したジェネシス号。

 大気圏を抜けて宇宙空間へと飛び立つと、惑星の影となる磁場の影響が少ない地点へと向かっていた。

 慣性航行で目的地点に着くまで、ギアが弾くピアノの音色を聴きながら次の行先をみんなで話し合っている。


「高次元転送の検証も兼ねてイェンツィガの途中の惑星カザロフ宙域に転送してみようと思ってるの」


「ソレイユ、惑星カザロフには高次元転送できるんだ?」


「ハイドラントが探査を終えた惑星ならその情報を元に高次元転送は可能なはずよ」


「惑星カザロフってどんなとこかしら? 」


「ジェネシス号の反物質コアを安定させるジルリウム鉱石が採れるらしいわ」


「ジルリウム鉱石があれば磁場の影響を考慮しなくても高次元転送が可能になるのさ」


「カザロフは資源惑星。惑星自体は他の惑星との鉱山貿易で潤ってるらしいですわ」


 アルティオに用意してもらった白銀の服とバッジを身に着けてそれぞれが次の惑星への期待と不安が入り交じっていた。

 みんなが話している中で1人ピアノを弾いていたギアはどこかで聞いたことがある名前に首を傾げていた。


「……ん? 惑星カザロフ? 」


 目的地点の宙域に着くと6人は操縦室に集まった。エレミアは空中タッチパネルで周辺状況を確認する。


「現宙域の惑星磁場の影響は最小限になっています」


「では高次元転送を開始します。みんな準備はいい?」


 ソレイユの確認にみんなは息を飲んで頷いた。

 また失敗したらどこに転送するかわからない。前回の失敗が脳裏に浮かびながら地球へ帰る硬い決意を心に刻み込んでいた。

 エレミアとクライスは慎重に確認して声に出した。


「周辺宙域障害物なし。磁場の影響最小限。目標空間座標への入力を完了しました。オールグリーン」


「ハドロン衝突型反物質生成起動。転送コアへのアップロード完了。船内機器の異常なし。オールグリーン」


「転送先は『惑星カザロフ』周辺宙域。ジェネシス号、高次元転送開始! 」


 ソレイユの合図にみんなの表情が引き締まる。

 目の前の宇宙空間に飛び込む身体も意識も量子の波動に変わる感覚。惑星ハイドラントの宙域から次の宙域へと高次元転送を開始した。

 数十光年を転送する無限の一瞬が終わるとギアはすぐに声を上げた。


「……うぇえ。やっぱり転送の気持ち悪さは変わんねぇんだな」


 ライセは顔を上げたまま、ティアリスは目を伏せていた。エレミア、クライス、ソレイユの3人は気を引き締めて3Dモニターを調べている。


「船体の再構築完了。周辺宙域、船体ともに異常ありません」


「反物質コア安定。船内気圧、船内機器異常なし」


「空間座標確認。惑星カザロフ宙域に到着。エレミア、念のために電波観測を」


「電波観測完了しました。惑星カザロフ宙域に間違いありません」


 転送の成功と安全を確認してみんなは大きく息を吐いて胸を撫で下ろした。

 その後は充分に休憩をとって戻った操縦室。

 前方の機窓には赤と黒が入り交じる恒星が、宇宙の闇に溶け込むような輝きを放っていた。その紅炎の軌道に大気が濁った惑星が見えてくる。


「地球にとっての太陽は、この宙域では褐色矮星になってるのね。惑星カザロフは、あの濁った惑星……」


「ハビタブルゾーンにはありますが、恒星磁場の影響を強く受けてそうですわ」


 機窓に差し込む赤い恒星の光が眺めながら、惑星カザロフに迫っていくと軌道上に人工衛星が見えてくる。

 ジェネシス号の接近を察知した人工衛星からはエレミアの操縦席に通信が送られてきた。


「ようこそ惑星カザロフへ。所属惑星と船体情報、入港する方の名簿と情報をお知らせください」


「惑星カザロアからの送信ね。言語はハイドラントと同じみたいね。エレミア、こちらからは何を知らせればいい?」


「はい…。乗員人数、名前、性別、生年月日、顔画像、全身画像、身長体重、健康状態、所属惑星、使用言語、所持品、滞在期間、渡航理由……。あと船体の全長、重量、装備、動力源ですとか……」


「うわっめんどくせぇ」


「入国審査みたいなものでしょ。しょうがないわよ」


「これは私が取りまとめますわ。皆さんに情報を送りますので入力しましたら私に送ってください」


「みんなで協力してやっちまえば早くねぇか? 」


 ギアが気軽に言うとエレミアはきっぱりと断った。


「いいえ! 私が取りまとめます! 」


「……あっ! みんなでやったら体重ばれるのか」


 エレミアは他の女子よりも大人びた体型。

 余計な一言を放ったギアの目の前に立つと、そのスタイルのいい胸を突き出し眼鏡に指を触れ冷たい眼差しでギアに命令した。


「……早く入力しなさいっ! 」


「はい……」


 入力を終えて連絡した審査の待ち時間。

 地球という異星人の入港が許可されるのか6人は不安を感じていた。


「地球ってまだ誰にも知られてないから入港審査が通るかしら……」


「ハイドラントに入った時はアルティオの船に格納されて入ったしね」


 不安に感じていたのも束の間、数分後には通信が入ってくる。


「入港審査が許可されました。そのまま地上の入港施設に着陸してください」


「クライス、指示に従って降下して」


「了解! 」


 指示に従いカザロフの大気圏を降下して地上へと向かっていく。船体は反物質コアを使わず反重力スラスターで灰色の空をゆっくりと降下していった。


 モニターを見ながらの静かな降下の途中、地上から火力エンジンを搭載した巨大な輸送ロケットが急上昇してくる。モニターで確認するソレイユは慌てて指示を出した。


「クライス! 回避して! あのロケット予想以上に大きいわ! 」


「回避行動に移ります。反重力スラスター最大出力で針路変更します! 」


「信号灯を発光してこちらから合図しますわ! 」


「おい! ぶつかるぞ! 」


 急上昇する巨大輸送ロケットは小さなジェネシス号を気にも掛けずに突進してくる。

 船体は直撃する寸前に反転して回避した。しかしジェット気流に飲み込まれ船体が吹き飛ばされてしまう。


「船体姿勢維持不能! 気圧の衝撃で反重力スラスター2基が故障した模様! 」


「船体は急降下で地上に接近しています! 地上には街がありますわ! 」


「クライス! 街を避けて不時着を! 」


「落下速度が速すぎる! 船体の浮上も姿勢維持もできない! 」


「このままだと墜落するぞ! 」


「全員、衝撃に備えて! 」


 船内には操作不能に警告音が鳴り響く。クライスが必死に操縦する中、船体は回転しながら急降下していった。

 地上に迫った瞬間に浮上したジェネシス号は低空飛行続け、樹々に覆われた丘陵に激突した。


わかりやすく読みやすくコミカルに、こだわった描写や心情はできる限り削って書いていきます。(←決意表明)

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